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信じて…

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 ダリル様から婚約破棄を告げられ、私は呆然としていた。
 この事をどうやってお父様に話したらいいの? もうすぐ嫁ぐはずだった娘が、浮気したと疑われ、婚約を破棄されたと?
 そんな事、言えるはずがありません……。
 ダリル様とちゃんと話をしたら、分かってくれるかもしれない。先程は急な事で、驚いてああ言っただけかもしれないし、気持ちが落ち着いたら分かってくださる。婚約してから5年、ダリル様だけを見てきたのはご存知のはず……。

 数時間後、メーガンはビーンホルト侯爵の邸を訪れたが、「もう二度と会う事はない。」と追い返されてしまった。

 帰りの馬車の中で、お父様にどう話すか考えていたけど、結局まとまらないまま邸へと帰って来てしまった。

 「お嬢様、お邸に到着しました。」

 使用人に促され、馬車からおりる。

 いつまでも逃げてはいられないし、ちゃんとお話しなくてはいけませんね。お父様なら私を信じてくれるはずです。
 そう思い、玄関開けると、

 「お前は何を考えているんだ!?」

 玄関でメーガンの帰りをずっと待っていたのか、メーガンが玄関を開けて入った瞬間、ホルツ伯爵は怒鳴り声をあげた。

 「お父様!?」

 「ボーデン伯爵令嬢の婚約者と浮気をしていたそうだな! しかも、それがバレてダリルに婚約破棄されたそうじゃないか!」

 つい先程の事なのに、どうしてお父様が知っているのですか?

 「お父様、それは誤解です! 私は浮気なんてしていません!」

 「お前にはガッカリだ。当分の間、外出を禁じる! メーガンを部屋に閉じ込めておけ!」
 
 ホルツ伯爵に命令された使用人達は、メーガンを部屋へと連れて行く。

 「お父様! 話しを聞いてください! お父様ーっ!!」

 メーガンの話には全く聞く耳を持たず、ホルツ伯爵は自室へと戻って行った。
 使用人達は、メーガンを部屋へと連れて行き鍵をかけた。

 昨日までは平穏な日々だったのに、どうして誰も、私の話を聞いてくれなのでしょう……。
 せめてお父様には、信じて欲しかったです。

 コンコン……

 すごく小さなノックの音が聞こえて来た。
 ドアの前に行き、耳をすませてみると、
 
 「お嬢様、メーガンお嬢様聞こえますか?」

 この声は……

 「マリー? マリーなの!?」

 使用人のマリーが、ドアの前で小声で私を呼んでいた。
 
 「メーガンお嬢様、お可哀想に……。お嬢様が他の方に余所見などするはずないのに、旦那様はどうしてこのような事を……」

 「マリー……あなたは私を、信じてくれるの?」

 「もちろんです! お嬢様はそのような事をする方ではありません!」

 たった一人でも、私を信じてくれる人がいる事が、こんなにも嬉しいとは思わなかった。

 「マリーありがとう。どうしてお父様は、婚約破棄された事を知っていたの?」 

 「それが……お嬢様が出かけた後、直ぐに手紙が届き、その手紙を読んだ旦那様が急に激怒なされて……」

 私が出かけてすぐって……何も起きていない状態で手紙が!? まさか最初から仕組まれていたという事!?


 
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