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エマの秘密

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 「ロディア嬢、これから少し出掛けませんか?」
 
 あの日は、その申し出が嬉しくて...一緒に花畑へ行った。
 そこで結婚をして欲しいと言われ、少し時間が欲しいと答えた。
 それから毎日、旦那様は会いに来てくれて、私の心を奪って行った。
 私はあなたに恋をしました。

 だけど...あの想いはもう二度と生まれません。

 「申し訳ございません。お帰りください。」

 冷たく言い放つロディア。

 「ロディア嬢!私はあなたに結婚を申し込みに参りました!このまま帰ることなど出来ません!」
   
 私ではなく、ジュリアの元に行けばいいのに...。
 そんなにリーベルトの財産が欲しいのですか?
 はあ...。こんな風に考えてしまう自分が嫌です。
 こんな私にしたのは、旦那様なのですよ?

 「お断り致します。サミュエル様と結婚するつもりはありません!」

 二度と!!

 いつもと違うロディアの様子に、エマは動揺していた。
 いつも優しかったロディアのこんな姿を、見るのは初めてだった。

 肩を落とすサミュエルを置いて、応接間を後にするロディア。 
 エマはロディアを追って庭へと出た。

 「お嬢様!どうされたのですか?お嬢様らしくありません...何かあったのですか?」

 エマには何でもお見通しなんだね。
 話しても大丈夫なのかな.........ダメだ。
 せめてエマが生き延びるまでは、話すことはできない。

 「何もないよ。そういえば、帰って来るの早かったんだね。」

 この日、エマは用事で出掛けていた。
 帰るのは夜になるはずだったのに、すぐに帰ってきた。
 用事がなんだったのか、結局話してくれなかったのを覚えてる。
 あの時結婚を申し込まれ、自分の事でいっぱいいっぱいで...エマの異変に気づけなかった。
 
 「ロディア嬢!」

 そこへサミュエルが追ってきた。

 「お帰りになったのではなかったのですか?」 

 今はサミュエルの事など、どうでもよかった。

 エマの話を聞きたかったのに!

 「あなたを諦めるつもりはありません!私はあなたが好きです!」

 その時、エマの顔が曇ったような気がした。

 ...エマ?まさか...!?
 とにかく、旦那様には...サミュエル様には帰ってもらわなくちゃ! 

 「今日はお帰りください。また後日、お話しましょう。」

 サミュエル様には、聞かたいことがある。
 今はエマの話を聞かなくちゃ...。

 「わかりました。また明日、会いに来ます!」

 そう言い、サミュエルは帰って行った。
 ロディアはエマに近づき、

 「エマはサミュエル様が好きなの?」

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