11 / 18
11、どうしようもない親
しおりを挟む「お話とは?」
そう聞きながら、マディソンをチラリと見る。彼女が私に泣き付いたとでも思っているのか、パウエル子爵夫妻は焦っているように見える。
告げ口されるとまずいという、自覚はあるようだ。
「単刀直入に申します。マディソンを、私の侍女にと考えております」
「そ……れは、素晴らしい! それで、給金はいかほどですかな?」
作り笑顔が本物の笑顔になり、嬉しそうにお金の話をするパウエル子爵。
「つきましては、こちらにサインをお願いします」
パウエル子爵家のことを調べさせた後、書類も揃えてもらっていた。
書類には、『マディソンをブライド公爵家の使用人として、住み込みで働かせることとする』『マディソンに支払われた賃金は、マディソン個人のものとし、第三者が所有、または使用してはならない』と記されている。
「これは……マディソンを、タダで寄越せと仰っているのですか!?」
書類を見るまで嬉しそうだったのに、今度はものすごい形相で怒り出した。
「何を仰っているのですか? マディソン個人に、お給料を支払うと言っているだけです。まさか、そのお金を横取りするおつもりだったのですか?」
「マディソンは、私達の娘です! 娘の稼いだ金を、どう使おうが勝手だ!」
横取りする気だったと、素直に認めてしまっている。
マディソンは、邸に帰って来てからずっと震えている。家族のはずなのに、邸に居場所なんかない。使用人達がマディソンを見る目も、冷たかった。
「マディソンは、あなた方の道具ではありません! 一人の人間です! どうしてそれが、分からないのですか? こんなにいい子に育ってくれたのに、どうしてこんなに酷い扱いをするのですか?」
マディソンの震える手の上に、自分の手を重ねる。
「な!? 令嬢の分際で、私に意見しようというのか!?」
令嬢の分際……その通りだけれど、間違っているものは間違っている。
父の名を出してもいいけれど、今はその必要はない。切り札は、取っておかなくては。
「あなた方がマディソンにして来たことは、ちょっと調べただけでボロボロと出て来ました。今日は、マディソンについてのことだけを調べましたが、他のことも調べてみましょうか?」
調べると言っただけなのに、パウエル子爵の顔が真っ青になっている。
「……わ、分かりました。サイン……いたします」
パウエル子爵は、渋々書類にサインし、手渡して来た。
急にこんなに素直になったということは、やましいことがあるといっているようなものだ。そして私は、調べないとは言っていない。
パウエル子爵のことは、マディソンの意見を聞いてから考えようと思う。
「ご理解いただけて、感謝いたします。では、私達はこれで失礼します」
マディソンと一緒にソファーを立ち上がったところで、応接室の扉が乱暴に開かれた。
「私の家で、リアナ様が何をしているのですか!?」
入って来たのは、セシリー様だった。私が来ていると、使用人に聞いたようだ。彼女は私を睨み付けた後、マディソンの顔を蔑んだ目で見ている。
「まあ! セシリー様、お帰りなさい。ちょうど今、帰るところでしたの」
まさか、私が邸に来るとは思ってもみなかっただろう。驚きと戸惑い、そして怒りも表情に現れている。
「オリバー殿下が私を選んで下さったから、悔しくて邸にまで文句を言いにいらしたのですか? ご自分に魅力がなかったのだと、素直に諦めたらよろしいのでは?」
私がセシリー様に文句など言ったことは、なかったと思うけれど……
「直接お話しするのは、これが初めてですね。今日の目的は、あなたではありません。セシリー様とは、今度ゆっくりと。私、借りを作るのは嫌いですの。ですから、全てお返しいたします」
セシリー様、あなたは許せない。
オリバー殿下をそそのかしてダンスパーティーの日に私に濡れ衣を着せたことまでは、正直どうでもいい。そのおかげで、殿下への気持ちがなくなり自由になれたからだ。
けれど、その後私の家族を脅しの材料に使おうとしたことや、マディソンに対しての行為は絶対に許せない。
私を敵に回したことを、後悔させてあげる。
2,162
あなたにおすすめの小説
【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?
ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。
アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。
15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる