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第三部
第16話 邪神の気まぐれパスタ
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ミスルトー侯爵家に滞在し始めて三日が経過した。昨日の夜から天候は荒れ果て、外の天気は大嵐。さすがにこの様子ではメテオライトたちも帰還が遅れるだろう。そう思いながら入ってくる情報を聞かせてもらい、いろいろと話をしていると廊下から騒がしい声が聞こえてきた。声の主はメテオライトやジェイドだ。それに混ざるようにして時折、使用人たちの困惑するような声も聞こえてくる。
何かトラブルでもあったのだろうか――そう思いながら部屋に近づいてくる足音を待つ。さして間を置かず扉が開け放たれる。
「ちょっとサユリ、聞いてよ! クロヤったら酷いのよ!?」
勢いよく開け放たれた扉の向こうから姿を現したのは間違いなくメテオライトだ。口を開いたのも同じ人物だし、声も間違いなくメテオライトだ。外の天候からずぶ濡れになって戻ってきたのかと思ったが着替えた様子は無く、濡れているどころか強風にあおられた気配すらない。それくらいに身なりは整っていた。なぜかエルナとお揃いの髪型をしていること以外は、いつも通りの格好である。
「ケイオス様。落ち着いて下さい。ひとまずはこちらの状況を説明したいので、大人しく、良い子にしていてください!」
ヘリオドールとジェイドに抑えられながら登場したメテオライトは、いつもと雰囲気が違う。エルナとお揃いのドーナツがくっついたみたいなツインテールはシスル王国で流行している髪型という可能性もあるので、あえてそこにツッコミは入れずに俺はこの状況を読みこむ。
まず『サユリ』というのはミシェルの前世での名前だ。同じく『クロヤ』もメテオライトの前世である。だがジェイド達が呼んでいる彼の名は違うものになっているのは、いったい何があったのか。砂漠の向こうで行ってきたという儀式に関係があるのだろうか。そんなことを考えていると、ふいにメテオライトらしき人物と目が合う。一見、赤に見える瞳の奥で、いつもの見慣れた琥珀が揺れた。そんな気がした。
「クロヤったらね、酷いのよ!? ワタシに邪神の気まぐれパスタとか言ってくるの! 邪神を具材にパスタを作るだなんて正気とは思えないわ! でもね、味には自信があるの!」
メテオライト(仮)は俺の服の襟あたりを掴むと、勢いよく前後に振るった。すごく目が回るが、それと同時にメテオライトの腕力ではないことが分かる。そして変なことばかり口走るので、早々にどうにかしたい。
「待て、落ち着け! 目が回っ……うっぷ」
「あっ、ごめん。アストレアの気配があったから、つい」
「えっと、お前はテオじゃない……よな?」
俺は近くで慌てふためいていたジェイド達に視線を向けると、なにがあったのか話すよう目線で促す。エルナとマーリンはそうでもなさそうだが、ジェイドとヘリオドールはやや疲れ気味な様子が気に掛かる。
「えっと、俺らにもよく解ってないんすけどね。メテオライト様がケイオス様に身体を貸しちまってるんすよ」
「度重なる儀式で疲労が蓄積されているメテオライト様がお休みになって以降、ずっとこの状態で……俺たちではどうしようもなく」
改めてよく見ると、ジェイドもヘリオドールも布に包まれた武器を持っていた。布越しでも強い力を持った何かがそこにあるのが解る。恐らくこれが儀式の産物なのだろう。
「詳しくは私から説明しよう。君たち二人はケイオスを見張っていてくれ」
明らかに疲れた様子の二人と入れ替わるようにマーリンが前に出てくる。メテオライトの身体を借りているというケイオスは、エルナに促されて一緒にお菓子を食べ始めているところだ。大人しくなってくれたのは良いのだが、それを遠目に見ているオブシディアン将軍の表情は険しく恐ろしい。あれは間違いなく怒っている。
