〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

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26、私の救世主

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 ……やられました!
 さっきの飲み物に、何か入れられていたようです。意識はあるのに、体に力が入りません。先程の使用人は、ベントン侯爵の使用人のはずですが、エリック様の味方だったようです。私のバカ……こんなに簡単に、毒を盛られてしまうなんて……
 エリック様は私の体を抱き上げ、ホールから出て行こうとします。
 周りにいた貴族達は、何事かとこちらを見ています。

 助けて……そう言いたくても、声を出すことが出来ません。

 「間違えて、ワインを飲んでしまったようです。私の婚約者を少し休ませてやりたいのですが、部屋を貸していただけますでしょうか?」

 ベントン侯爵の元へ行き、部屋を貸してくれるよう頼むと、

 「それは大変ですね。どうぞ、お使いください」

 心配そうな顔をしながら、そう答えました。

 「私が、ご案内致します」
  
 先程、飲み物を渡してきた使用人が、部屋へと案内するようです。その間、意識はあるのに体が動かなくて、私は何も出来ませんでした。
 逃げなきゃ……必死に体を動かそうとしても、ぴくりとも動きません……
 どうやら、麻痺する薬を飲まされたようです。

 「指一本触れさせたりはしない……だったか? これからたっぷり可愛がってやるからな」

 意識があるままにしたのは、私を苦しめたいのでしょう……
 このままでは、あの最悪な地獄を味わう事になってしまいます。この男には、二度と触れさせないって思っていたのに……
 どんなに足掻いても、体は全く動きません。

 部屋に着くと、ベッドの上におろされました。

 「ご苦労だったな。お前はもう行け」

 使用人はエリック様に頭を下げ、部屋から出て行きました。

 「…………」

 声を出す事も出来ず、動くことも出来ません……
 どうしよう、どうしたらいいのでしょうか!?

 「ティアナ、愛してる。君を想わない日は、1日だってなかった。なぜ、あんな事をしたんだ?」

 あんな事?

 「勝手に死ぬなんて、絶対に許さない。君は俺のものだ」

 ゆっくり、エリック様の顔が近付いて来ます……

 もうダメ……!!!

 そう思った瞬間、部屋のドアがバンッと大きな音を立てて開きました!!

 「何をしているんだ?」

 この声……リオン王子!!

 「私の婚約者を、介抱しています」

 リオン王子が、部屋の中へと入ってくる足音が聞こえてきます。それでも、エリック様は私に覆いかぶさったまま、動こうとはしません。

 「ティアナから離れろ!!」

 リオン王子はエリック様の腕を引っ張り、私から引き離しました。

 ベッドのそばで睨み合う2人。あんなにリオン王子に忠実だったのに、エリック様は全く譲る気がないようです。

 「ベントン侯爵の使用人に話は聞いた。こんな真似をして、恥ずかしくないのか!?」

 こんなに怒っているリオン王子を初めて見ました。私の事を、本気で心配してくれているのですね。

 「私の婚約者です! 何をしようと、殿下には関わりのないことです」

 「婚約者? 脅して婚約者にしたのだろうが、ゴードン伯爵はこの婚約を破棄すると言っていたぞ?」
 
 お父様が!?
 リオン王子が、お父様と話してくださったのですね!

 「!!!?」

 予想していなかったのか、エリック様の顔がみるみるうちに青ざめていきました。

 「もう下がれ。彼女は俺が邸に送り届ける」

 「ですが……」

 「これ以上、ことを大きくするつもりか?」

 エリック様は横目で私を見ると、

 「……失礼します」

 そう言って、部屋から出て行きました。

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