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裏切り
しおりを挟む私は愛されているのだと思っていた...。
この光景を見るまでは...。
「ん...。サミュエル様いけません。奥様に見つかってしまいます。でも...もっと...んっ。」
女は男の膝の上に乗り、甘い声を出していた。
その男は私の夫、サミュエル・ゼバス伯爵だ。
夫サミュエルに初めて会ったのは、5年前の事。
15歳になったばかりの伯爵令嬢の私に、彼から結婚の申し出があった。
サミュエルはとても優しく、毎日愛を囁いてくれた。
次第に彼に惹かれていった私は、彼の申し出を受け入れ結婚した。
「ロディア、君を一生愛する。」
その言葉が、愛を知らなかった私の心に愛をくれた。
両親は反対していた。
領地を治め、莫大な財産を持つ辺境伯のリーベルト伯爵家と、ほとんど財産のない宮中伯のゼバス伯爵家の結婚...周りにも財産目当てだと散々言われた。
でも私は、彼の愛を信じた。
...それが間違いだったと、今思い知らされている。
こんな光景を目にして、見たくないのにその場から動くことができない。
信じたくない...だけど、目の前の光景は現実。
そして、最も聞きたくなかった言葉を夫は口にする。
「妻など愛してはいない。おまえのような可愛い女が好きだ。あいつはただの金を生み出す人形だ。」
.....................この人は、本当に旦那様なの?
あの言葉も、あの眼差しも、あの優しさも...全てが偽物だったというの?
ロディアは後退りした。
ガタンッ!
後退りした時、廊下に置いてある置物にぶつかってしまった!
「誰だ!?」
どうしよう...早く逃げなくちゃ...
だが、足が思うように動かない。
ゆっくりこちらに歩いてくるサミュエル...
もうダメ...!!
その時隣の部屋の扉が開き、
ガシッ!
腕を掴まれ、隣の部屋へと連れ込まれた!
キィ...
「気のせいか...。」
サミュエルは誰もいないのを確認し、また女の元へ戻って行った。
「...奥様、何をなさっているんですか!あの場で見つかったら、奥様は耐えられるのですか?」
顔を上げると、そこに居たのは使用人のシェイドだった。
確かにシェイドの言う通りだった...。
あの場を見た私に、きっと夫は言い訳をする。
あんな光景を見たにもかかわらず、現実を耐えられない私は彼の言葉を信じてしまうだろう。
それほど彼を信じ、愛してしまっていた。
「シェイド...私はどうしたらいいのでしょう...?」
シェイドは私の腕を掴んでいた手をそっと離し、
「奥様はどうしたいのですか?」
私は...分からない...。
裏切られてもまだ、夫を愛してる自分に腹が立つ。
だけど、夫の気持ちは最初から作り物だった。
「私と一緒に逃げますか?」
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