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さようなら、ダンカン様
しおりを挟む「シリル……お前、私を騙したな? 虐めていたのは、お前の方ではないのか? セシディは、冷たくなんかなかった……あの微笑みは一生、私の心から消えることはない。」
「ダンカン様!? お姉様は、陰険でずる賢くて……私をはめようとしているのです!!」
「それは、お前のことか? セシディがお前をはめようとしている……だと? この間の学園ダンスパーティーの時も、そして今も、セシディはお前の事を悪く言っていない。お前が、陰険でずる賢いんだろ!!」
珍しく、ダンカンの発言は的を得ていた。
「それは、あんまりだ! 娘を侮辱するのはやめてもらいたい!」
「そうですよ! シリルはいい子ですわ!」
シリルを侮辱され、ランバート侯爵夫妻は黙っていられなかった……が、それも逆効果だった。
「これでハッキリした! お前は学園ダンスパーティーの時に、『お父様もお母様もお姉様ばかりを可愛がる』と言っていた。ランバート侯爵夫妻は、セシディが侮辱されていても、平然とされていたのに、シリルの時だけなぜ庇ったのだ?」
「それは……」
もうシリルには、何も言い返すことは出来なかった。壇上の上で崩れ落ちるシリルを尻目に、ダンカンは壇上を下り、セシディの元に歩き出した。
会場にいる皆の視線が、ダンカンへと集まって行く。そして、セシディの前まで来ると……
「セシディ……」
と、名前を呼んだ所で、
「センセイに近づくなー!!」
プリシア王女がセシディの前に立ち、両手を広げた!
「プリシア王女!?」
プリシア王女の行動に、セシディは困惑した。まるで自分を守ってくれる小さな騎士のようで……
「プリシア王女様、申し訳ありません。私が間違っていました。シリルの言葉に惑わされ、セシディに酷いことをしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!」
小さな騎士、プリシア王女に、ダンカンは深々と頭を下げ謝罪した。
「そんなにあやまるなら……許してあげてもいいよ。」
え!? ツンデレ!?
「セシディ……本当に、すまなかった。私は君に二度、一目惚れをした。先程の君の微笑みが、頭から離れない。もう一度、やり直したい。私の婚約者に、戻ってくれないか?」
「……申し訳ありません。ダンカン様の婚約者に、戻ることは出来ません。ダンカン様を責めるつもりはありませんし、信頼関係を築く事が出来なかった私にも責任があります。ですが、これから先、私はダンカン様を信頼する事が二度と出来そうにないのです。」
ダンカンは目の前が真っ暗になった。一度は手にしたセシディという最高の婚約者を、自分の手で失ってしまったのだから。
「あー! 良かったーーーーーーーっっ!!!」
一際大きな安堵の声が、会場中に響き渡った!
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