〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな

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20、王子様!?

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 ―舞踏会から1年と1ヶ月前―

 「どうして、王城へ行くの!?」

 ルークの故郷というのは、ドラナルド王国でした。1ヶ月かけてドラナルド王国に辿り着いたまでは良かったのですが、ルークは王城に行こうと言い出したのです。

 「どうしてって、王城が家だからです」

 城は家じゃないです! 
 ご両親が王城で働いてる? だとしても、自分の家が城だとはいわない……まさか……

 ルークに強引に王城へと連れて行かれ、門の前に立つと……

 「まさか……ルーク王子様!?」

 門番がルークを王子様と呼びました。
 もうルークなら何でもありな気がしてきました。

 「久しぶりだな。元気だったか?」

 ルークが……ルーク王子が、門番の男性の肩をぽんぽんと叩くと、門番の男性は泣き出してしまいました。

 「今まで……グスっ……どこに行って……っ……おられたのですか……ぅぅ……」

 門番の反応で、ルーク王子が愛されていたのだと分かります。

 「自分を見つめ直していたんだ。それと、愛する人探し!」

 「そちらの方が、ルーク王子様の愛する方ですか!?」

 この状況はなんでしょう……
 めちゃくちゃ見られてるし、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……

 「そうだ! 彼女は俺の、最も大切な人だ!」

 最も大切な人……そんな風にハッキリ言ってもらえて、嬉しくないはずがありません。だけど、私はエルビン様の妻のままですし、例え離縁していても王子様の相手として相応しいとは言えません。

 門番と別れ城の中に入ると、中にいる皆がルーク王子の顔を見て泣き出してしまいました。
 
 「ルーク王子様が、お帰りに……うぅ……」
 「お帰りなさいませ! お帰りをお待ちしておりました!」
 「ルーク様……うわあああああん……」

 その様子を見たルーク王子は、一人一人に、「ただいま!」と言って、奥に進んで行きます。

 「そろそろ、説明してくれませんか?」

 長い廊下を歩きながら、ルーク王子に話しかけました。

 「やっぱり、説明しなきゃダメですか?」

 ダメに決まってるじゃないですか! 
 ルークがドラナルドの王子様なのは、もう十分分かったけど、どうして私をここに連れて来たのか分かりません。

 ルーク王子は廊下の突き当たりにある部屋のドアを開け、

 「少しここで、待っていてくれませんか? 後でキチンと、説明します」

 そう言って、部屋の中にある長いテーブルの真ん中の席のイスを引き、私を座らせました。
 仕方ないから、もう少しだけ待ってあげることにします。
 
 「納得いく説明じゃなかったら、怒りますからね」

 私の言葉に、ルークはニッコリと笑って部屋から出て行きました。……私、ルークに弱い気がします。
 それにしても、どうして大国の王子様が、他国で使用人として働いていたのでしょうか? 
 いくら料理を作るのが好きだからといって、人に使われることを選ぶなんて、本当に不思議な人ですね。

 しばらくすると、部屋のドアが開きました。
 ルークが戻って来たのかと思い立ち上がった時、目に映ったのはこの国の国王様と王妃様でした。

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