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11、再会
しおりを挟むリオン王子は、視察する為に市場に訪れていました。時が戻る前、令嬢達の間で、港市場にリオン王子が視察に来ていたという話をしていたのを覚えていたのです。
リオン王子は市場を見回り始めました。そのとなりには、エリック様の姿があります。
……大丈夫。エリック様の姿を見ても、前のように震えたりはしません。それどころか、怒りが込み上げて来ます。あんな人のせいで、2人も亡くなって、私も……
もう二度と、あなたの言いなりにはなりません。
目的をはたして市場には用がなくなったので、その場から離れようとすると……
大柄な男性とぶつかってしまいました。
「どこ見て歩いてんだ!?」
大柄な男性はガラが悪く、少しぶつかっただけなのに大声で怒鳴って来ました。
「すみません」
よそ見していたのは事実なので、素直に謝ります。
「すみませんだあ!? そんなんで、許されると思ってんのか? ぁあ!?」
素直に謝っているのに、これ以上どうしろというのでしょうか。
「おじょ……メグ、もう行きましょう!」
ミランダが怯えているようです。ここから離れようにも、素直に行かせてはくれなさそうですね。かといって、私が手を出してしまったら目立ってしまいます……
「何をしている? 大の男が、女性に凄むとは……情けないとは思わないのか?」
まさか……
「何だと!!? …………」
振り返ったガラの悪い男性は、声の主の姿を見て言葉を失ってしまいました。声の主は、リオン王子でした。
「大人しく消えろ」
リオン王子にギロっと睨みつけられた男性は、一目散に逃げて行きました。
「……ありがとうございました」
リオン王子の隣りにいるエリック様に、顔を見られないように深く頭を下げました。まさか、リオン王子に助けられてしまうなんて……
「ここは、様々な国から沢山の人々が来ている。ガラの悪い連中もいるから、気を付けなさい」
リオン王子はそう言って背中を向けて去って行きました。その後に続いて、エリック様も去って行きます。どうやら、気付かれなかったようです。それとも、お父様に紹介された時が、本当に初めてだったのでしょうか?
「リオン王子様って、素敵な方ですね! こんな風に助けてくださるなんて、運命を感じてしまいます!」
ミランダは目を輝かせながら、リオン王子が去って行った方を見ています。
「運命って……
ミランダはリオン王子が好きなの?」
ミランダのタイプは、リオン王子だったのですね。
「違いますよー! 私なんか、釣り合うはずないじゃありませんか! 美しいお嬢様と、美男子のリオン王子様! すっごくお似合いです!!」
「私!?」
そんなこと、考えたこともありませんでした。確かに容姿は美しいけど、エリック様を側近にするくらいだから、抜けているか性格に難があるかのどちらかだと思っていました。
それに私は、エリック様以外の男性を見ようとしていませんでした。ちゃんとお話したのは、エリック様が初めてでしたし、時が戻る前の私にはエリック様が全てだったのです。
今度は、前の自分に腹が立ってきました。男性に免疫がなかったとはいえ、あんな最低な人を愛してしまうなんて……バカ過ぎて笑えますね。
「変なこと言ってないで、帰るわよ」
私には、リオン王子を信用することは出来ません。よく知りもしないのに……とは思うのですが、どうしてもエリック様と同じなのではと思ってしまいます。
そう思っていたのですが、リオン王子を知る機会がすぐに訪れるなんて、この時の私は思いもしませんでした。
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あらすじ
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