〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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31、嬉しいサプライズ

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 教室に入っても、みんなから視線を向けられている。これは、新しい友達を作るのは大変そうだ。
 昼食の時間になってもひそひそと噂話はされているけれど、直接話しかけて来たのはオリヴィア様だけだった。
 
 「結局、三人での昼食だな。シェリルがいない分、人数は減ったけど、グルダと変わらない」

 グルダの学食と違うところは、料理を運んで来てくれるところ。たくさん頼んでも、自分で運ばなくてもいいから助かる。
 内装は豪華で品があり、壁は全面ガラス張りで、窓の外には大きな噴水が見える。
 ちなみにこの学食は完全無料で、昼食だけでなく、朝食や夕食もいただけるそうだ。さすが、大帝国。太っ腹だ。

 「レイビス様……大変です!!」

 スープを一口飲んだ後、目を見開いてレイビス様の顔を見た。

 「セリーナ? どうした!?」

 私の様子に、何事かと慌てるレイビス様。

 「このスープ……ものすごく美味しいです!!」

 「……ぷっ! あはははははっ!!」

 涙が浮かぶ程、大笑いされてしまった。 

 「笑わないでください! この感動を、一刻も早くお伝えしなければと思ったのです!」

 思い切り笑われてしまい、ぷくっと頬を膨らませる。

 「ごめんごめん、セリーナらしくて可愛いなと思って」

 そんな愛おしそうな目で見つめられたら、怒れなくなる……

 「バカにしてます? 罰として、レイビス様のスープもいただきます!」

 日に日に、レイビス様への気持ちが強くなっていく。

 「学食でイチャイチャするのは、やめた方がいいと思うわ」

 この声……
 聞き覚えのある声に急いで顔を上げると、そこにはシェリルが立っていた。

 「シェ……リル? え? どうして?」

 シェリルはルギウス殿下と一緒に、グランディ王国に行ったはず。そのシェリルが、どうしてスフィリル帝国にいるの?

 「来ちゃった!」

 その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れて来た。
 シェリルと別れたばかりだったけれど、もう一緒に学園に通ったり出来ないと思っていた。
 
 「おまえ……来ちゃったって、ルギウス殿下はどうしたんだ?」

 レイビス様は泣いている私の肩を抱き寄せながら、冷静に質問した。

 「もうセリーナと一緒に居られなくなるのが辛くてルギウス様に相談したら、行ってきなさいって仰ってくださったのです。セリーナがお兄様と結婚したら、グランディにセリーナが行ってしまうから、私はグルダに一人きりになってしまいます。学生の間は、セリーナと一緒に居たいのです! お父様も、了承済みですわ。それとお兄様、お父様からの伝言があります。早くセリーナと婚約しなさいだそうです」

 婚約という言葉を聞いて、私もレイビス様も顔が赤くなる。それに、顔が近い……いや、肩を抱き寄せられたのだから近いのは分かっていたけれど、シェリルに会えた嬉しさでそれどころではなかった。
 シェリルは一度、グランディ王国へ戻っている。私達がゆっくりスフィリル帝国に向かっている間、シェリルは急いで私達のあとを追いかけて来た。それほど早く、会いたいと思ってくれていたということだ。

 「シェリルとまた一緒に学園に通えるなんて、すっごく嬉しい!」

 レイビス様から離れて、シェリルに抱き着く。

 「レイビス殿下、今はセリーナが泣いていたので見過ごしましたが、軽々しく私の主人に触れないでください」

 モニカはお肉にフォークをブスッと刺して持ち上げ、お肉越しにレイビス様を鋭く睨む。
 少し怖かったけれど、いつものモニカに戻ったようで安心した。
 この学園にいる時のモニカは、何だか様子がおかしかった。寮では普通に接してくれていたけれど、今日は今までほとんど口を開かなかった。

 「モニカは、そうでなくちゃ」

 そう言った私を、レイビス様が不服そうに目を細めて見てきた。

 「セリーナが、モニカに味方するなんて……」

 邪魔して欲しいという意味ではなかったけれど、レイビス様は拗ねてしまった。

 「お兄様が拗ねても、可愛くないと前にも申し上げたはずです。そんなにモニカに邪魔されるのがお嫌でしたら、一ヶ月後に行われる剣術大会でモニカに勝ったら良いのでは?」

 剣術大会?
 グルダの学園では、行われていなかった。
 モニカは騎士で、腕は確か。そんな彼女に、レイビス様が勝てるの?

 「よし! 剣術大会に出場する!」

 なぜか、やる気満々のレイビス様。
 モニカは女性だけれど、護衛を任されている程強いことを忘れているのだろうか……

 「まあ! レイビス殿下が、剣術大会にお出になるなんて!」
 「今年の剣術大会は、見応えがありそうですね!」

 レイビス様の宣言が聞こえたのか、周りに生徒達が集まって来る。
 
 「レイビス殿下が出場なさるなら、今年の剣術大会は盛り上がりますね」

 その声が聞こえ、集まって来た生徒達が道を開ける。開かれた道をゆっくりと歩いて来たのは、オリヴィア様だった。
 
 「まさか、モニカも出場するとは思っていなかったわ。女性でありながら、騎士を目指すなんて野蛮だわ」

 モニカの様子が、おかしかった理由が分かった。

 「オリヴィア様のお考えは、随分と古いのですね。モニカは、すでにれっきとした騎士です。スフィリル帝国は、女性でも皇帝になれる国。男女の区別がない、とても素晴らしい国なのに、皇族であるオリヴィア様がそんなことを仰るなんて悲しいです」

 周りの生徒達も、オリヴィア様も言葉を失い、学食内が静まり返った。

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