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25、初めての……
しおりを挟む王様と王妃様は、バルコニーで2人でワインを飲んでいらっしゃいました。
「父上! アナベルが父上とワインを飲みたいそうです」
王様は立ち上がり、
「おお、そうかそうか! 2人ともこちらに来て座りなさい」
バルコニーには丸いテーブルが2つ並んで置いてあり、私達は国王様と王妃様の座っているテーブルの横のテーブルに座りました。
メイド達がワインと料理を運んで来て、美味しいお酒と料理に舌鼓を打ちます。
「アナベルが食べる料理は、俺が作りたかったな」
ルーク様は私が料理を口にする度に、拗ねたように口を尖らせています。
「私達はどうでもいいようです。妻のことばかり考えて、息子なんてこんなものよね」
ルーク様が、私ばかりを見ているから王妃様も拗ねています。
「王妃は私より、ルークとアナベルのことばかりではないか!」
王妃様に相手にされない国王も拗ねています。
……やっぱり親子ですね。そっくりです。あ、国王様と王妃様は親子ではありませんが。
「王様と王妃様は、大恋愛だったとルーク様からお聞きしました。どのような出会いだったのですか?」
「私には婚約者がいたんだ。だが、王妃に出会い、愛するという気持ちを知った私は、王妃と結婚する為に必死で前国王である父を説得した。父は許してくれたのだが、その婚約者の父親の公爵が激怒してしまってね。私達の子が、その公爵家から妻を娶るという事で話は落ち着き、私達は結婚したというわけだ」
王様は、王妃様をとても愛しいるのですね。
あれ? でも、それって……
「あの……その公爵家から妻を娶るというのは?」
「ああ、ルークの兄であるロイドと、婚約をさせていたんだ。だが、ロイドは事故にあって、この世を去ってしまったんだ。結局、約束を破る形になってしまった……」
ルーク様のお兄様の婚約者……
その方は、婚約者を亡くされたのですね。
「王子と婚約した者は、他の者と結婚出来ないのがこの国の決まりなのだが、そんな決まりはもう古いと思っている。ロイドの婚約者だったリンダには、幸せになってもらいたいと思い、王族との結婚を勧めたのだが、断られてしまった」
そんな風に考えてくださる王様だから、結婚していた私を王太子妃に迎えてくださったのですね。
「俺は兄上に、何もかも敵わなかった。料理だけは、負けなかったけど」
「よく言うわ。勝とうと思っていなかったじゃない。ロイドは、全部分かっていたわよ」
素敵な兄弟ですね。私達姉妹とは大違いです。
「ロイドが亡くなって、もう6年か。アナベルを紹介してやりたかったな」
「そうですね。きっとロイドも、アナベルのことを気に入ったわ」
「私もお会いしたかったです」
「しんみりするなよ! 今日はめでたい日なんだから、兄上も天国で酒を飲んでるさ」
「そうだな。もう一度乾杯だ!」
「「「「カンパーイ!」」」」
楽しい時間は、あっという間に過ぎていきました。この日は遅くまでワインを飲み、私は途中で眠ってしまったようで……
目を覚ましたら、朝でした。
私ったら、眠ってしまうなんて……
となりを見ると、ルーク様がぐっすり眠っていました。
初夜なのに、眠ってしまってごめんなさい。それに、王様と王妃様の前で寝ちゃうなんてダメダメですね。
それにしても、なんて可愛い寝顔なのでしょう。まつ毛長いですね。鼻も高い。唇もふっくらしてて柔らかい。
最初の印象が最悪だったから、全く気づかなかったけど、ルーク様ってかなり美形ですね。ずっと見ていても飽きないです。
「……ん……」
起きちゃう! どうする? 寝たフリする?
私、慌てすぎ!! 寝たフリしましょう!
急いで目をつぶり、寝たフリをしていると、フワッと頭の上に手を置かれ撫でられました。
「目が覚めたら、となりに愛する人がいるなんて幸せだ」
私もですって言いたいけど、いつ目を開けたらいいのでしょう……
「……まぶたがピクピクしてる。寝たフリしてる?」
「……バレました?」
そっと目を開けると、とても穏やかな顔で見つめられていました。
「お仕置が必要かな?」
お仕置? と、聞き返そうとした瞬間、優しく唇を塞がれました。
「んっ……」
キスは次第に激しくなり、
「もう朝だけど、我慢出来そうにない……」
色っぽい目でそう言われ、ルーク様が私に覆いかぶさってきました。
「私も……我慢出来ません……」
そのまま私達はお互いを求め合いました。とっても甘くて、とろけそう……
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