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第一章 九月の嵐
パニック3
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うわわわ、生きてる。
なんか目で追ってる。
こっち見てる。大きな目だ。
ものすごく、注目されている……!
「そそそそそんなに見ても何も出ないから!」
両手を上げたまま叫ぶ。
ブルルと震えが来た。喉は渇き切り、顔面から汗が噴き出す。
「いっ」
赤ちゃんは、不快そうな声を上げると顔面を歪めた。
「ふっ、ふえぇん!」
「えぇっ!?」
想定外の事態が発生した。
赤ちゃんが泣いている!
「どしたら良いのよぉ」
「おぎゃああぁぁっ!」
泣き声がワントーン高くなった。
私は、一定の距離をとって見ているしかない。
踏みそうで怖いからだ!
「そ、そうだ! 警察!」
慌ててスマホを探し当てる。
春頃近所で変質者騒ぎがあり、一応この地域の交番の番号を調べておいた。
そこへかけてみよう。
耳にコール音が届くとホッと気が緩んだ。
もっと早く、こうすれば良かった。しかし。
「ぶえぇん、ぶええぇん!」
赤ちゃんは、声を枯らして泣いている。
獣みたいだ。
これでは落ち着いて電話もできない。
「も、もうちょっと静かに泣いてくれないかな」
「ぴぎゃああああぁぁっ!!」
「ひぃーっ! 嘘です嘘です!
ごめんなさーい!!」
長いコール音の後、ようやく誰かが出てくれた。
『はい。◯◯交番です』
中年の男性らしき声だ。しかし。
「おぎゃあぁ!」
「あわわわ……」
やっと電話が繋がったというのに、私は恐怖で口が回らない。
警官が呼びかけてくる。
『もしもーし? ちょっと声が遠いようなんですがねぇ』
待ってくれ。
今頼れるのは、あなたしかいない。
藁にも縋る思いで叫んだ。
「たたた、助けてください!
赤ちゃんが……赤ちゃんが泣いてるんです!!」
「びえええぇぇぇっ!」
『はぁ?』
早く助けて!
すぐに行くと言ってくれ!
『あのですねぇ!』
祈るような叫びも虚しく、スマホの送話口からは尖った声が返ってきた。
『赤ちゃんが泣いたくらいで警察に頼ってくるんじゃないよ!!』
誤解だ──!!
赤ちゃんの世話に困り果てた母親が、非常識にも警察に助けを求めたと思われてしまった。
「ちちち違うんです! 私は」
『あのねぇ。
警察は、育児相談なんてのは受け付けてないんで』
「おぎゃあぁーっ!」
「ひぃっ!
だから違うんです、聞いて……」
『我々も暇じゃないんでね。切りますよ』
「ちょっと……待って!」
「ぶぇぇんッ!」
警官は、駄目押しのようにもう一度「切りますよ」と言い、通話は完全に途切れた。
「そんな……」
「うえええぇぇん」
警察に見捨てられた。
「市民の味方が聞いて呆れるわ!!」
「ぶええぇぇんっ!」
「ぎゃーっ!
あなたに言ったんじゃないってば!」
赤ちゃんは、全身をばたつかせて泣いている。
こんなことは初めてだ。
赤ちゃんの傍に、こんなに長時間──。
「ぉぎゃあぁ!」
これ、どうやって収めたらいいのかな。
警察にも見捨てられた今、私はどうしたら。
相変わらず赤ちゃんと距離をとりつつ、突っ伏して頭を抱える。
「ふえぇーん」
ああ。頭が痛い。
「おぎゃあぁぁー……って、もぉーっ!
何で泣いてるのに抱っこしてくれないのーっ!?」
え?
なんか目で追ってる。
こっち見てる。大きな目だ。
ものすごく、注目されている……!
「そそそそそんなに見ても何も出ないから!」
両手を上げたまま叫ぶ。
ブルルと震えが来た。喉は渇き切り、顔面から汗が噴き出す。
「いっ」
赤ちゃんは、不快そうな声を上げると顔面を歪めた。
「ふっ、ふえぇん!」
「えぇっ!?」
想定外の事態が発生した。
赤ちゃんが泣いている!
「どしたら良いのよぉ」
「おぎゃああぁぁっ!」
泣き声がワントーン高くなった。
私は、一定の距離をとって見ているしかない。
踏みそうで怖いからだ!
「そ、そうだ! 警察!」
慌ててスマホを探し当てる。
春頃近所で変質者騒ぎがあり、一応この地域の交番の番号を調べておいた。
そこへかけてみよう。
耳にコール音が届くとホッと気が緩んだ。
もっと早く、こうすれば良かった。しかし。
「ぶえぇん、ぶええぇん!」
赤ちゃんは、声を枯らして泣いている。
獣みたいだ。
これでは落ち着いて電話もできない。
「も、もうちょっと静かに泣いてくれないかな」
「ぴぎゃああああぁぁっ!!」
「ひぃーっ! 嘘です嘘です!
ごめんなさーい!!」
長いコール音の後、ようやく誰かが出てくれた。
『はい。◯◯交番です』
中年の男性らしき声だ。しかし。
「おぎゃあぁ!」
「あわわわ……」
やっと電話が繋がったというのに、私は恐怖で口が回らない。
警官が呼びかけてくる。
『もしもーし? ちょっと声が遠いようなんですがねぇ』
待ってくれ。
今頼れるのは、あなたしかいない。
藁にも縋る思いで叫んだ。
「たたた、助けてください!
赤ちゃんが……赤ちゃんが泣いてるんです!!」
「びえええぇぇぇっ!」
『はぁ?』
早く助けて!
すぐに行くと言ってくれ!
『あのですねぇ!』
祈るような叫びも虚しく、スマホの送話口からは尖った声が返ってきた。
『赤ちゃんが泣いたくらいで警察に頼ってくるんじゃないよ!!』
誤解だ──!!
赤ちゃんの世話に困り果てた母親が、非常識にも警察に助けを求めたと思われてしまった。
「ちちち違うんです! 私は」
『あのねぇ。
警察は、育児相談なんてのは受け付けてないんで』
「おぎゃあぁーっ!」
「ひぃっ!
だから違うんです、聞いて……」
『我々も暇じゃないんでね。切りますよ』
「ちょっと……待って!」
「ぶぇぇんッ!」
警官は、駄目押しのようにもう一度「切りますよ」と言い、通話は完全に途切れた。
「そんな……」
「うえええぇぇん」
警察に見捨てられた。
「市民の味方が聞いて呆れるわ!!」
「ぶええぇぇんっ!」
「ぎゃーっ!
あなたに言ったんじゃないってば!」
赤ちゃんは、全身をばたつかせて泣いている。
こんなことは初めてだ。
赤ちゃんの傍に、こんなに長時間──。
「ぉぎゃあぁ!」
これ、どうやって収めたらいいのかな。
警察にも見捨てられた今、私はどうしたら。
相変わらず赤ちゃんと距離をとりつつ、突っ伏して頭を抱える。
「ふえぇーん」
ああ。頭が痛い。
「おぎゃあぁぁー……って、もぉーっ!
何で泣いてるのに抱っこしてくれないのーっ!?」
え?
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