〖完結〗転生前の記憶が戻ったので、最低な旦那様とはお別れします。

藍川みいな

文字の大きさ
上 下
6 / 7

もうひとつの最終回 前編 (前世…)

しおりを挟む
 
「リベリア伯爵! 出て来てもらおう!」

 しばらくすると、使用人が出て来て昨日と全く同じセリフを言ってくる。

 「旦那様はお会いにならないそうです。」

 「そうはいかない。今日は借用書を持ってきた! この邸はモンタリオール伯爵のものになった為、速やかに出て行ってもらおう!」

 ドリュー男爵のあくどさがここで発揮された。ただ偽の借用書をスチュワートに見せた所で、本人は書いていないのだから偽物だと言われるだけだ。
 だがドリュー男爵は、その借用書をモンタリオール伯爵に見せ、邸を売り払ったのだ。
 モンタリオール伯爵は、ドリュー男爵以上にあくどい。

 例えスチュワートが、借用書は偽物だと言った所で、既に契約を交わしてしまったモンタリオール伯爵は邸を手に入れるまで追い込む人物だ。
 ドリュー男爵に借金した事実がある限り、モンタリオール伯爵にお金を返すか邸を明け渡すしかなくなった。


 つまり、ドリュー男爵に借りたはずの借金がモンタリオール伯爵に借りた事になったということだ。

 「ちゃんと伝えろよ? 使えない使用人め!」

 ドリュー男爵は使用人に唾を吐き、邸に戻って行った。


 「お父様! 私、スッキリしたわ!」

 リベリア邸を売ったお金で、スベン男爵に借金を返し、邸をとられずに済んだ2人は、お祝いにワインを開けていた……そこへ兵士がやって来て、2人は城へと連行された。

 罪状は、文書偽造……スチュワートが訴え出たのだった。

 ドリュー男爵は爵位を剥奪され、邸まで奪われる事になった。2人が何かしようとすればする程何かを失い、そして何もなくなっていた。


 スチュワートもまた、モンタリオールに借金を返済出来ず、邸を明け渡していた。爵位だけはあるスチュワート、女を騙せばいくらでもお金が入ると思っていたのだが……ドリュー男爵の借金踏み倒しが噂となり、スチュワートに誰も近寄ろうとはしなかった。

 
ミリアーナがスチュアートと離縁してから、1年が経とうとしていた。

 ミリアーナの元へ、一通の手紙が届いた。
 その手紙は、ホーレス・ドナルド侯爵様からで、是非一度お会いしたいとの事だった。
 

  邸を訪れたミリアーナは、使用人に庭へと通された。そこには沢山の花が咲いていて、ミリアーナの心は踊った。

 「やはりあなたは、花が大好きなのですね。」

 声をかけられ振り返ると、20代半ば位の優しそうな男性が立っていた。

 「ドナルド侯爵様ですか?……あの、やはりとは?」

 「私はサイモンです……奥様。」

 え……サイモン……!?

 「サイモンて……あの?」

 サイモンは前世で、邸の使用人だった。

 「記憶があるのですね。スチュアート・リベリア伯爵は、旦那様ですよね?二人が前世と同じ出会いをしていたので、気になってずっと調べていたのです。奥様が前世とは違う選択をしたので、もしかしたら記憶があるのかと思い、会いたいと手紙を送りました。」

 サイモンがドナルド侯爵だったの!?

 「サイモン……ドナルド侯爵も、前世の記憶があるのですね。」

 「記憶を取り戻したのは、奥様が嫁いだ後でした……。」

 サイモンには前世でずっと心配させっぱなしで、あのお邸で私の味方はサイモンだけだった。
 
 ミリアーナは時が経つのも忘れて、ドナルド侯爵とずっと話し込んでいた。

 「もう暗くなってしまいましたね。お送りします。」

 「暗くなってることも気づかないくらい、話に夢中になっていました。」

 まだ話したかった私は、乗ってきた馬車を先に帰し、ホーレス様に送ってもらうことにした。

 馬車に揺られながら、前世の事を思い出す。あんなに心配してくれたサイモンに何も言わず、私は、命を絶ってしまった。

 「……ごめんなさい。」

 謝らずにはいられなかった。

 「謝らないでください。」

 ドナルド侯爵はミリアーナの様子で察したようだ。

 「ミリアーナ嬢を守って差し上げられなかった私の方こそ、謝らなくては。」

 「そんな……ホーレス様は私の心の支えでした。」

 「そう思ってくださるなら……私にまた、あなたを支えさせていただけませんか?今度は夫として。」

 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

初恋の呪縛

緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」  王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。  ※ 全6話完結予定

完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。 アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

【完結】初恋の人も婚約者も妹に奪われました

紫崎 藍華
恋愛
ジュリアナは婚約者のマーキースから妹のマリアンことが好きだと打ち明けられた。 幼い頃、初恋の相手を妹に奪われ、そして今、婚約者まで奪われたのだ。 ジュリアナはマーキースからの婚約破棄を受け入れた。 奪うほうも奪われるほうも幸せになれるはずがないと考えれば未練なんてあるはずもなかった。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?

音爽(ネソウ)
恋愛
勇者だと持ち上げられた彼はこれまでの功績すべてが自分のものと思い込む。 たしかに前衛に立つ彼は目立つ存在だった、しかしペアを組んだ彼女がいてこそなのだが……。

処理中です...