〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな

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11、どうしようもない親

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 「お話とは?」 

 そう聞きながら、マディソンをチラリと見る。彼女が私に泣き付いたとでも思っているのか、パウエル子爵夫妻は焦っているように見える。
 告げ口されるとまずいという、自覚はあるようだ。

 「単刀直入に申します。マディソンを、私の侍女にと考えております」

 「そ……れは、素晴らしい! それで、給金はいかほどですかな?」

 作り笑顔が本物の笑顔になり、嬉しそうにお金の話をするパウエル子爵。

 「つきましては、こちらにサインをお願いします」

 パウエル子爵家のことを調べさせた後、書類も揃えてもらっていた。
 書類には、『マディソンをブライド公爵家の使用人として、住み込みで働かせることとする』『マディソンに支払われた賃金は、マディソン個人のものとし、第三者が所有、または使用してはならない』と記されている。

 「これは……マディソンを、タダで寄越せと仰っているのですか!?」

 書類を見るまで嬉しそうだったのに、今度はものすごい形相で怒り出した。

 「何を仰っているのですか? マディソン個人に、お給料を支払うと言っているだけです。まさか、そのお金を横取りするおつもりだったのですか?」

 「マディソンは、私達の娘です! 娘の稼いだ金を、どう使おうが勝手だ!」

 横取りする気だったと、素直に認めてしまっている。
 マディソンは、邸に帰って来てからずっと震えている。家族のはずなのに、邸に居場所なんかない。使用人達がマディソンを見る目も、冷たかった。

 「マディソンは、あなた方の道具ではありません! 一人の人間です! どうしてそれが、分からないのですか? こんなにいい子に育ってくれたのに、どうしてこんなに酷い扱いをするのですか?」

 マディソンの震える手の上に、自分の手を重ねる。

 「な!? 令嬢の分際で、私に意見しようというのか!?」

 令嬢の分際……その通りだけれど、間違っているものは間違っている。
 父の名を出してもいいけれど、今はその必要はない。切り札は、取っておかなくては。

 「あなた方がマディソンにして来たことは、ちょっと調べただけでボロボロと出て来ました。今日は、マディソンについてのことだけを調べましたが、他のことも調べてみましょうか?」

 調べると言っただけなのに、パウエル子爵の顔が真っ青になっている。

 「……わ、分かりました。サイン……いたします」

 パウエル子爵は、渋々書類にサインし、手渡して来た。
 急にこんなに素直になったということは、やましいことがあるといっているようなものだ。そして私は、調とは言っていない。
 パウエル子爵のことは、マディソンの意見を聞いてから考えようと思う。

 「ご理解いただけて、感謝いたします。では、私達はこれで失礼します」

 マディソンと一緒にソファーを立ち上がったところで、応接室の扉が乱暴に開かれた。

 「私の家で、リアナ様が何をしているのですか!?」

 入って来たのは、セシリー様だった。私が来ていると、使用人に聞いたようだ。彼女は私を睨み付けた後、マディソンの顔を蔑んだ目で見ている。

 「まあ! セシリー様、お帰りなさい。ちょうど今、帰るところでしたの」

 まさか、私が邸に来るとは思ってもみなかっただろう。驚きと戸惑い、そして怒りも表情に現れている。

 「オリバー殿下が私を選んで下さったから、悔しくて邸にまで文句を言いにいらしたのですか? ご自分に魅力がなかったのだと、素直に諦めたらよろしいのでは?」

 私がセシリー様に文句など言ったことは、なかったと思うけれど……

 「直接お話しするのは、これが初めてですね。今日の目的は、あなたではありません。セシリー様とは、今度ゆっくりと。私、借りを作るのは嫌いですの。ですから、全てお返しいたします」

 セシリー様、あなたは許せない。
 オリバー殿下をそそのかしてダンスパーティーの日に私に濡れ衣を着せたことまでは、正直どうでもいい。そのおかげで、殿下への気持ちがなくなり自由になれたからだ。
 けれど、その後私の家族を脅しの材料に使おうとしたことや、マディソンに対しての行為は絶対に許せない。
 私を敵に回したことを、後悔させてあげる。

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