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② 北国の春
おわる2
しおりを挟む「ほな、そろそろ行こか」
「うん。またな、花タソ」
おおきにな。
多分、これが最後や。
おおきにな。
賑やかにしてもうて。歌、聴かしてもうて。ばあちゃん、嬉しかったで。楽しかったで。
気ぃつけて帰りや。
おおきに。ありがと。
……言えてないやろな。ごめんな。
菫と幹也は残ってくれるんか。
堪忍な。
ああ。それにしても、しんどい。
孫らがおる時には、気が紛れたけど。
「ほな、お母さん。おやすみ」
お父さんが電気消したから、今が夜やと分かる。
夜は怖い。
夜は余計にしんどい。
朝が遠い。
しんどい。
冷たい。
休もうと思うのに、どうしてか息を吸うてまう。
辛いし、なんか別のこと考えよか。
そや。菫と幹也が小さい頃は、この部屋で寝とったなぁ。並びもこんな風やった。アタシだけ介護ベッドに寝てんのが、なんか違うけど。
楽しかったなぁ。
アタシ、鈍臭いし、賢ないから。
お父さんに、よう怒られた。
みんなの話、ついてけへん。難しい話、分からん。
ほんでも幸せやった。
みんな集まって、わいわいしてんの見るだけで。
アタシのお料理、モリモリ食べてくれるだけで。
菫が嫁に行って、晴子さんが嫁に来て。
孫ができて、みんな、ええ子に育って……。
あ、目ぇだけ熱いな。
身体中カラカラやのに、涙、出たわ。
「ふふ……」
ありゃ?
急にラクになったと思ったら、アタシはアタシを見下ろしてた。
「お母さん?」
菫がアタシを覗き込んでる。
「お父さん、幹也。起きてっ!」
言い終えるかどうかという内に、お父さんと幹也が飛んできた。
「お母さん、息してへん」
「……訪看さん、呼ぼか」
少しの沈黙の後、お父さんが静かに言った。弾かれたように幹也が動き始める。
ありゃりゃ?
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