〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな

文字の大きさ
上 下
14 / 44

14、理不尽な嫉妬

しおりを挟む


 「エルビン様、いきなりどういうおつもりですか!?」

 エルビン様は部屋に入って来てから、ずっとルークを睨み付けています。

 「妻の部屋に入り、誘惑していたんだろう!? アナベルは俺の妻だ!! 貴様のような使用人が、気安く話していい相手ではない!!」

 まさか、嫉妬しているのですか!?
 
 「おやめ下さい! ルークは、食事を運んでくれただけです! それに、エルビン様が言えた義理ではありません!!」

 自分はお姉様とあんな事をしておいて、私は使用人と話すのも許されないのですか!? バカにしていますね!

 「お、俺はただ……」

 「ただ、何ですか?」

 「俺は君の夫だ!! 妻に近寄る虫が許せなかっただけだ!!」

 虫はあなたです!!

 「それなら言わせていただきます!
 エルビン様の妻は私なのに、どうして私の姉と寝ているのですか!? お姉様と寝るなら、私と離縁してください!!」

 後悔させるつもりだったのに、あまりにも腹が立って、あっさり別れを告げてしまいました……

 「それは、イザベラを愛しているからだ! だが、君も好きだと言ったじゃないか!! 君と別れるつもりはない!!」

 えっと……エルビン様って、こんな人でしたっけ? 私が愛したはずのエルビン様は、もうどこにもいないのですね。

 「お姉様のどこを愛せるのですか? エルビン様は、お姉様の事を何も知りませんよね?」

 エルビン様とお姉様は、それほど親しくしていたわけではありません。

 「顔に決まっているだろ?」

 堂々と、顔だと言うエルビン様に呆れました。

 「バカだな。奥様を裏切った理由が顔!? よくそれで、俺に『妻に近付くな!』なんて言えたな」

 え……ルーク?

 ずっと様子を見ていたルークが、エルビン様を睨み付けながら暴言を吐きました。

 「き、貴様! 俺は主人だぞ!? その口の聞き方はなんだ!!」

 「クビにしたいならすればいい。あんたにとって、何が大事なのかよく考えろ。
 顔だけのアバズレか、心の綺麗な奥様か、両方は手に入らないんだよ!!」

 「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れっ!!!
 貴様はクビだ!! 今すぐ出ていけ!!」

 ルークが、いなくなってしまいます……

 「俺はクビだそうです。奥様……アナベル様、一緒に行きませんか?」

 ルークは右手を差し出して来ました。
 逃げないと決めたはずだったのに、私はその手を掴んでいました。

 「ア……ナベル?」

 悲しそうな顔をするエルビン様。エルビン様には、私は必要ありません。
 まさか、こんな終わり方になるとは思ってもみませんでした。正直、ルークへの気持ちはまだよく分かりません。だけど、このままルークと会えなくなると思った瞬間、離れたくなかったのです。
 料理が食べられなくなることが、嫌だっただけかもしれませんが……

 「エルビン様、お元気で」

 私はルークと一緒に走り出しました。

 「ま、待て! アナベルを止めろ!!」

 使用人達は、主人であるエルビンの言葉に従わなかった。いつも優しく明るかったアナベルが、エルビンのせいでつらい思いをしている事が悲しかったからだ。アナベルには幸せになってもらいたいと、皆思っていた。

 「アナベル……」

 アナベルの部屋に1人残されたエルビンは、その場に崩れ落ちた。


しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。

gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

処理中です...