上 下
6 / 8

純情な愛情

しおりを挟む

 アーチャーはエリーサを庇い、背中から脇腹を刺されていた!
 エリーサはアーチャーの体を抱き起こし、

 「アーチャー様!しっかりしてください!」

 アーチャーがエリーサを庇ったことも、エイミーには許せなかった!

 「あんたのせいよ!あんたのせいで皆不幸になる!死ねよ!!!」

 アーチャーを事を刺した血が滴るナイフを、エイミーが振り上げた瞬間……

 ガシッ!

 振り上げた手を、ラルフが掴んだ!

 「やめろ!!エリーサを傷つける事は、絶対に許さない!!」

 騒ぎを聞きつけた人が兵士を呼び、エイミーは連行されて行った。嫉妬深いエイミーの被害者は、アーチャーとエリーサだけではなかった。
 エイミーは人気者の令嬢の友達になり、その友達の想い人を好きになる。そして誘惑し、手に入らないと逆上して傷付けるという事を繰り返していたのだ。その事が表に出て来なかったのは、父であるブライト伯爵が大金を使いもみ消していたからだった。
 今回ばかりは、ブライト伯爵にももみ消すことは出来ず、エイミーは国外追放となり、娘の悪事を隠していたブライト伯爵の爵位も剥奪された。

 刺されたアーチャーはすぐに病院へと運ばれ命に別状はなかったのだが、まだ目を覚まさずにいた。


 「エリーサ、すまなかった。」 

 あの日から毎日、アーチャーの看病をしに病院へ通っているエリーサを訪ねてきたラルフは、謝罪の言葉を口にした。

 「私はアーチャーには勝てないと、あの時分かったよ。」

 「え……?」

 「あの時……エイミーがナイフを取り出した時、私の方が君の近くにいたのに、一歩も動くことが出来なかった。」

 あの瞬間、ラルフはアーチャーに負けたと思った。あんなに大切で大好きで守りたいと思っていたのに、いざとなったら動くことが出来なかった自分に失望していた。

 「エリーサ、幸せになれよ。」

 ラルフは涙を堪え、去って行く。

 「ラルフ様!ありがとうございます!」

 愛し方は間違っていたが、ラルフは本当にエリーサを愛していた。 立ち直るには少し時間がかかるかもしれないが、次に二人に会う時は笑顔で会おうと心に決めた。

 「アーチャー様、早く目を覚ましてください。ラルフ様が私達の事を、認めてくれたんですよ。」

 アーチャー様は、私が辛い時にずっと傍に居てくれた。今度は私が、アーチャー様の傍に居ます。
 
 「今日はいい天気ですね。天気がいいと、昔の事を思い出します。子供の頃勉強が嫌で、よく3人で抜け出して遊びましたよね。」

 ベッドの横にあるイスに座りながら窓の外を見る。

 「あの頃から、アーチャー様は私を想って下さっていたのですよね。」

 エリーサの頬を涙がつたう……

 「泣かないで……。」

 その言葉と共に、エリーサの頬に指が触れた。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を破棄して妹と結婚?実は私もう結婚してるんです。

京月
恋愛
グレーテルは平凡だ。しかし妹は本当に同じ血が流れているのかと疑いが出るほど美人で有名だった。ある日婚約者から一言「俺はお前との婚約を破棄してお前の妹と結婚する」→「ごめんなさい、実は私もう結婚しているんです」

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

婚約破棄って…私まだ12歳なんですけど…

京月
恋愛
 スラリと伸びた手足に風でたなびくサラサラな髪の毛。誰もが二度見をしてしまうほどの美貌を持つ彼女の名前はリンデ。誰にでも分け隔てなく笑顔を振りまく貴族の鏡のような子。そんな彼女には年上の婚約者がいた。ある日突然婚約者は真剣な顔で私を問い詰める。 「リンデ、お前浮気してるだろ!見損なった、お前とは婚約破棄だ」

婚約者が妹と浮気してました!?許すはずがありません!!

京月
恋愛
目の前で土下座をするのは私ことディーゼの婚約者ハルド、そして実の妹であるロルゼだった。 「「頼む(お願い)!このことだけはあの人に言わないでくれ(言わないで)!!」」

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

浮気性の旦那から離婚届が届きました。お礼に感謝状を送りつけます。

京月
恋愛
旦那は騎士団長という素晴らしい役職についているが人としては最悪の男だった。妻のローゼは日々の旦那への不満が爆発し旦那を家から追い出したところ数日後に離婚届が届いた。 「今の住所が書いてある…フフフ、感謝状を書くべきね」

私の妹と結婚するから婚約破棄する? 私、弟しかいませんけど…

京月
恋愛
 私の婚約者は婚約記念日に突然告白した。 「俺、君の妹のルーと結婚したい。だから婚約破棄してくれ」 「…わかった、婚約破棄するわ。だけどこれだけは言わせて……私、弟しかいないよ」 「え?」

処理中です...