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21、ズルい女
しおりを挟む「ティアナ嬢! ホージー侯爵と婚約とは、どういう事なのですか!?」
エリック様との婚約の話を聞いたシェイド様が、凄い剣幕で邸へとやって来ました。エリック様の事を疑って、散々調べていたのだから、激怒するのは無理もないですね。
お父様とエリック様の事をお話する為に、応接室へとお通ししました。
応接室へと着き、シェイド様がソファーに座るのを待ってから話し出しました。
「シェイド様がお聞きになった通り、私はホージー侯爵の婚約者になりました。ですが、私はホージー侯爵の妻になるつもりはありません!」
真剣な顔でシェイド様を見つめると、彼はハァとため息をつきました。
「何か事情があるのですよね。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
シェイド様は平静を取り戻し、私の話を聞いてくださいました。
私は、お父様とエリック様の事を話しました。お父様ははめられたのではないかという事と、私の命を盾に脅しているのではないかという事です。
「……あのクソ野郎ッ!!」
「この事は、今はまだ私の推測でしかありません。だから、シェイド様に調べていただきたいのです」
私はズルいですね。シェイド様の気持ちを知っていながら、利用しています。
それでも、今の私が信頼出来る人はシェイド様だから……
「必ず、真相をつきとめてみせます! 決してティアナ嬢を、ホージー侯爵に渡しはしない!!」
こんなに純粋で真っ直ぐな方に出会う事が出来ただけでも、もう一度やり直した意味はありました。それに、リオン王子とのお茶の時間も、今思えば楽しかったです。
エリック様の思い通りになんて、絶対になりません。私はもう、前の私じゃありません!
お父様は、何も話してはくれません。エリック様に、脅されているからですね。……前の私も、同じだったから分かります。大切な人を奪うと脅され、何もする事が出来なくされてしまいます。人の気持ちを利用するくらい理解出来るのに、ご自分が大切にするという気持ちは分からないのですね。
私に、お父様を責める資格なんてありません。お父様が責任を感じて、自分の命を危険にさらさないかが心配です。一刻も早く、真実を突き止めなければ……
自分で調べたいけれど、エリック様がそうはさせてはくれませんでした。毎日毎日、私に会いに来ます。
でも逆をいえば、エリック様が邸にいる事で、シェイド様が調べやすくなっているのかもしれません。
この状況でも、私に出来ることをしようと思います。
「ホージー侯爵は、どうしてそんなに私に執着なさるのですか?」
庭で花を眺めながら、お茶を一口飲んでエリック様は口を開きました。
「婚約しているのだから、ホージー侯爵はないんじゃないか? 」
呼び方など、どうでもいいです。
「エリック様は、どうして私に執着するのですか?」
どうでもいいけど、このやり取りが続くのは望んでいないので、言う通りにしました。
「執着ではなく、愛しているんだ。その美しい顔も、可愛らしい口から出る声も、その白い肌も、全てが愛おしい。壊してしまいたくなるほどに……」
あまりにおぞましくて、体が強ばってしまいました。巻き戻る前に彼の本性を知った私には、彼の言ってる意味が分かってしまいました。この体は体験していないのに、体が覚えているようです。
要するに、思い通りにしたいということですね。内面を見る気は全くないから、あなたは私を甘く見ているのです。確かに、前の私なら逆らう事が出来なかったけど、今は違います。身も心も強くなった私を、甘く見ている事を後悔させて差し上げます。
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