上 下
49 / 130
第二章 十月の修羅場

女子会5

しおりを挟む
 「んぶっ(ズルい)!」

 「あれ。どした、ルナちゃん。
 もうお腹減ったの?」

 「いい気味だわ、あのババア」

 三人とも、それぞれ好き勝手言っちゃって。
 私は頭の中がグチャグチャだ。

 ベビー。
 ユイカさんにはできて、私にはできなかった。

 今、どうなってるんだろう。
 ベビー・アレルギー。
 ルナと生活してけっこう経つけど。


 「まぁ冗談は置いといて」

 私の心中を察したらしき麻由子が話を切り上げる。

 「子供の話は大袈裟だけど、私も佐山さんは良いと思う。
 絵美、今の方が楽しそうだもん」

 以前の私は表情にどことなく険があり、不健康な印象だったと麻由子は言った。
 確かに、あの頃はずっと胃がキリキリしていたと思う。

 そっか、私。嫌いじゃないんだ。
 今の、こういう状態。
 
 ふいと顔を上げれば、三人が見守るように私に向かって微笑んでいる。

 「男はもう懲り懲りよ」

 そういう気持ちがまだまだ残っていることも確かだ。
 照れ隠しでテレビをつける。

 
 
 【この地方のニュースをお伝えします。
 九月二十七日から行方不明になっている女の赤ちゃんについて、続報です。
 本日、赤ちゃんの顔写真が公開されました】



 「まだ見つかってなかったんだ?」

 指に髪を巻き付けながら、冴子さんがテレビの方へ顔を向けた。

 結婚の話題が逸れてホッとしたものの。
 このニュース、思い出した。
 事件直後にも報道されていた。

  【行方不明になっているのは岩崎梨奈ちゃん、行方不明当時生後三ヶ月です。
 梨奈ちゃんは九月二十七日、母親に連れられて訪れた『ララマート◯◯町店』内の衣料品店から、何者かによって連れ去られたとみられています】

 九月二十七日。
 私とルナも、そこへ行っている。
 犯人と居合わせた可能性がある。

 ユイカさんや昌也に気を取られ、心痛む事件から意識が離れていた。

 ここでテレビ画面が切り替わり、行方不明の赤ちゃんの顔が大映しになる。

  「ふえぇん」

 ルナが身体をよじって愚図り出した。
 本格的に腹が減ってきたとみえる。

 しかし、私たちは誰一人として身動きができなかった。
 冴子さんが声を絞り出す。
 
 「嘘……」

 【警察による懸命の捜査が続いていますが、現在のところ手がかりはなく】

 今は駅前でビラを配る人々が映し出され、まだ若そうな顔の父親が涙ながらに協力を訴えている。
 再び梨奈ちゃんの写真に切り替わると、私たちは異常なくらいそこに釘付けになった。

  「うえぇんっ!」

 ぷっくりと血色の良い頬。
 黒目がちの大きな目が、無邪気にこちらを見つめている。

 「ルナ……」



 岩崎梨奈ちゃんは、ルナにそっくりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の好きな幼馴染みは別な人が好きなようです。だが俺のことも好きかもしれない

希望
ライト文芸
俺は忘れ物を取りに学校に戻ると幼い頃から親しかった幼馴染みが教室内に友達と話していた。 何を話しているか気になった俺は聞き耳をたてて会話を聞いた。 「ねえ、可憐好きな人いるの?」 お、好きな人の話しか。可憐の好きな人は気になるなあー。 だってたった一人の幼馴染みだし 「何でそう思うの?」 「いやだって可憐告白断ってばかりだから好きな人がいるのかなーって思って」 可憐は回りを誰かいないかキョロキョロしだしたので俺は屈んでばれないようにして、耳をすまて会話を聞いた。 「いるよ、好きな人はねN君なんだ」 Nってもしかして俺のことじゃないか。 俺望で頭文字Nだし。 なぜだかわからないが俺は不思議なこうとう感に包まれて叫びだしそうになったので俺は急いでその場をあとにして下駄箱に向かった。 はぁ~可憐の好きな人がまさか俺だなんて気付かなかったな。 だって最近はよく額田と、よくしゃべっていたし。 なんだか額田と話している可憐を見ていると心がモヤモヤしてた。 だけどこのときの俺は予想だにしなかった。まさか可憐の好きな人が額田でくっつくことに協力することになるなんてー 累計ポイント13万pt突破

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

お花屋さんとお巡りさん - 希望が丘駅前商店街 -

鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】 少し時を遡ること十数年。商店街の駅前にある花屋のお嬢さん芽衣さんと、とある理由で駅前派出所にやってきたちょっと目つきの悪いお巡りさん真田さんのお話です。 【本編完結】【小話】 こちらのお話に登場する人達のお名前がチラリと出てきます。 ・白い黒猫さん作『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271 こちらのお話とはコラボエピソードがあります。 ・篠宮楓さん作『希望が丘商店街 正則くんと楓さんのすれ違い思考な日常』 https://ncode.syosetu.com/n3046de/ ※小説家になろうでも公開中※

