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13、剣術対決
しおりを挟む「何か悩みでも、あるのですか?」
私には関係ないのだから、放っておけばいいのに、珍しく暗い顔をしたので気になってしまいました。
「……悩みか。そうだな。ティアナが冷たいことかな」
そう言って、はぁとため息をつくリオン王子。聞いた私がバカでした。
「それは変わることはありません。私はこれから用事があるので、そろそろお帰りください」
素直に帰って行くリオン王子。やっぱり、何か変ですね。だからといって、聞いたところで話てはくれないのですから、どうしようもありません。
リオン王子が帰って行ったのを見届けてから、剣術を習うために先生の元に急ぎます。
少し約束の時間を過ぎてしまいました。
剣術の稽古は、邸の中庭で行われています。お父様は、私が武術や剣術を習っていることを必死で隠しています。嫁のもらい手がなくなる……それが理由だと言っていますが、女性に強さなど、世間は求めていないからだと思います。私が強くなることは、貴族達に嫌われること。私が嫌われてツラい目に合わないように、お父様は気を使ってくれているのです。
中庭に到着すると、先生の他にもう1人男性が来ていました。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
先生の元に駆け寄り、頭を下げました。
「事情は聞いています。気になさることはありません。それよりも、今日はティアナ嬢にお願いがあります」
お願いとは、先生のとなりにいる男性のことですね。
「これは、私の息子のシェイドです。最近、騎士になったのですが、どうも自信過剰で困っています。ティアナ嬢に、お手合せいただければと思い、連れて参りました」
先生の息子さんですか。先生は、10年前まで騎士長だったとお聞きしています。先生の息子さんが騎士になられたのなら、私では相手にならないのでは? そう思いましたが、先生が手合わせして欲しいと言うのならば、何か考えがあるのかもしれません。
「分かりました。私で良かったら、お相手致します」
「こんな、か弱そうな令嬢が俺の相手? ケガをしても知りませんよ?」
確かに、自信過剰ですね。相手が女性だからといって、舐めすぎです。
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「その余裕が、いつまで続くか見物ですね」
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「嘘……だろ……?」
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「ありがとうございました」
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