〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな

文字の大きさ
上 下
11 / 44

11、悪と悪

しおりを挟む


 「エルビン様は、お姉様が何をしたのかご存知なのですか?」

 エルビン様は、お姉様の共犯なのでしょうか? エルビン様が、犯罪を犯すとは思えませんが、それは私が知っているエルビン様ならという意味です。本当のエルビン様が、どんな人なのかは先程の言動で少し分かりました。

 「何をしたかは知らないが、君が持っている手紙には俺とイザベラの事が書かれているのだろう?」

 エルビン様とお姉様の事?
 中身を知らずに、手紙を奪おうとしていたのでしょうか。今の言い方からすると、お姉様がエルビン様を騙しているみたいですね。
 それなら、エルビン様に手紙を読ませた方がいいのでしょうか? でも、手紙を読んでもお姉様を信じると言い出したら、手紙をとられてしまうかもしれません。
 
 その時、背後に嫌な気配を感じ、振り返りました。

 「2人で何をしているの? 別れ話でもしているのかしら?」

 お姉様……
 
 「旦那様、奥様、申し訳ありません。
 お止めしたのですが、身内だからと……」

 バランは悪くありません。お姉様を止めることなんて、誰にも出来ません。

 「大丈夫よ、バランは下がっていて」

 バランは頭を下げてから、部屋のドアを閉めて出て行きました。

 「あら、随分偉そうね。そっか、アナベルはここの奥様だったわね。あまりにみすぼらしいから、使用人と間違えてしまうわ」

 この邸を、自分のもの扱いですか。ホーリー侯爵邸でも、同じような事をしたのでしょうか……

 「イザベラ、すまない。アナベルは実家に行っている予定だったんだが、戻って来てしまったんだ」

 妻の私にではなく、お姉様にいいわけするのですか。どこまで私をバカにすれば気がすむのでしょう……

 「戻ってしまってすみません。ここは私の部屋なので、2人とも出て行ってください」

 もう2人が何をしようと、私の気持ちは傷つきません。だから、私の前から消えてください。

 「あなたの部屋? 汚ったないわね。掃除くらいしなさいよ。で? 手紙は?」

 堂々と手紙の事を聞いてくるなんて、私なんて眼中にないということですか……

 「手紙? なんの事か分からないわ」

 「しらばっくれる気?」

 あの手紙は、絶対に渡しません。シルビア様は、自害なんかしていません! シルビア様の無念を晴らす為にも、守らなくてはなりません!

 「イザベラ、手紙なら俺が見つけて燃やした。だから、行こう」

 一応、庇ってくれるのですね。私のこと、好きというのは嘘ではないようです。
 
 「そう、良かった。アナベル、私達は寝室に行くわ。喉が乾いたから、お茶をお願いね」

 お姉様はエルビン様と一緒に、部屋から出て寝室に行きました。
 堂々と寝室に行くと言ったお姉様に従うエルビン様。お茶なんて必要ないくせに、お姉様はエルビン様との行為を私に見せたいようです。私は言われた通り、お茶を持っていく事にしました。
 
 「俺が持って行きます」

 お茶の準備をしていた私に、ルークは心配そうな顔で話しかけて来ました。

 「ルーク、ありがとう。でも、大丈夫。私が持っていかなかったら、お姉様は満足しない。嫌がらせが増えるだけだから」

 それに、お姉様の言う通りにして、手紙の事を忘れてもらわなくてはなりません。エルビン様が言ったことを、完全に信じているとは思えないからです。

 「どうしてそこまでするのですか? 昨日は、奥様がしたいようにしてくださいと申し上げましたが、こんなの間違っています!」

 最初は、失礼な人だと思っていたけど、ルークはとても優しい人なのですね。

 「心配してくれて、ありがとう。ルークが居てくれて、良かった。お茶を出したら、予定通り実家に行くわ」 

 お父様とお母様に、お姉様がシルビア様にした事を話すつもりです。お父様もお母様も、お姉様の事を信じているから、悪い噂を聞いても信じていませんでした。私は何度もお姉様に注意をして来たけど、あのお姉様が私の言う事を聞くはずもなく……
 まさか、人の命を奪う事までするとは思っていませんでした。私の時は見捨てただけですけど、今回は違います。
 お姉様が悪で、私が善だなんていうつもりはありません。私はお姉様にとっての悪になろうと思います。

しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。

gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...