〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

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25、絶対絶命

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 「もう遅いですよ。エリック様の噂で、持ち切りになっています」

 エリック様は、バルコニーを背に立っている私に、少しづつ近付いて来ました。
 
 「好きに噂すればいいさ。ティアナさえ手に入るなら、他には何もいらないのだから」

 そう言って、右手を私の左頬へと伸ばして来ました……

 「ッ!!」

 私は伸ばされたエリック様の手を掴み、ひねり揚げました。

 「私に触れる事は、許しません! これから先も、あなたに指一本触れさせたりしない!!」

 痛みに顔を歪めるエリック様。私はひねり揚げていた腕を離し、その場から立ち去りました。
 

 あの日と同じように、バルコニーを背にして立っている私に、彼は触れようとしました。
 記憶があるのなら、少しは反省してくれているかもしれないと思いましたが、全くその様子はありませんでした。反省なんてするはずないですね。今も、邪魔になるものは全て排除しようとしているのですから。

 それからも、私は噂を流し続けました。少しだけ疑問なのは、私の命は狙って来ない事です。
 こんなにも恥をかかせ、今まで築いてきた信用も何もかもが失われていくのに、どうして何もして来ないのでしょうか?
 彼が言っていた『愛』があるとは、到底思えないですし……

 噂を流し続ける為に、出席し続けて来た社交の場で、エリック様にお会いすることはあまりありませんでした。元々エリック様は、リオン王子が出席するパーティーにしか出席しなかったので、そんなに不思議なことではありませんが、このような場に姿を見せることもなく、言い訳をしないエリック様は、誰からも信用されなくなっていました。

 今日もエリック様は現れないのだと思っていたのですが、違ったようです。
 今日の集まりは、チャリティーパーティー。エリック様は、孤児院の子供達の為に多額の寄付をしました。エリック様には、そんなに資産はありません。寄付したお金は、お父様が出したのでしょう。子供達に使うのなら、私は何も言うことはありません。

 「エリック様が子供達の事を思っているとは、とても思えません。どういう風の吹き回しですか?」

 何か魂胆があるのでしょうか……

 「君は俺を分かっていないな。君が望みそうな事をしただけだよ」
 
 私が望みそうな事? 
 私の為に寄付をしたと、仰りたいのでしょうか?

 「お飲み物はいかがですか?」

 エリック様の仰っている意味を考えていると、主催者であるベントン侯爵家の使用人が、トレイに乗っていた飲み物を差し出して来ました。
 私はそれを受け取り、一口飲んでしまったのです……

 「君は何をしていても、美しいな。誰にも渡したくない」

 何を……そう口に出そうとしたけれど、声になりません。あ……れ……私、どうしちゃった……のでしょう……
 体に力が入りません……立っていられずにそのまま倒れ込んでしまいました!


 倒れそうになった私の体をエリック様は受け止めて、ニヤリと笑いました。

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