〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

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22、特別ではない

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 「たとえエリック様と結婚をする事になったとしても、私は生涯エリック様を愛することはありません。
 愛してくれるレミアさんと、ご結婚されたらいかがですか?」

 レミアさんの事を知られていた事に、驚いているようです。

 「……レミアは、ただの道具だ。決して妻になどなれないことは、アイツも分かっている」

 否定しても意味がないと思ったのか、あっさり認めましたね。
 それにしても、女性を道具扱いするなんていったい何様なのでしょう。そんな事、レミアさんが望んでいるはずないじゃないですか! 
 私を監視していた時のレミアさんは、エリック様を想っていました。エリック様のそばに居たいから、理解したフリをしているだけで、本当は愛されたいと思っているはずです。レミアさんには散々酷いことを言われたけれど、後から現れた私が妻になったのだから、嫌悪を抱くのは当然の事ですね。

 「エリック様は、可哀想な方ですね。きっと、誰も愛する事なんて、出来ないのでしょう」

 「……変わったな」

 「えっ……?」

 今……変わったって……

 「今日はそろそろ失礼するよ。また明日な」

 エリック様はイスから立ち上がり、私の顔を見ずに帰って行きました。
 先程のは、聞き間違えでしょうか? ……いいえ、はっきり“変わったな”と仰いました。
 巻き戻ってからは、エリック様に対してずっと同じ態度で接して来たので、変わったなんて事はないはずです。だとすると、前にお会いした事があったという事でしょうか? それとも、まさか……

 私と同じで記憶があるのでしょうか!? 
 よく考えたら、もし記憶があったとしてもおかしくはありません。自分だけが特別だなんて思っていたわけではないけれど、他の人にも記憶があるとは考えもしませんでした。
 最初から記憶があったのなら、あの日、10歳に戻った日からずっと見張られていたのかもしれません……
 そして、私にも記憶がある事にも気づいているでしょう。私の方が、バカだったようです。
 彼は記憶があっても、前と同じ行動をとって来ました。だけど私は、前とは違う生き方をしてしまいました。
 武術を習っていた事は、お父様が必死に隠していたので、知られてはいないと思いますが、変わったのはバレバレですね。

 これは、手強い……

 「お嬢様、お手紙が届いております」

 そのまま庭で考え事をしていると、ミランダが手紙を持って来ました。
 シェイド様からでしょうか。邸に頻繁に出入りしていたら、エリック様に怪しまれるからと、手紙でやり取りをする事になったのです。

 「二通?」

 一通はシェイド様からだったのですが、もう一通は……

 「リオン王子!?」
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