「ことの始まりは、最近発見された神竜族の神殿から、漆黒のレギンレイヴの最後のひと欠片が見つかったことからだ――」
その前置と共にマーリンが話したのは、これまでの彼らの行動内容や調査の結果だ。
創世の時代に勇者ゲオルグによって封じられた邪神ケイオス。その魂が封じられていたのが『漆黒のレギンレイヴ』だそうだ。しかし邪神とはいっても悪い存在という訳ではなく、どちらかといえば悪戯好きの子供みたいな存在らしい。その時の気分で年齢や性別を自在に変えるそうなので、そういった情報はあってないもののようだ。
ケイオスはこの世界の生命体の進化を異常な方法かつ、目に余る速さで行おうとしていた。それを当時存在していた竜族たちに阻止される形で肉体と魂を分離し封印されたそうだ。
ケイオスは万物の祖先であり、世界そのものという性質を持つ神竜で、他の神格持ちとは一線を隔す存在。決して死なず決して狂う事の無い機構にして、自由と混沌を司るもの。だがその存在は周囲に戦乱を齎すそうだ。
創世の時代からこれまでケイオスには肉体を取り戻す気は無かったが、放置するには危険な神格が正気を失ったことを理由に表舞台へと立つことを決めたらしい。
その神格持ちの名はテミス。創世の時代にケイオスを封印するために働いた古い神々の一柱だ。当時は複数の神格を有していたそうだが、現在はそのほとんどを娘たちに継承し、後は半ば隠居状態だったらしい。現在は掟と秩序を司る存在として世界に存在していると話す。
「ワタシ以外の存在はね、器が複数の神格に耐えられないようにできているみたいなの。頑張っても二つか三つが限界。だから仲間の数が増えたら半分こに分け与えて、それをたくさん繰り返すように言ったわ。でもテミスは真面目な子だから、適当なタイミングでその辺の子に神格を配っちゃえばよかったのに真面目に相手を選定してから譲渡したの。それが原因で狂いが生じたんだわ」
説明するマーリンの言葉を遮るように、先ほどまでのふざけた態度から一転したケイオスが口を開く。子供のように無邪気に振舞うかと思えば、次は親のように振舞うのはケイオスという存在の本質を垣間見た気がする。
「神格を持った竜族は、他の竜族と違って狂うことは無いって聞いていたけど、なんでそんなことになってしまったんだ?」
「長年大丈夫だったという驕りよ。百年無事だったから大丈夫、千年のあいだ何も問題が起こらなかったから平気。……竜族ってね、けっこう傲慢なの。だから自分が完璧な存在だと勘違いすることがあるし、神格を持てば世界を管理できるほど強い力を手に入れたってなっちゃう。それがただ貸し出されただけのものに過ぎないという事に気付きもしないでね」
ケイオスは掌で何かをこねるような動きを見せる。するとそこには作りかけの、手のひら大くらいの小さな惑星のようなものが出来ていた。
「メテオライトが消耗していることと、この魔装具のせいでワタシが今ふるえる力はこの程度。それでも片手に収まってしまうくらいの大きさの世界を作ることが出来る。ワタシという存在は全てが存在し、なにも存在しない万物と虚無のまぜこぜ。だからすべてを与えられるし、すべてを取り上げることもできる。何もない世界に、ただ一人だったワタシのために生み出された竜族たちはワタシにとって我が子であって友達でもあれば伴侶だったの」
小さな惑星のようなものを軽く握り消滅させると、ケイオスは更に話を続ける。神竜テミスは原初の竜族であり、ケイオスが直接生み出した存在なので強い力を持っていること。対抗手段としてヘリオドールやジェイドに神器を作り与えたことを話す。
ケイオスが力を存分に振るうには、このローレッタ大陸のどこかに封じられているケイオスの肉体を探し出す必要があるそうだ。なのでケイオスの肉体を探し出し封印を解き、現在生み出している最中の神器と共にテミスの封印を行う予定だと話す。
「テミスを助けるには、まだ準備が全然足りないの。今のこの大陸にはエリウほどの力を持った術者が居ないから、この器を休ませながら少しずつ進めるしかない」
「術者……? 魔導士が必要なら私やお師匠様じゃ足りませんの?」
「だってアナタもマーリンも、古代魔法の適性が無いじゃない。それじゃあ儀式は出来ないわ」
ミシェルの問いにケイオスはメテオライトとの間にある『約束』をしていると答えた。その対価のうちに肉体の共有を含めているらしい。
儀式の際にメテオライトは大量の魔力を消費するらしく、終わるたびに意識を失うように眠ってしまう状態をこれまでになんどか経験しているようだ。その状態だと行動を完全に封じられてしまう事を非効率だと判断し、自身が寝ている間は他者との意思の疎通のためにもケイオスが肉体を動かしていると説明してくれる。
「でもさ、それってテオは身体が動いてるんだから休めてるのか?」
「魔力の回復は脳を休ませるのが手っ取り早いの。ワタシは脳が無くても思考できるから、問題なく回復しているわ」
「無茶苦茶だな」
「だって神だもん。たいていの武器は使ったことは無いけど、ワタシだから使えるから魔法無しでも身を守れるし」
楽しそうにそう答えるとケイオスは再びソファーに腰掛け、新しく淹れて貰ったハーブティーに口を付ける。次いでクッキーを頬張って幸せそうな表情を見せると、その表情は殆んどメテオライトだ。
この神を相手に細かいことを考えるのはナンセンスだとでもいうべきか、それともいっそのこと『だってケイオスだし』とか、そんな風に考えるようにしたほうが良いのか。一度情報を整理するためにも、俺もソファーにかけなおしカップに口を付ける。
「それにこの魔封じの魔装具だって、ワタシがうっかりでメテオライトの魔力を使わないようにする保険みたいな? まあ、ワタシに掛かれば簡単に外せるけど、マーリンが半年以上かけて作ったらしいから魔封じ破りはしないことにしてあるの」
襟を緩めるとそこには幾つかの石が填め込まれた首輪が巻かれていた。これが先ほど話していた魔装具だろう。
通常の魔装具は軽装備の魔導士でも身を守るための術式や、魔力効率が良くなるよう細工した装飾品全般を指すが、その逆というのはこのローレッタ大陸では見たことが無い。
「話は終わったか?」
俺たちの様子を見て話が終わったと判断したのだろう。今まで静かに話を聞いていたオブシディアン将軍が、地獄の底からやって来たかのような表情で立ち上がる。そしてゆっくりと拳を握った。
何かトラブルでもあったのだろうか――そう思いながら部屋に近づいてくる足音を待つ。さして間を置かず扉が開け放たれる。
「ちょっとサユリ、聞いてよ! クロヤったら酷いのよ!?」
勢いよく開け放たれた扉の向こうから姿を現したのは間違いなくメテオライトだ。口を開いたのも同じ人物だし、声も間違いなくメテオライトだ。外の天候からずぶ濡れになって戻ってきたのかと思ったが着替えた様子は無く、濡れているどころか強風にあおられた気配すらない。それくらいに身なりは整っていた。なぜかエルナとお揃いの髪型をしていること以外は、いつも通りの格好である。
「ケイオス様。落ち着いて下さい。ひとまずはこちらの状況を説明したいので、大人しく、良い子にしていてください!」
ヘリオドールとジェイドに抑えられながら登場したメテオライトは、いつもと雰囲気が違う。エルナとお揃いのドーナツがくっついたみたいなツインテールはシスル王国で流行している髪型という可能性もあるので、あえてそこにツッコミは入れずに俺はこの状況を読みこむ。
まず『サユリ』というのはミシェルの前世での名前だ。同じく『クロヤ』もメテオライトの前世である。だがジェイド達が呼んでいる彼の名は違うものになっているのは、いったい何があったのか。砂漠の向こうで行ってきたという儀式に関係があるのだろうか。そんなことを考えていると、ふいにメテオライトらしき人物と目が合う。一見、赤に見える瞳の奥で、いつもの見慣れた琥珀が揺れた。そんな気がした。
「クロヤったらね、酷いのよ!? ワタシに邪神の気まぐれパスタとか言ってくるの! 邪神を具材にパスタを作るだなんて正気とは思えないわ! でもね、味には自信があるの!」
メテオライト(仮)は俺の服の襟あたりを掴むと、勢いよく前後に振るった。すごく目が回るが、それと同時にメテオライトの腕力ではないことが分かる。そして変なことばかり口走るので、早々にどうにかしたい。
「待て、落ち着け! 目が回っ……うっぷ」
「あっ、ごめん。アストレアの気配があったから、つい」
「えっと、お前はテオじゃない……よな?」
俺は近くで慌てふためいていたジェイド達に視線を向けると、なにがあったのか話すよう目線で促す。エルナとマーリンはそうでもなさそうだが、ジェイドとヘリオドールはやや疲れ気味な様子が気に掛かる。
「えっと、俺らにもよく解ってないんすけどね。メテオライト様がケイオス様に身体を貸しちまってるんすよ」
「度重なる儀式で疲労が蓄積されているメテオライト様がお休みになって以降、ずっとこの状態で……俺たちではどうしようもなく」
改めてよく見ると、ジェイドもヘリオドールも布に包まれた武器を持っていた。布越しでも強い力を持った何かがそこにあるのが解る。恐らくこれが儀式の産物なのだろう。
「詳しくは私から説明しよう。君たち二人はケイオスを見張っていてくれ」
明らかに疲れた様子の二人と入れ替わるようにマーリンが前に出てくる。メテオライトの身体を借りているというケイオスは、エルナに促されて一緒にお菓子を食べ始めているところだ。大人しくなってくれたのは良いのだが、それを遠目に見ているオブシディアン将軍の表情は険しく恐ろしい。あれは間違いなく怒っている。
「ことの始まりは、最近発見された神竜族の神殿から、漆黒のレギンレイヴの最後のひと欠片が見つかったことからだ――」
その前置と共にマーリンが話したのは、これまでの彼らの行動内容や調査の結果だ。
創世の時代に勇者ゲオルグによって封じられた邪神ケイオス。その魂が封じられていたのが『漆黒のレギンレイヴ』だそうだ。しかし邪神とはいっても悪い存在という訳ではなく、どちらかといえば悪戯好きの子供みたいな存在らしい。その時の気分で年齢や性別を自在に変えるそうなので、そういった情報はあってないもののようだ。
ケイオスはこの世界の生命体の進化を異常な方法かつ、目に余る速さで行おうとしていた。それを当時存在していた竜族たちに阻止される形で肉体と魂を分離し封印されたそうだ。
ケイオスは万物の祖先であり、世界そのものという性質を持つ神竜で、他の神格持ちとは一線を隔す存在。決して死なず決して狂う事の無い機構にして、自由と混沌を司るもの。だがその存在は周囲に戦乱を齎すそうだ。
創世の時代からこれまでケイオスには肉体を取り戻す気は無かったが、放置するには危険な神格が正気を失ったことを理由に表舞台へと立つことを決めたらしい。
その神格持ちの名はテミス。創世の時代にケイオスを封印するために働いた古い神々の一柱だ。当時は複数の神格を有していたそうだが、現在はそのほとんどを娘たちに継承し、後は半ば隠居状態だったらしい。現在は掟と秩序を司る存在として世界に存在していると話す。
「ワタシ以外の存在はね、器が複数の神格に耐えられないようにできているみたいなの。頑張っても二つか三つが限界。だから仲間の数が増えたら半分こに分け与えて、それをたくさん繰り返すように言ったわ。でもテミスは真面目な子だから、適当なタイミングでその辺の子に神格を配っちゃえばよかったのに真面目に相手を選定してから譲渡したの。それが原因で狂いが生じたんだわ」
説明するマーリンの言葉を遮るように、先ほどまでのふざけた態度から一転したケイオスが口を開く。子供のように無邪気に振舞うかと思えば、次は親のように振舞うのはケイオスという存在の本質を垣間見た気がする。
「神格を持った竜族は、他の竜族と違って狂うことは無いって聞いていたけど、なんでそんなことになってしまったんだ?」
「長年大丈夫だったという驕りよ。百年無事だったから大丈夫、千年のあいだ何も問題が起こらなかったから平気。……竜族ってね、けっこう傲慢なの。だから自分が完璧な存在だと勘違いすることがあるし、神格を持てば世界を管理できるほど強い力を手に入れたってなっちゃう。それがただ貸し出されただけのものに過ぎないという事に気付きもしないでね」
ケイオスは掌で何かをこねるような動きを見せる。するとそこには作りかけの、手のひら大くらいの小さな惑星のようなものが出来ていた。
「メテオライトが消耗していることと、この魔装具のせいでワタシが今ふるえる力はこの程度。それでも片手に収まってしまうくらいの大きさの世界を作ることが出来る。ワタシという存在は全てが存在し、なにも存在しない万物と虚無のまぜこぜ。だからすべてを与えられるし、すべてを取り上げることもできる。何もない世界に、ただ一人だったワタシのために生み出された竜族たちはワタシにとって我が子であって友達でもあれば伴侶だったの」
小さな惑星のようなものを軽く握り消滅させると、ケイオスは更に話を続ける。神竜テミスは原初の竜族であり、ケイオスが直接生み出した存在なので強い力を持っていること。対抗手段としてヘリオドールやジェイドに神器を作り与えたことを話す。
ケイオスが力を存分に振るうには、このローレッタ大陸のどこかに封じられているケイオスの肉体を探し出す必要があるそうだ。なのでケイオスの肉体を探し出し封印を解き、現在生み出している最中の神器と共にテミスの封印を行う予定だと話す。
「テミスを助けるには、まだ準備が全然足りないの。今のこの大陸にはエリウほどの力を持った術者が居ないから、この器を休ませながら少しずつ進めるしかない」
「術者……? 魔導士が必要なら私やお師匠様じゃ足りませんの?」
「だってアナタもマーリンも、古代魔法の適性が無いじゃない。それじゃあ儀式は出来ないわ」
ミシェルの問いにケイオスはメテオライトとの間にある『約束』をしていると答えた。その対価のうちに肉体の共有を含めているらしい。
儀式の際にメテオライトは大量の魔力を消費するらしく、終わるたびに意識を失うように眠ってしまう状態をこれまでになんどか経験しているようだ。その状態だと行動を完全に封じられてしまう事を非効率だと判断し、自身が寝ている間は他者との意思の疎通のためにもケイオスが肉体を動かしていると説明してくれる。
「でもさ、それってテオは身体が動いてるんだから休めてるのか?」
「魔力の回復は脳を休ませるのが手っ取り早いの。ワタシは脳が無くても思考できるから、問題なく回復しているわ」
「無茶苦茶だな」
「だって神だもん。たいていの武器は使ったことは無いけど、ワタシだから使えるから魔法無しでも身を守れるし」
楽しそうにそう答えるとケイオスは再びソファーに腰掛け、新しく淹れて貰ったハーブティーに口を付ける。次いでクッキーを頬張って幸せそうな表情を見せると、その表情は殆んどメテオライトだ。
この神を相手に細かいことを考えるのはナンセンスだとでもいうべきか、それともいっそのこと『だってケイオスだし』とか、そんな風に考えるようにしたほうが良いのか。一度情報を整理するためにも、俺もソファーにかけなおしカップに口を付ける。
「それにこの魔封じの魔装具だって、ワタシがうっかりでメテオライトの魔力を使わないようにする保険みたいな? まあ、ワタシに掛かれば簡単に外せるけど、マーリンが半年以上かけて作ったらしいから魔封じ破りはしないことにしてあるの」
襟を緩めるとそこには幾つかの石が填め込まれた首輪が巻かれていた。これが先ほど話していた魔装具だろう。
通常の魔装具は軽装備の魔導士でも身を守るための術式や、魔力効率が良くなるよう細工した装飾品全般を指すが、その逆というのはこのローレッタ大陸では見たことが無い。
「話は終わったか?」
俺たちの様子を見て話が終わったと判断したのだろう。今まで静かに話を聞いていたオブシディアン将軍が、地獄の底からやって来たかのような表情で立ち上がる。そしてゆっくりと拳を握った。
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