〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな

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32、動き出すアンダーソン公爵家

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 ナラードから帰国して、1ヶ月が経ちました。
 アンダーソン公爵家の動きはまだなく、平穏な日々が続いています。

 「今日の料理も美味しい! こんなに美味しいと、太ってしまいそうです」

 最近の悩みは、ルーク様の作る料理が美味し過ぎて食べ過ぎてしまうことです!
 運動も毎日しているのですが、それ以上に食べ過ぎてしまいます。

 「太ったからって、気持ちは変わらないから安心していいよ。沢山あるから、もっと食べて」

 そういう問題ではありません! 女性にとって、太ることは大問題なのです!

 「ルーク様は、女心を分かっていませんね」

 女性はいつだって、綺麗でいたいんです。好きな人に、綺麗だって思われたいのです。
 ものすごく綺麗なお顔のルーク様には、分からないかもしれませんね。
 
 「そんなに気になるなら、これからはヘルシーな料理を作るよ」

 女心は分からないけど、私の気持ちは考えてくれるようです。

 「ありがとうございます。さすがルーク様!」

 「だろ? 俺はすごい!」

 褒めると子供のように喜ぶルーク様を見てると、なんて扱いやすいんだろうと思ってしまいます。

 


 「殿下! アンダーソン公爵家が動き出しました!」

 臣下から受けた報告で、和やかな雰囲気が一転しました。

 「とうとう動き出したか。で、何をする気だ?」

 子供のように笑っていたルーク様の顔が、険しい表情に。

 「タジガナル王国に、使いの者を送ったところだったようで、その使いを捕えて書状を奪ったのですが、どうやらアンダーソン公爵はタジガナル王国と手を組もうとしていたようです。
 ただ、書状に記された名はアンダーソン公爵の親戚のものになっている為、この書状だけではアンダーソン公爵を罪に問えません!」

 タジガナル王国は、この国ドラナルド王国の次に大きな国です。今は同盟を結んでいますが、5年前まで敵対していました。
 明らかに国に対する裏切り行為なのに、書状だけではアンダーソン公爵を捕らえることが出来ないなんて……
 アンダーソン公爵の親戚を捕らえたところで、話してくれるとは思えませんし。
 アンダーソン公爵は、この国で並ぶ者はいないほどの大貴族だったそうです。先代の国王様は、アンダーソン公爵と敵対することを懸念し、アンダーソン公爵家から王妃をと思っていたようですが、今の国王様は、王妃様と結婚することを選んだことで、王妃様のご実家であるシーブル公爵家がアンダーソン公爵家と肩を並べることになりました。それが、前国王様が王妃様との結婚を認めた理由のようです。 貴族同士と王家との力の均衡を保つためには、アンダーソン公爵家から王妃を出さない方が良いのですが、約束は約束ということで、ロイド様とリンダ様を婚約させました。ですが、ロイド様は亡くなってしまい、またアンダーソン公爵家から王妃が出ることがなくなってしまいました。私達の子がアンダーソン公爵家から妻を娶ることになると思っていたのですが、今のアンダーソン公爵家当主は待てなかったようです。一族の為……ではなく、自分が権力を握りたいのでしょう。
 アンダーソン公爵家は権力の為に、非道な行いをしてきたようなのですが、それを表に出ないように揉み消してきたようです。時には、親戚を切り捨ててまで。今回もきっと、親戚に罪を着せて切り捨てるつもりなのでしょう。

 「タジガナルと手を組み、この国を乗っ取るつもりなのか。その書状を持って来てくれ。俺が直接、タジガナルに向かう」

 「殿下がですか?」

 「アンダーソン公爵の企みを阻止するしかない。誠意を見せるためには、俺が行くのが1番いい。それと、アンダーソン公爵に動きを悟られない為に、護衛は2人にしてくれ。1時間後に出発する!」

 そんな……それは、あまりにも危険です。今は同盟国だとしても、いつ裏切るか……
 それが分かっているから、アンダーソン公爵もタジガナルに書状を送ろうとしていたはず。
 ですが、これが最善なのだということは分かっています。私には、ルーク様をお止めすることは出来ません。

 「ルーク様、無事にお帰りになるのをお待ちしております」

 これは、王太子妃としての言葉。
 本当は、行って欲しくなんかありません。だけど、私の夫は王太子で、私は王太子妃です。
 信じて待つしかありません。

 「ありがとう。俺が戻るまでは、危険な目に合わないように城から出ないでくれ。それじゃ、行ってくる」

 私の頭に手を乗せポンポンとしてから、優しい笑顔を向けてくれました。ルーク様、絶対に無事で帰ってきてください!


 1時間後、ルーク様は護衛を2人だけ連れて、タジガナル王国へと出発しました。
 私はこのことを、王様と王妃様にお伝えしに行くことにしました。

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