〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

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16、エリック

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 「返事は、すぐにでなくてもかまいません。ゆっくり考えていただけたらと、思っております」

 ハッキリ断ったのに、先程の私の言葉は聞こえていないのでしょうか?

 「返事は、先程言った通りです。私の気持ちは変わりませんので、もう会いに来ないでください。それでは、失礼します」

 今の時点では、すごく優しい人……ですが、私は彼の本性を知っています。どれだけ隠してもムダです。呼び止められる前に、急いで応接室から出て来ました。これで諦めてくれるとは思っていませんが、拒絶出来たことに満足しています。
 離縁してくださいと言った時が、恐怖の始まりでした。それを乗り越えることが出来たことが、私の中での大きな第一歩だと思います。

 「ミランダ、調べて欲しいことがあるの」

 ミランダに、誰がリオン王子の噂を流したのか調べるように頼みました。きっとエリック様が噂を流したのでしょう。あれほど尽くしていたリオン王子をも、私に近付くのに邪魔だと感じたら排除するようです。私は少し、エリック様を見くびっていたようです。
 あの男は、いつから私に執着していたのでしょう? こんなに執着していたのに、愛人を作ったのはなぜ? 疑問ばかりが浮かんで来ます。考えたところで、あの男の考えなんか理解出来るはずがありません。
 


 「元気がありませんね……。何かあったのですか?」

 エリック様と別れたあと、剣術の稽古だったのですが、集中出来ませんでした。シェイド様が心配そうに顔を覗き込んで来ます。

 「なんでもありません。少し疲れがたまっているだけです」

 エリック様とお会いしたことで、苦しかった思いが蘇って来てしまいました。

 「もしかして、噂のことですか? リオン王子が、ティアナ嬢に会いにいらしていたことには驚きました。リオン王子は今、激怒された国王様の極秘の命を受けております。それが無事に終わったら、またティアナ嬢に会いにいらっしゃいます!」

 シェイド様って、私のことが好きなのですよね? リオン王子が会いに来ても平気なのでしょうか?

 「シェイド様は、妬いたりしないのですか?」

 「妬きはします。ですが、俺はリオン王子を尊敬しています! あの方は、素晴らしい方です! 」

 シェイド様が、そんなに褒めるなんて珍しいです。エリック様とずっと一緒だからという理由で、リオン王子を信用しなかったのは、間違っていたのでしょうか?
 極秘の命の内容は教えてはくれなかったけど、あんなに真っ直ぐなシェイド様がいうのなら、少しだけ信じてあげてもいいのかもしれません。

 数日後、ミランダは調べたことを報告して来ました。やっぱり、エリック様の仕業だったようです。エリック様の使用人が、ほかの貴族達の使用人にリオン王子のことを話したとの事でした。
 使用人が噂をしていることを聞いた貴族達が、ほかの貴族達に噂を広げて行ったようです。これでは、エリック様が関わったと証明することは難しいですね。全て計算されているようです。
 以前の私なら、疑いもしませんでした。最初から私を狙っていたとしたら、あの日のことも全て計算だったのかもしれません。リオン王子を信じたとしても、エリック様だけは絶対に信じる事はありません。
 
 「お嬢様は、どうしてホージー侯爵が怪しいと思われたのですか? 私なら、あんなに素敵な方を疑うなんて出来なかったと思います」

 前の私も、ミランダと同じでした。それほど、エリック様は完璧な方。お父様だって、エリック様に騙されてしまいます。
 このまま、エリック様を拒絶するだけではダメですね。こちらから、動き出しましょう!
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