【書籍化進行中】魔法のトランクと異世界暮らし

猫野美羽
ファンタジー
※書籍化進行中です。  曾祖母の遺産を相続した海堂凛々(かいどうりり)は原因不明の虚弱体質に苦しめられていることもあり、しばらくは遺産として譲り受けた別荘で療養することに。  おとぎ話に出てくる魔女の家のような可愛らしい洋館で、凛々は曾祖母からの秘密の遺産を受け取った。  それは異世界への扉の鍵と魔法のトランク。  異世界の住人だった曾祖母の血を濃く引いた彼女だけが、魔法の道具の相続人だった。  異世界、たまに日本暮らしの楽しい二拠点生活が始まる── ◆◆◆  ほのぼのスローライフなお話です。  のんびりと生活拠点を整えたり、美味しいご飯を食べたり、お金を稼いでみたり、異世界旅を楽しむ物語。 ※カクヨムでも掲載予定です。

【1/15公開終了予定】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?

miniko
恋愛
「孤児の癖に筆頭聖女を名乗るとは、何様のつもりだ? お前のような女は、王太子であるこの僕の婚約者として相応しくないっっ!」 私を罵った婚約者は、その腕に美しい女性を抱き寄せていた。 別に自分から筆頭聖女を名乗った事など無いのだけれど……。 夜会の最中に婚約破棄を宣言されてしまった私は、王命によって『好色侯爵』と呼ばれる男の元へ嫁ぐ事になってしまう。 しかし、夫となるはずの侯爵は、私に視線を向ける事さえせずに、こう宣った。 「王命だから仕方なく結婚するが、お前を愛する事は無い」 「気が合いますね。私も王命だから仕方無くここに来ました」 「……は?」 愛して欲しいなんて思っていなかった私は、これ幸いと自由な生活を謳歌する。 懐いてくれた可愛い義理の息子や使用人達と、毎日楽しく過ごしていると……おや? 『お前を愛する事は無い』と宣った旦那様が、仲間になりたそうにこちらを見ている!? 一方、私を捨てた元婚約者には、婚約破棄を後悔するような出来事が次々と襲い掛かっていた。 ※完結しましたが、今後も番外編を不定期で更新予定です。 ※ご都合主義な部分は、笑って許して頂けると有難いです。 ※予告無く他者視点が入ります。主人公視点は一人称、他視点は三人称で書いています。読みにくかったら申し訳ありません。 ※感想欄はネタバレ配慮をしていませんのでご注意下さい。 ※コミカライズ、書籍化に伴い、1/15迄で公開を終了させて頂く予定です。

こころ 〜希望と絶望の摩擦〜

鈴本 貴宏
ライト文芸
精神病と診断された少年。 心臓病の姉を慕う少女。 直ぐにでも壊れてしまいそうな二人を、 写真クラブの面々などの色々な人々が暖かく見守る悲しくも優しい物語。 筆者の実体験からくるリアルな病気事情などを、自分、家族、恋人、友人が傷ついている人に読んで欲しい!!! 話数を重ねるごとに面白くなっていく! はず...ですので是非完結まで読んでください。 *第2回ほっこり・じんわり大賞へのご投票ありがとうございました。 *イラストはmasahachiさんに描いて頂きました、本作ヒロインの内野花火です。

僕の彼女は忘れっぽい

めぐめぐ
ライト文芸
僕の彼女は忘れっぽい。 毎朝、慌てて準備をして家を出ては、忘れ物をしたと言って帰って来る。 いつもの事だけど、今日は特に酷かった……。 そんな彼女と僕の朝の一コマ。 ※表紙イラストは「ミカスケのお絵描き」様よりお借りしました♪  http://misoko.net/archives/post-2930.html

推しの継母になるためならば、喜んで偽装結婚いたします!

藍上イオタ
恋愛
【2巻発売中!】 「ブリギッド・グリンブルスティ! あなたはクビよ!!」   ブリギッドの雇い主の妻カット夫人が金切り声をあげ、彼女に手紙と小箱を突き出した。  ブリギッドは、不倫のえん罪で家庭教師をクビになったのだ。 (セクハラの証拠もあるし、違約金をもらって、推しに課金しよう!)  ブリギッドはウキウキとその場をあとにした。  じつは、ブリギッドは転生者だ。  前世、30代で過労死してしまった小学校教員だったブリギッドは、生前読んでいたweb小説の没落令嬢(モブ)に転生していた。  しかし、彼女の推しは孤児院出身の悪役。  愛を知らないまま大人になってしまうと、悪役として主人公に殺されてしまうのだ。 「推しの命は私が守る! 悪役になんかさせない!」  推しを養子にしようと奮闘するが、未婚では養母になれないとわかり、推しの住環境を守るため、課金とオタクグッズで孤児院を盛り上げていたのだ。  不倫えん罪で、家庭教師をクビになってしまったブリギッドのもとに、「恋をしない鉄壁侯爵」から推しの養父母になるために偽装結婚しないかという提案が。  断る理由なんかない! 喜び勇んで偽装結婚するブリギッド。  すると、推しから懐かれ、さらには「妻としては愛せない」と言っていた、鉄壁侯爵から溺愛されることに……。  オタクと教員の知識を使って奮闘する、育児&ファンタジーです。 題名変更しました(旧:転生没落令嬢が推しの継母になりました) 皆様のお力添えのおかげで、続刊が決定いたしました! 応援ありがとうございます! 誤字誤用のご指摘ありがとうございます! とても助かっております。 時間があるときに直したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...