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序章
体質1
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***
「そういうのってどうなの、絵美。
生まれてきた生命に対して」
え──?
「イヤなら来なきゃいいのに」
行き先が変わったこと、知らなかったのよ。
「おかしくない?
彼氏と、やることはやってるんでしょ?」
「そうそう。そっちも潔癖って言うなら分かるけど」
考えたこともなかった。
「なんか絵美ってさぁ。
子供ができたら虐待とかしそうじゃない?」
「あー……分かる」
「間違って妊娠でもしたらヤバいよね。
絵美って男が絶えないから」
私って、そんなに駄目なの?
神様。
生まれたばかりの人間に恐怖する私は、人間失格ですか──?
***
何故こんな日に、こんな上天気なのだ。
まるで、あの男の晴れの門出を祝福するようではないか。
窓越しに男を見送る。
もう半年前に終わった男。
もう新しい女と楽しくやってるらしい。
今日は、この部屋に遺されたわずかな荷物を取りに来たのだ。
これで彼の痕跡はなくなり、疲労だけが残った。
足早な後ろ姿が、早々に建物の陰に消える。
無機質な景色。
都心からは少し離れた、東京にしては静かな場所と言えるだろう。
就職のため上京し、五年ほどになる。
特段やりたいことがあった訳ではない。
慣れるまでは苦労もしたが、住んでみれば実家暮らしより気楽なものだ。
エアコンで冷えすぎた部屋には、九月の午後の日差しが燦々と注がれている。
九月二十五日。
十畳のワンルームから、男の痕跡が全て消えた日。
イヤでも忘れられない日になりそう。
向こうの女から見たら、私が悪役なんだろうな。
何かの演出かと思うほど完璧な空は、私ではない誰かを応援しているようだ。
「そういうのってどうなの、絵美。
生まれてきた生命に対して」
え──?
「イヤなら来なきゃいいのに」
行き先が変わったこと、知らなかったのよ。
「おかしくない?
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「そうそう。そっちも潔癖って言うなら分かるけど」
考えたこともなかった。
「なんか絵美ってさぁ。
子供ができたら虐待とかしそうじゃない?」
「あー……分かる」
「間違って妊娠でもしたらヤバいよね。
絵美って男が絶えないから」
私って、そんなに駄目なの?
神様。
生まれたばかりの人間に恐怖する私は、人間失格ですか──?
***
何故こんな日に、こんな上天気なのだ。
まるで、あの男の晴れの門出を祝福するようではないか。
窓越しに男を見送る。
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今日は、この部屋に遺されたわずかな荷物を取りに来たのだ。
これで彼の痕跡はなくなり、疲労だけが残った。
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九月二十五日。
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イヤでも忘れられない日になりそう。
向こうの女から見たら、私が悪役なんだろうな。
何かの演出かと思うほど完璧な空は、私ではない誰かを応援しているようだ。
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