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29、愛する気持ち
しおりを挟むお父様もお母様も、私を信じてくださいました。もう二度と、脅しに屈したりはしないでしょう。
お父様とお母様には、騎士団の方が護衛をしてくださる事になりました。リオン王子が手配をしてくださったようです。
「お茶をしに来るのは、久しぶりだな」
午後になると、前と同じようにリオン王子がお茶をしにやって来ました。ソファーに座ってお茶を飲んでいるだけなのに、やっぱり絵になっています。またこんな風に、一緒にお茶を飲める事が出来て本当に良かったです。
「リオン王子、昨日は本当にありがとうございました。正直、もうダメだと思ってしまいました」
昨日は声を出す事が出来なかったから、やっとお礼を言うことが出来ました。
「いつまで、王子と呼ぶつもりだ?」
「へ?」
急にそんな事を言われて、変な声が出てしまいました……
「マヌケな声だな。まあ、そんなティアナも可愛いな」
意地悪は変わっていませんね。だけど、嫌な気はしません。
「父上からは、ティアナとの婚約の許可をもらった。あとは、ティアナの気持ち次第だ」
国王様が、私との婚約をお許しに!?
てっきり、会うことを許してくださったのだとばかり思っていました。
「……私の気持ちは、決まっています」
ずっと会いたかった、愛しい人。そんな方が、私と婚約したいと仰ってくださっている。
もう二度と、誰かを好きになる事はないと思っていました。私の心を変えてくださったのは、リオン王子です。
「ですが、私は一度他の方と婚約をしています。そんな私でも、よろしいのでしょうか……」
脅されたとはいえ、一度傷がついてしまった令嬢が、王太子殿下の婚約者になってもいいのでしょうか?
「それは……イエスって意味に聞こえるぞ?」
リオン王子は、とても驚いた表情を浮かべています。私の気持ちは、伝わっていなかったのでしょうか?
……よく考えたら、私は一度も自分の気持ちを伝えていませんでしたね。
「もし叶うなら、私はリオン王子……リオン様と一緒に生きて行きたいです。リオン様が、大好きです!」
私は精一杯、今の自分の気持ちを伝えました。すると、リオン様はソファーから立ち上がり私の側まで来ると、イスに座ったままの私をギュッと抱きしめてくれました。
「……ずっと、こうしたかった……」
声が震えているようです。リオン様の想いが、抱きしめてくれている腕から伝わって来ます。
あんなに明るくされていたのに、本当はずっと苦しかったのですね。気付いてあげられなくて、ごめんなさい。
「私はずっと、リオン様のお側にいます」
こうして時が戻った事は、運命のイタズラなのか奇跡なのかは分かりません。
だけど私は、時が戻ってやり直す機会をいただけた事にとても感謝しています。相変わらず、エリック様に付きまとわれてはいますが、リオン様を愛し、リオン様に愛される事が出来ました。
真実の愛……? 違う、ただ想わずにはいられないだけです。信じる事はないと思っていたのに、こんなにも愛さずにはいられなくなっていました。
私は、リオン様を心から愛しています。
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