【完結】冥界のイケメンたちとお仕事することにすることになりました。

キツナ月。

文字の大きさ
上 下
8 / 25

お呼び出しです。

しおりを挟む
 「はいはーい。見つめ合ってるとこ失礼しまーす」

 
 近くから閻魔さまの声がする。
 ど、どこ……!?


 「やあ、紗那さなちゃん」


 たかむらの黒光りする机に波紋が広がったかと思えば、閻魔さまがにょきっと顔を出した。


 「きゃあぁっ!」


 「ふふふ。驚いた?」


 閻魔さまは全身を外に出すと、そのまま足を組んで篁の机に腰掛けた。
 ちょうど、私と篁の間に入る形だ。


 閻魔さまは、どこからでも現れる。


 懐から手鏡を取り出し、乱れたヘアスタイルを直してる。
 真っ黒で四角くて、ゴツゴツとした装飾が施された鏡だ。


 「良いムードのとこ悪いね」


 「いいえ、まったく問題ありません」


 すまなそうに謝る閻魔さまに、笑顔で答える。


 良いムードなものか。
 阿呆あほうと言われていたところです。


 過剰労働に暴言。
 時代錯誤も甚だしいパワハラだ!


 「またお前か」


 さらに機嫌が悪くなる篁。


 「あれぇ、紗那ちゃん。ビジネススーツなの?
 服装は自由って言ったのにィ」


 閻魔さまが不服そうに眉を寄せる。


 「水着でもいいし、何ならこないだのパジャマでも良いんだよ」


 「セクハラですよ、閻魔さま」


 閻魔さまなら許しますけどね。


 服装自由はありがたいけど、ビジネススーツの方が何かと都合がいい。
 私は実家暮らしなので、へ出勤する風を装って玄関から出なければいけないのだ。


 人目につかない路地裏に入って、周囲に充分気を配った上で鞄に手を入れる。
 誰かに見られたりしたら大変だ。


 「して、要件は」


 篁が閻魔さまの肩越しにぬっと顔を出した。


 「もー。せっかちだなぁ、篁は」


 閻魔さまは呆れたように篁を一瞥すると、すぐに鏡に視線を戻す。
 角度を変えながら自分のイケメンぶりを確認すると、満足そうに頷いた。


 「紗那ちゃんも、そろそろ冥界の詳細を知っておいた方がいいと思ってね。
 ちょっと時間とれるかな?」


 わ。
 新人研修ですか。


 「行きます行きまーす!」


 右手をビシッと上げる私。


 「いいねぇ、意欲的で。
 そういうワケだから篁、ちょっと紗那ちゃん借りるよ」


 「フン」


 篁は不満そうに机に足を投げ出した。
 私がいないと自分が動かなければいけないため、面倒なのだろう。


 「研修なら仕方ないですよね、篁さま~。
 あとお願いしまーす」


 ホントは帰るつもりだったけど、私の感覚だと俗世はまだお昼過ぎ。
 時間的には余裕だ。



 しかも、超絶イケメン閻魔と研修だよ!



 「どうぞ、紗那ちゃん」


 少し曲げた腕をこちらに差し出して微笑む閻魔さま。
 私は、ドキドキしながらそこに自分の手を添える。




 冥界万歳!!




 研修終わったら黙って帰っちゃおーっと。



 
 


 


 


 


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...