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第四章 王都

第二十九話 世界の地理の講義

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 今日も気持ちが良い朝だ。

 午前は講義だ。俺は、誰がやってくれるのだろう? と思いながら、講義を行ってくれるという場所まで行く。聞いた話によると、図書室でやるらしい。

 「失礼します」

 俺はノックして、返事が返ってくるのを待つ。

 「はい。どうぞ」

 と可愛い声が返ってきた。思い当たる節があり、俺は戸惑ったが扉を開ける。

 思った通りだった。そこにいたのは昨日の王女だった。

 「えっ!? 王女様が講義してくれるんですか?」

 俺は驚いて尋ねる。

 「はい。父……王からそう承りました」
 「はぁ。なるほど」

 うーん。それって、普通、下の者がやることじゃなのか? 例えば、メイドとか……うーん。でも、まぁ、やってくれるなら、それに越したことはないけど。

 「さて、今日は第一回ということですので、この世界の地理について話しましょう」

 王女さまがそう言いながら、黒板のようなものを指す。どうやら、ペンのようなもので自由に描けるらしい。

 「まず、三つの大陸に分かれているとされています。現在探索が進んでいる範囲だけですので、なんとも言えませんが……」

 王女は黒板に指を滑らせる。すると黒板が発光し、地図を形作った。電子黒板みたいだ。ただし、それは正確なものではなかった。

 「さて、まずはここ。私たちが住む大陸です」

 中央に描かれている大陸だ。規模はまぁまぁといったところか。

 「私たちの住む大陸をアーフ大陸と言います」

 大陸に文字が付いた。そして、国境線らしきものが描かれ出した。幾つもの国境線で区切られている。

 「アシュラ帝国、聖フラン王国、魔導国家オルぺの三大国家が統べています。あとは小国や傘下の国がいくつかですね。この大陸は比較的穏やかで、現在目立った戦はありません。ただ、帝国との近況が少し気になりますね」
 「この真ん中の国が王国ですか?」
 「はい。そうです。西の大国がアシュラ帝国、大陸の最も東の国が魔導国家オルぺです」
 「なるほど」

 俺が相づちをうつと、次は地図が西に西にとずれていく。

 「次はエルヴ・アルカ大陸。森精語で森精族《エルフ》の地という意味の大陸です。ここは森精族《エルフ》が住んでいます。森精族《エルフ》が住んでいる地だけあって、森林地帯です。ここは世界有数の絶景が望めます。現在、聖王国は森精族《エルフ》とは仲良くやっていて、交流しています」

 エルヴ・アルカは地図の左。つまり西の方にある大陸だった。他の大陸と比べ、こちらの大陸から近い。なので、交流も盛んなのだろう。

 「次は旧アルカディア大陸。現在は魔族の一種である鬼族たちのコミュニティがあると言われています」

 旧アルカディア大陸はアーフ大陸から見て、南の方角にある大陸だった。

 「この大陸は昔、光の女神が住まう地だったそうです。しかし、鬼族たちが百年以上の時をかけて、光の女神を駆逐しました。現在はここの【転移門《ポータル》】も壊され、直接行くのは困難な場所となっています」

 黒板に描かれた地図のような場所の一部は海に囲まれていて、確かに楽に行けるような場所ではない。だが、それでもこの大陸からは遠くない。航空機か何かがあれば行けそうな距離だ。ただ、もしかしたら、魔術を使っては厳しいのかもしれない。

 「さて、次はちょっと特殊な場所にあります」

 そういうと、彼女は黒板が立体的に浮かびあがった。

 「まずは天界……私たちの時空を多層的に見た場合、上に存在するとされている世界です。そこに行ける【転移門《ポータル》】は旧アルカディア大陸にあったのですが、先ほども言ったとおり、壊されてしまっていて、現在行くことはできません」

 転移という手段でしか行けないのなら、現在行くのは本当に無理なのだろう。

 「ここにあるのは天使族《エンジェル》の光輝天国です。ただ、国家と定義するのが難しいのですが……天使が住まう地で、さらにここから神界に行くことも可能とされています。真偽はともかくとしてですか。」

 そして、彼女は手を滑らし、立体的になった地図をひっくり返した。

 「そして、さらに獄界。地下の果ての果てにあるとされています。時空多層論を使うと、天界の反対で下に存在する空間です。ただ、ここ行けるのは死者。そして、一部の特別な者のみです。悪事を犯して死んだ者はそこで苦しみを受けているそうです」

 地球でいう地獄ということか。じゃあ、さっきの光輝天国は地球でいう天国ってことかな?

 「さて、ここまでで質問はありますか?」

 説明が一通り終わッ多用だ。簡単なことだけだが、結構、わかった。

 「ありません」
 「では、今日は終わりです。後は図書室の資料をご自由にご覧ください」

 優雅な礼をして、王女様は図書室から出ていった。

 「はぁ」

 俺は溜息をついた。

 「女子とまともに話すなんて無理だな……あいつは幼なじみだったから大丈夫だったけど、こんな美少女は無理だよなぁ」

 だが、嘆いたって恐らく変わらないのだろうと、俺は静かに読書を始めた。
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