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18、心強い味方
しおりを挟む「ティアナ……嬢……?」
彼は、意味が分からないという顔をしています。
「私に触れないでください。……虫唾が走る」
思わず口にしてしまったけど、後悔はしていません。彼は下を向いたまま黙ってしまいました。悲しそうというよりも、怒りに震えているように見えます。本当は殴りたいのに、我慢しているのでしょうか? ここで本性を現してくれたら楽なのですが……
「あははっ! 嫌われてしまったようですね。だからといって、あなたを諦めたりはしません。今日は帰りますね。また来ます」
笑顔を浮かべて帰って行くエリック様。やっぱり、そう簡単ではありませんでした。
「お嬢様……あの方は、どういうおつもりなのでしょうか? リオン王子様の噂を流したのに、あんなに平然と嘘をつくなんて……」
ミランダがいてくれて、良かったです。2年経ったら実家に帰ってしまうけど、私にとって大切な存在だし、家族だと思っています。
「絶対に信用してはダメだからね。ホージー侯爵は、悪魔よ」
「ティアナ嬢?」
名前を呼ばれて振り返ると、シェイド様が立っていました。
「シェイド様、今日は稽古はなかったはずですが、どうされたのですか?」
稽古以外の日に、いらっしゃるなんて珍しいです。
「実は、俺なりにリオン王子の噂について調べたんです。
どちらか行かれるのですか? こんな所でお話する事ではないので、お邸にお邪魔したいのですが……日を改めます」
シェイド様は本当にリオン王子を想っているのですね。エリック様とは大違いです。
「街に出かける所だったのですが、急用ではないので大丈夫です。お入りください」
シェイド様を応接室にお通しして、ミランダにお茶を頼みました。ソファーに座ると、シェイド様は真面目な表情で話し出しました。
「どうやらリオン王子の噂を流したのは、ホージー侯爵の使用人のようなのです」
シェイド様は意外と有能なのですね。初めて会った時の印象が強かったので、少し抜けているのかと思っていました。
私は最初からエリック様だと分かっていたけど、普通ならリオン王子の側近であるエリック様を疑うことはないと思います。
「シェイド様は、ホージー侯爵を疑っているのですか?」
「疑っているのではありません。確信しています。ホージー侯爵は、リオン王子を裏切っている」
誰もが、エリック様の偽りの姿に騙されていると思っていました。もしも、巻き戻る前にシェイド様と知り合っていたら、あんなことにはならなかったのかもしれません。
「シェイド様は凄いですね。私も、ホージー侯爵を信用していません。あの方がどんな人間なのか、全て明らかにしたいと思っています。
手伝っていただけませんか?」
シェイド様の目を見つめていた私の目を、シェイド様が見つめ返して来ます。
「愛する人の力になるのは、当然のことです。たとえこの想いが受け入れてもらえなくても、俺はティアナ嬢の1番の味方です!」
真っ直ぐ私を見つめながら、シェイド様はそう言ってくださいました。とても心強い味方です。気持ちを利用するみたいで心苦しいですが、信用出来る人は限られています。
「感謝いたします」
今の人生を、あの男に絶対に奪わせたりしません!
あの時は死を選んでしまったけれど、せっかくやり直すことが出来たのだから、全力で生きてみせます!
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