〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな

文字の大きさ
上 下
28 / 44

28、ナラード王国に到着しました

しおりを挟む


 1ヶ月の馬車での長旅を経て、ナラードへと到着した私達を、ナラードの国王が出迎えてくださいました。

 「よく来てくれた! 長旅でお疲れでしょう。舞踏会は3日後、それまで用意した部屋でゆっくり過ごして欲しい」

 私達は舞踏会の日まで、城から出ないことを伝えていました。私が見つかるのを避けるためです。
 王城とはいえ、お姉様の遊び相手がいないとも限りません。城の中でも気をつけなければなりません。舞踏会までは、お姉様に知られたくないからです。
 部屋へと案内してもらい、ようやく一息つけました。

 「結構目立っていましたね」

 馬車4台と馬に乗った護衛が100人なのだから、目立たないわけがないのですが……

 「ドラナルドの王太子夫妻が来ることは知らされているはずだから、見物人が多かったようだ」

 ドラナルドは、この大陸で最も大きな国で、どの国も敵に回したくない国です。その国の次期国王が訪問して来たのですから、見物したくなる気持ちも分かります。

 「今更ながら、私はすごい方と結婚したのですね」

 「君なしでは今の俺はいない。これからもずっと、そばに居てくれなくては困る」

 「離れるつもりなんて、ありませんよ? たとえルーク様が嫌がっても、ずーっとくっついています!」

 「嫌がるはずがない。君が思っているよりもずっと、俺は君を愛してる」

 ルーク様はいつも、私が言ったことよりさらに嬉しい言葉で返してくれます。それほど想ってくださっているのだと、全力で伝えてくれます。
 愛される喜びを教えてくれた、ただ一人の人。

 「いつそんな甘い言葉を、覚えたのですか?」

 「本心を言っているだけだ」

 知っています。いつだってルーク様は、本心しか言いませんでした。だから、騙されて傷ついた私が、ルーク様を信じることが出来たのです。絶対に私を裏切らないと信じられる人。
 
 「そうですよね。私の料理は食べたくないとハッキリおっしゃいますから」

 あまりにも素直な方だから、恥ずかしくて誤魔化してしまいました。

 「食べたくないとは言っていない。俺はまだ死にたくないと言ったんだ」

 「もっと酷くありませんか?」

 あはははっと笑いながら、おどけるルーク様。

 「君は俺の料理を食べてくれればいい。作るのは、俺に任せて」

 ルーク様の料理、1ヶ月食べていません。めちゃくちゃ食べたいです。そんな事を考えていたら……

 ぐうううううううぅぅぅぅぅぅッと、盛大にお腹がなりました。

 「ぷぷーーーッ!! あはははっ!!」

 「もう! そんなに笑わなくても、いいじゃないですか!! ルーク様の料理のことを考えてたら、お腹が空いちゃったんです!」

 「いや、だって、君のお腹は素直だなって思って……ぷぷぷっ!! 本当に可愛いな!」

 ルーク様の前でお腹が鳴るのは2回目です。あの時も、笑われてしまいました。そういえば、なんて失礼な人って思っていました。そんな失礼な人をこんなに愛するようになるなんて、不思議ですね。

 「ルーク様、厨房をお借りできませんか? ルーク様の料理をずっと食べていないから、禁断症状が……」

 「初めて俺の料理を食べたいと言ってくれたね」

 まっすぐ見つめられて、恥ずかしさから目を逸らしてしまいました。

 「食べたいとは、言っていませんよ?」

 「素直じゃないところも、大好きだよ」

 「……ルーク様、変わっていますね」

 「変わってるかな? 俺はただ、アナベルの全てが好きなだけだよ」

 素直じゃない私に、めちゃくちゃ素直に気持ちを伝えてくれるルーク様。もう少し、素直になれるように頑張ります。


 

 ナラード王国に来て、2日が過ぎました。ずっと城の中にいたのに、ルーク様と一緒にいたらあっという間でした。イチャイチャしたり……イチャイチャしたり……イチャイチャしたり……って、頭の中お花畑じゃないですか!!
 そんな事ばかりしていたわけではありません。どうしたら、お姉様を止められるのかを話し合い、結論はシルビア様のあの手紙を、ブライト公爵に渡すことが最善だということになりました。
 あの手紙だけではお姉様がシルビア様を殺めた証拠にはなりませんし、ホーリー侯爵と浮気をしていた証拠にもなりませんが、ブライト公爵にお姉様の本性を知って欲しかったからです。 
 シルビア様がブライト公爵に話そうとしていたことを、ブライト公爵に知っていただくのが1番だと思います。



 舞踏会が始まる数時間前に、ナラードの国王様に頼み、ブライト公爵にお会いすることになりました。
 
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

処理中です...