〖完結〗転生前の記憶が戻ったので、最低な旦那様とはお別れします。

藍川みいな

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醜い争い

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 「お、お父様!? どうしてそんな事書いたのですか!?」

 「すぐに返せると思ったからだ! 頼む! 邸は見逃してくれ!」

 「3日猶予をやる。それまでに邸から出て行け。」

 スベン男爵は冷たく言い放つと応接室から出て行き、 残された2人はしばらく動くことが出来なかった。

 しばらくすると、応接室から怒鳴り声が聞こえてきた。

 「お前のせいだ! お前があんな男にうつつを抜かしたから、こんな事になったんだ!」

 「スチュワート様が離縁されたと聞いて、大喜びでお金を貸したのはお父様でしょ!?」

 2人の言い合いは1時間にも及んだ……。


 「応接室にいる親子、よくやるわよね。片付かないから、早く帰ってくれないかしら。」

 「旦那様に追い込まれたらしいわ。」

 「旦那様を敵に回したんだから、もうおしまいよ。」

 使用人達は2人の怒鳴り声を聞きながら、『早く帰れ!』と思っていた。


 応接室がやっと静かになったと思ったら、2人はすごい勢いで邸を出て行き、リベリア邸へと向かった。

 「旦那様はお会いにならないそうです。」

 スチュワートは、ドリュー男爵ともう二度と会うつもりはなかった。財産のないドリュー男爵になど、何も出来るはずがないと思い、借金を踏み倒すつもりだ。

 「ふざけるな! リベリア伯爵を出せ!」

 「そうよ! スチュワート様は私と結婚すると、約束してくださったのよ!」

 どんなに叫んでもスチュワートが出てくることはなく、頼みの綱にも見捨てられ途方に暮れた。

 3日後に追い出される邸へと帰ると、使用人は誰もいなかった。全財産を失った一代貴族の男爵に仕えたいものなど、誰もいなかったのだ。

 「お父様……これからどうしましょう?」

 「まだお前は貴族だ。どこかの貴族に嫁ぐ事が出来るはず!」

 それはムリな話だった。シンディがスチュワートの愛人だった事は、貴族の間に広まっていた。
 他の男の愛人だった者を妻にするような貴族などそうそういない……。

 「お父様、私……スチュワート様が許せない!」

 「あの男がのうのうと暮らしているのが許せん!  スベンが使った手を利用しよう……。」

 スベン男爵が使った手とは、借用書の事だった。スチュワートには借用書など書いてもらってはいないが、借用書を偽造して邸をいただこうと考えた。

 「貧乏なスチュワート様には、何も出来ないはず……私達を裏切った事を後悔させてやる!」

 翌日、2人は偽造した借用書を持ってリベリア邸に再び訪れた。

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