17 / 25
衝撃です。
しおりを挟む
「ほへ……」
「はい、キミの行き先は人間道。
ギリだよ? キミ、けっこうエグいことしちゃってたから」
閻魔さまは、腰を抜かすタナカに行き先を告げた。
「は、ははーっ!」
一拍遅れて理解したらしいタナカは、涙を流しながら床に額をこすりつける。
「もう一度、徳を積み直しておいで」
閻魔さまは帳面にスタンプを押すと、タナカに手渡した。
「まだ細かな手続きがあるから、四十九日までは待ってね」
閻魔さまの美しいお顔が霧に煙る。
ああ、素敵だったぁ。
霧が晴れたら、そこは草原だった。
青空のもと、誰かがレジャーシートを広げて座ってる。
ゆるやかな風に猫っ毛を揺らしながらこちらに手を振るのは、童顔のワンコ系男子だ。
かわいい。
【死後42日目を担当する変生王。
亡者の言い訳を聞いてくれる唯一の王として知られています】
へえ。
確かに優しそうだもんね。
狭いレジャーシートに並んで座る変生王さまとタナカ。
微妙な光景だけど、一生懸命に話を聞く変生王さまが素敵。
「それは大変でしたね。
あなたの事情もよく分かりますよ」
目に涙を溜めるタナカの禿頭をぽんぽんしてあげる変生王さま。
頬を染めるタナカ。
やめて。
「あなたにだけ特別に教えてあげましょう。
向こうに、3つの道が見えるでしょう?」
変生王さまが示す先には、のどかな風景の中に確かに三股に分かれる道が見えた。
「あの道は、どこから行っても極楽浄土に繋がります。
行くなら今のうちですよ」
そんな逃げ道あんの!?
“極楽浄土”という言葉に惹かれたのか、タナカが立ち上がる。
「本当に、ええんでしょうか!?」
にっこりと頷く変生王さま。
「恩にきます!」
タナカが走り出すと。
突然雷鳴がとどろき、のどかな風景が一変した。
辺りは暗く、草原はただの砂地に。
3つの道も見えない。
「バカが見~る~」
今の……誰?
タナカが振り返ると、そこにはマイルドな笑顔のワンコ系男子はいなかった。
目を邪悪に光らせ、人を小馬鹿にするように口角を吊り上げた……これが、変生王さまの本性──。
「アンタさぁ、ボクの前にも裁きを受けてきたんだろ?
なのに何も分かってないみたいだね」
鼻から息を吐く変生王さま。
かわいく整った顔立ちはそのままなのに、当初の優しさは皆無だ。
「ホントに反省してるなら、こういうのは慎むべきでしょ」
上げて落とすタイプ!
「じゃ、書いとくね。
引っかかりましたよ、と」
帳面にペンを走らせる変生王さま。
周囲は再び霧が立ち込める。
ああ、怖かった。
秦広王さまよりも怖いわ……。
霧が薄らいでくると、また何か見えてきた。
室内みたい。
ここ……病院の、診察室?
「はい、キミの行き先は人間道。
ギリだよ? キミ、けっこうエグいことしちゃってたから」
閻魔さまは、腰を抜かすタナカに行き先を告げた。
「は、ははーっ!」
一拍遅れて理解したらしいタナカは、涙を流しながら床に額をこすりつける。
「もう一度、徳を積み直しておいで」
閻魔さまは帳面にスタンプを押すと、タナカに手渡した。
「まだ細かな手続きがあるから、四十九日までは待ってね」
閻魔さまの美しいお顔が霧に煙る。
ああ、素敵だったぁ。
霧が晴れたら、そこは草原だった。
青空のもと、誰かがレジャーシートを広げて座ってる。
ゆるやかな風に猫っ毛を揺らしながらこちらに手を振るのは、童顔のワンコ系男子だ。
かわいい。
【死後42日目を担当する変生王。
亡者の言い訳を聞いてくれる唯一の王として知られています】
へえ。
確かに優しそうだもんね。
狭いレジャーシートに並んで座る変生王さまとタナカ。
微妙な光景だけど、一生懸命に話を聞く変生王さまが素敵。
「それは大変でしたね。
あなたの事情もよく分かりますよ」
目に涙を溜めるタナカの禿頭をぽんぽんしてあげる変生王さま。
頬を染めるタナカ。
やめて。
「あなたにだけ特別に教えてあげましょう。
向こうに、3つの道が見えるでしょう?」
変生王さまが示す先には、のどかな風景の中に確かに三股に分かれる道が見えた。
「あの道は、どこから行っても極楽浄土に繋がります。
行くなら今のうちですよ」
そんな逃げ道あんの!?
“極楽浄土”という言葉に惹かれたのか、タナカが立ち上がる。
「本当に、ええんでしょうか!?」
にっこりと頷く変生王さま。
「恩にきます!」
タナカが走り出すと。
突然雷鳴がとどろき、のどかな風景が一変した。
辺りは暗く、草原はただの砂地に。
3つの道も見えない。
「バカが見~る~」
今の……誰?
タナカが振り返ると、そこにはマイルドな笑顔のワンコ系男子はいなかった。
目を邪悪に光らせ、人を小馬鹿にするように口角を吊り上げた……これが、変生王さまの本性──。
「アンタさぁ、ボクの前にも裁きを受けてきたんだろ?
なのに何も分かってないみたいだね」
鼻から息を吐く変生王さま。
かわいく整った顔立ちはそのままなのに、当初の優しさは皆無だ。
「ホントに反省してるなら、こういうのは慎むべきでしょ」
上げて落とすタイプ!
「じゃ、書いとくね。
引っかかりましたよ、と」
帳面にペンを走らせる変生王さま。
周囲は再び霧が立ち込める。
ああ、怖かった。
秦広王さまよりも怖いわ……。
霧が薄らいでくると、また何か見えてきた。
室内みたい。
ここ……病院の、診察室?
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる