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第四章 王都
第三十一話 幻想の使い手 前編
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「はぁ」
俺は溜息をつく。
ここ一週間。鍛錬と勉強を繰り返して、疲れが溜まっていた。
「鍛錬と勉強ばっかだなー。たまには、何か事件でも起こってくれないかな?」
「そんなこと言ってはいけませんよ」
不謹慎なことを声に出していたら、王女様が隣にいた。
「ふぇ!?」
思わず変な声を上げてしまう。
「しかし、そんなカケル様に朗報があります」
「朗報ですか?」
「はい。外核区に住んでいる【幻想】さんへの紹介状です」
「えっ!? ということは……」
「はい。どうぞ、行ってきてください」
王女様から手渡されたのは一通の手紙。これを使えば、実質王国内できないことはないだろう。
前々から王女様に頼んでいた、強い魔術師の能力奪取。しかし、王国内の魔術師で今の俺より強い奴はあまりいないどころかそうそういない。囚人たちから奪った力の中には幾つもの属性魔術があったからだ。
しかし、王国内には三人、固有魔術師がいる。一人目は皆さん、おなじみの【異界勇者】アル。二人目が、【天災】アキド。三人目が【幻想】イルシャだ。
ただし、固有魔術師は非常に強力で王国の防衛を担っていることもあり、能力を奪わないでほしいと頼まれている。だから、複製することにした。
それで、前々から王女様に頼んでいたのだ。【幻想】に合わせてほしいと。
そして、やっとチャンスは来たのだ。
俺は鼻歌を歌いながら、内核区へ向かう。
王都の中でも最も王城に近い区画のことを内核区とこの国では呼んでいる。内核区から少し離れた場所にある貧民街やそれより離れた外核区などがある。
内核区には一流の職人や貴族が住んでいる。一般人は少ない。なので、殆どの一般人は外核区に住んでいる。
しかし、ここは外核区の中に相応しくないような豪勢な屋敷。いや、城だった。
「ここか」
俺は門番に紹介状を渡し、中に入る。
中に入ってみると、そこはまた別世界のようだった。白亜の宮殿とでも呼ぶべきだろうか。外からとは見た目がだいぶ違う。まるで、幻想の世界に入り込んだようだ。
「お待ちしておりました。天野様でございますね」
思わず、宮殿に見とれていると、横から声がした。思わず見ると、燕尾服を着た、如何にも執事と言った人がいた。
「ようこそ、我が主の宮殿へ。さぁ、主様がお待ちになれていますので、どうぞこちらへ」
と案内してくれた。
中はどんな様子だろうか。
まず、目に入るのが、深紅のカーペット。外壁とは違う真っ赤な色が目に飛び込む。そして、そのカーペットは二階へと続いている。
壁には幾つもの絵画や牙や角などが飾られている。恐らく幾つもの勝利の証だろう。
「さぁ、行きましょう」
執事は俺の前に立ち、二階への階段を上がった。
上がってくる途中でメイドにすれ違う。俺を見て、メイドは若干、驚いたような顔をした。
「ここが主様がお待ちになられている部屋です。どうぞお入りください」
入ってみると立派な玉座があった。少女と言っても差し支えないだろう。可愛らしい女の子が玉座にちょこんと座っている。
横に机が置かれていた。机の上には赤いワインが注がれている。
透き通るような水色の髪に、深紅の眼。その二つの眼がこちらをじっと見つめる。
「ようこそなのじゃ。妾はこの館の主にして、イルシャ。【幻想】という二つ名をもっておる。よろしくな」
「イルシャさん。こんにちは」
そう彼女は大陸屈指の固有術式を持った魔術師だ。二つ名もちの王国内準最強の魔術師。
「それでは、【幻想秘術】を教えてもらえますか」
「あぁ、仕方がない。お主のような小童に教えるのは癪じゃが、教えたる。我が秘術を」
今日の目的はこれだ。王女からの紹介状で普通では教えてもらえない秘術を教えてもらう。
ぜひ、教えてもらって、力にしよう。
俺は溜息をつく。
ここ一週間。鍛錬と勉強を繰り返して、疲れが溜まっていた。
「鍛錬と勉強ばっかだなー。たまには、何か事件でも起こってくれないかな?」
「そんなこと言ってはいけませんよ」
不謹慎なことを声に出していたら、王女様が隣にいた。
「ふぇ!?」
思わず変な声を上げてしまう。
「しかし、そんなカケル様に朗報があります」
「朗報ですか?」
「はい。外核区に住んでいる【幻想】さんへの紹介状です」
「えっ!? ということは……」
「はい。どうぞ、行ってきてください」
王女様から手渡されたのは一通の手紙。これを使えば、実質王国内できないことはないだろう。
前々から王女様に頼んでいた、強い魔術師の能力奪取。しかし、王国内の魔術師で今の俺より強い奴はあまりいないどころかそうそういない。囚人たちから奪った力の中には幾つもの属性魔術があったからだ。
しかし、王国内には三人、固有魔術師がいる。一人目は皆さん、おなじみの【異界勇者】アル。二人目が、【天災】アキド。三人目が【幻想】イルシャだ。
ただし、固有魔術師は非常に強力で王国の防衛を担っていることもあり、能力を奪わないでほしいと頼まれている。だから、複製することにした。
それで、前々から王女様に頼んでいたのだ。【幻想】に合わせてほしいと。
そして、やっとチャンスは来たのだ。
俺は鼻歌を歌いながら、内核区へ向かう。
王都の中でも最も王城に近い区画のことを内核区とこの国では呼んでいる。内核区から少し離れた場所にある貧民街やそれより離れた外核区などがある。
内核区には一流の職人や貴族が住んでいる。一般人は少ない。なので、殆どの一般人は外核区に住んでいる。
しかし、ここは外核区の中に相応しくないような豪勢な屋敷。いや、城だった。
「ここか」
俺は門番に紹介状を渡し、中に入る。
中に入ってみると、そこはまた別世界のようだった。白亜の宮殿とでも呼ぶべきだろうか。外からとは見た目がだいぶ違う。まるで、幻想の世界に入り込んだようだ。
「お待ちしておりました。天野様でございますね」
思わず、宮殿に見とれていると、横から声がした。思わず見ると、燕尾服を着た、如何にも執事と言った人がいた。
「ようこそ、我が主の宮殿へ。さぁ、主様がお待ちになれていますので、どうぞこちらへ」
と案内してくれた。
中はどんな様子だろうか。
まず、目に入るのが、深紅のカーペット。外壁とは違う真っ赤な色が目に飛び込む。そして、そのカーペットは二階へと続いている。
壁には幾つもの絵画や牙や角などが飾られている。恐らく幾つもの勝利の証だろう。
「さぁ、行きましょう」
執事は俺の前に立ち、二階への階段を上がった。
上がってくる途中でメイドにすれ違う。俺を見て、メイドは若干、驚いたような顔をした。
「ここが主様がお待ちになられている部屋です。どうぞお入りください」
入ってみると立派な玉座があった。少女と言っても差し支えないだろう。可愛らしい女の子が玉座にちょこんと座っている。
横に机が置かれていた。机の上には赤いワインが注がれている。
透き通るような水色の髪に、深紅の眼。その二つの眼がこちらをじっと見つめる。
「ようこそなのじゃ。妾はこの館の主にして、イルシャ。【幻想】という二つ名をもっておる。よろしくな」
「イルシャさん。こんにちは」
そう彼女は大陸屈指の固有術式を持った魔術師だ。二つ名もちの王国内準最強の魔術師。
「それでは、【幻想秘術】を教えてもらえますか」
「あぁ、仕方がない。お主のような小童に教えるのは癪じゃが、教えたる。我が秘術を」
今日の目的はこれだ。王女からの紹介状で普通では教えてもらえない秘術を教えてもらう。
ぜひ、教えてもらって、力にしよう。
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