5 / 44
5、大嫌いなお姉様
しおりを挟む「何しに来たの?」
姉妹だからとメイドが気を使って、中に入れてしまったようです。
「何しに来たのは、ないんじゃない? 私達は姉妹なんだから、妹に会いに来ても何の問題もないでしょ?」
嘘つき……この人は、私を妹だなんて思ってません。8歳の時、私はお姉様に殺されかけました。
殺すつもりはなかったのだろうけど、自分さえ助かればいいと、溺れていた私を置き去りにしました。
あの日、お姉様が足を滑らせて湖に落ちてしまいました。溺れていたお姉様を助けようと手を差し出し、その手を掴んだお姉様は、桟橋に捕まる事が出来たのですが、お姉様は私の手を引っ張り、湖に私も落下したのです。
必死にもがいてお姉様に助けを求めたけど、お姉様はそのまま桟橋をつたって陸に上がりました。そしてそのまま、私は置き去りにされたのです。
もがけばもがくほど息が苦しくなって、もうダメだと思った瞬間、私の手を掴んで引き上げてくれた人がいました。それが、エルビン様です。
「言い直します。何の用でここに来たの?」
お姉様が何の用もなく、ただここに来たとは思えません。何か魂胆があるはずです。
「冷たいわね。容姿だけじゃなく、性格までブサイクなんて、救いようがないわ」
お姉様のように容姿端麗で何でも出来ても、心がない人間にはなりたくありません。
いきなり現れて勝手に邸に入り、勝手にソファーで寛ぐ姿は、とても褒められたものではありません。エルビン様が帰宅する前に、追い出さなくてはなりません。
「お姉様、用がないなら帰ってください」
出来ることなら、二度とお姉様には会いたくありません。エルビン様との幸せがつまっているこの邸に、足を踏み入れて欲しくないのです!
「あら、用ならあるわ。エルビン様に呼ばれたのよ」
な……にを言っているのですか!?
エルビン様が、お姉様を呼ぶはずありません!
私がお姉様を嫌っている事も知っているし、そもそもお姉様なんかにどんな用があるというのですか!?
「嘘をつかないで! エルビン様は、お仕事に行ってるわ! お姉様を呼ぶはずない!」
「俺が呼んだんだ」
お姉様を追い返す事に気を取られていて、エルビン様が帰っていらした事に気づきませんでした。
エルビン様はゆっくりと、ソファーに座るお姉様に近づいて行きました。
「エルビン様、あの……」
「アナベル、すまないがお茶を頼む。
良く来てくれました。書斎に行きましょう」
私の顔を見ることなく、お茶を頼んで来ました。そしてそのまま、お姉様と一緒に書斎に入って行きました。
結婚して初めて、お帰りなさいのキスが出来ませんでした。それに、エルビン様は私と目を合わせてくれませんでした。
「お茶をお持ちしました。」
メイドではなく、自分でお茶を運んで来ました。理由はもちろん、どんな話をしているのか気になるからです。
「入りなさい」
中から返事が聞こえ、ゆっくりドアを開けて中に入ります。ソファーに足を組んで座るお姉様が目に入りました。
私は、あまり書斎に入った事がありません。お仕事の邪魔になるからという理由はありますが、エルビン様が書斎にいる時は、なるべく入らないようにと言われていたからです。
その書斎に、お姉様がいる……
「どうぞ」
お茶の入ったカップをゆっくりとテーブルに置きました。その間、2人は黙ったままです。
話を聞くことは、出来そうにありません。
お茶を出し終えると、
「下がりなさい」
と、すぐに言われてしまいました。
仕方がないので、書斎から出ました。
お姉様に、どんな話があるのでしょうか……胸がザワつく……
幸せだった日々が、この日を境に崩れ去って行きました。
110
お気に入りに追加
5,039
あなたにおすすめの小説
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。

あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる