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就職できたみたいです。
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篁に憎まれ口を叩かれても、閻魔さまはカラカラと笑っている。
「なんかこの人、部下の割に態度悪いですよね」
だって、篁は閻魔さまに仕える立場だったワケでしょ?
「分かる? こいつ酷いんだよ!
生きてる時からこんな感じ!」
閻魔さまが同情を求めるように前のめりになる。
調べたところによれば篁って、お上に対しても怯まなかったらしいもんね。
俗世も冥界も関係なく、己を通してきたのだろう。
「軽薄な奴め。
さっさと要件を済ませ」
篁が横目で閻魔さまを睨む。
「はいはい。もー怖いな、篁ちゃんは」
閻魔さまが肩をすくめ、私に向き直る。
「というワケで、緑川紗那ちゃん。
キミを、小野篁の後継者に指名しま~す」
え……。
今、チャラい態度で凄いこと言わなかった?
「えええぇっ!?」
「あれ? 篁から聞いてない?」
閻魔さまが不思議そうな顔をする。
篁からって……。
あ。
病室の枕元で、仕事をやるとかなんとか。
「説明不足っ!」
あんな言い方で分かるか!
「あ~、なんか篁っぽいよね~」
閻魔さまが呑気に笑い、篁はうるさそうにそっぽを向く。
「まあ、後継者と言っても当分は2人で仕事してもらうから」
閻魔さまは、ここでスッと真顔になった。
やっぱりこの世のものとは思えないイケメン度。
「時代の移り変わりと共に亡者の方々も変わってきてる。
裁く側の力量が問われるんだよ」
経営者みたいなこと言ってる。
「冥界もアップデートが必要なんだ」
閻魔がスーツ姿ってことは、これまでもアップデートを繰り返したんだろうな。
足を組み、瞳を野心でギラつかせるセクシー閻魔。
「紗那ちゃん。
現代を生きながら冥界に来られるキミは、我々にとって貴重な人材なんだよ」
ドキッとしたのはイケメンに熱っぽい目で見つめられたから、だけじゃない。
【緑川様の今後のご活躍を──】
通算100通の“お祈りメール”が頭をよぎる。
冥界なんて、ホントは怖い。でも。
型に嵌めた言葉じゃなく、閻魔さまは心から私の能力を買ってくれているように思えた。
「それとも、もう就職決まっちゃったかな?」
閻魔さまがしょんぼりと肩を落とす。
篁が鼻で笑った。
「フ。聞くまでもない。
どう見ても暇であろう」
「忙しいわ!」と返せないのが辛いところだ。
「あの……お給料ってもらえるんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「その点なら心配ないよ」
閻魔さまがパアッと笑顔になった。
「俺を祀ってる寺社はけっこう多いんだ。
その中に“第一閻魔神社”(※)ってとこがあってね」
その第一閻魔神社の神主の家系は代々特殊な力を持っており、閻魔さまと交信することが可能だという。
「給料はそこから出そう。
初めはそんなにたくさん払えないけど」
そ、そんな神社があるんだ。
人件費を捻出してもらうなんて申し訳ない。
金銭面の問題をあっさりクリアしてしまった──。
「決まりだね」
私の様子を見ていた閻魔さまが手を差し出す。
躊躇いつつ膝から手を浮かせると、グッと引き寄せられる。
超絶イケメン閻魔と握手してしまった。
大きくてあたたかい、閻魔さまの手。
「フン。せいぜい励むことだな」
ふんぞり返ったままの篁。
直属の上司には難ありか。
でも、とりあえず。
就職が決まった。
(※)架空の神社です。
「なんかこの人、部下の割に態度悪いですよね」
だって、篁は閻魔さまに仕える立場だったワケでしょ?
「分かる? こいつ酷いんだよ!
生きてる時からこんな感じ!」
閻魔さまが同情を求めるように前のめりになる。
調べたところによれば篁って、お上に対しても怯まなかったらしいもんね。
俗世も冥界も関係なく、己を通してきたのだろう。
「軽薄な奴め。
さっさと要件を済ませ」
篁が横目で閻魔さまを睨む。
「はいはい。もー怖いな、篁ちゃんは」
閻魔さまが肩をすくめ、私に向き直る。
「というワケで、緑川紗那ちゃん。
キミを、小野篁の後継者に指名しま~す」
え……。
今、チャラい態度で凄いこと言わなかった?
「えええぇっ!?」
「あれ? 篁から聞いてない?」
閻魔さまが不思議そうな顔をする。
篁からって……。
あ。
病室の枕元で、仕事をやるとかなんとか。
「説明不足っ!」
あんな言い方で分かるか!
「あ~、なんか篁っぽいよね~」
閻魔さまが呑気に笑い、篁はうるさそうにそっぽを向く。
「まあ、後継者と言っても当分は2人で仕事してもらうから」
閻魔さまは、ここでスッと真顔になった。
やっぱりこの世のものとは思えないイケメン度。
「時代の移り変わりと共に亡者の方々も変わってきてる。
裁く側の力量が問われるんだよ」
経営者みたいなこと言ってる。
「冥界もアップデートが必要なんだ」
閻魔がスーツ姿ってことは、これまでもアップデートを繰り返したんだろうな。
足を組み、瞳を野心でギラつかせるセクシー閻魔。
「紗那ちゃん。
現代を生きながら冥界に来られるキミは、我々にとって貴重な人材なんだよ」
ドキッとしたのはイケメンに熱っぽい目で見つめられたから、だけじゃない。
【緑川様の今後のご活躍を──】
通算100通の“お祈りメール”が頭をよぎる。
冥界なんて、ホントは怖い。でも。
型に嵌めた言葉じゃなく、閻魔さまは心から私の能力を買ってくれているように思えた。
「それとも、もう就職決まっちゃったかな?」
閻魔さまがしょんぼりと肩を落とす。
篁が鼻で笑った。
「フ。聞くまでもない。
どう見ても暇であろう」
「忙しいわ!」と返せないのが辛いところだ。
「あの……お給料ってもらえるんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「その点なら心配ないよ」
閻魔さまがパアッと笑顔になった。
「俺を祀ってる寺社はけっこう多いんだ。
その中に“第一閻魔神社”(※)ってとこがあってね」
その第一閻魔神社の神主の家系は代々特殊な力を持っており、閻魔さまと交信することが可能だという。
「給料はそこから出そう。
初めはそんなにたくさん払えないけど」
そ、そんな神社があるんだ。
人件費を捻出してもらうなんて申し訳ない。
金銭面の問題をあっさりクリアしてしまった──。
「決まりだね」
私の様子を見ていた閻魔さまが手を差し出す。
躊躇いつつ膝から手を浮かせると、グッと引き寄せられる。
超絶イケメン閻魔と握手してしまった。
大きくてあたたかい、閻魔さまの手。
「フン。せいぜい励むことだな」
ふんぞり返ったままの篁。
直属の上司には難ありか。
でも、とりあえず。
就職が決まった。
(※)架空の神社です。
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