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第四章 王都
第二十五話 組合長
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「【個人情報《ステータス》】見ても技能が消えてる……だと。そんな馬鹿な……」
試合が終わった後、カードを見ながら彼がそう言った。俺がしたことだが、罪悪感が溢れ出てくる。もし、技能を返せるんだったら、返してあげたいくらいだ。
「だが、しかし……約束は約束だ。金は渡そう」
うーん。いい人だ。
「カウンターまで行こう。それで手続きができる」
「はい」
俺は頷いて、カウンターまで向かう。
喧騒とした酒場の真ん中を歩いていると、向こうから老人がやってくるのが見えた。白い髭にステッキをつきながら歩いてくる御爺さん。第一印象はそれだった。
「なっ!? ギルドマスター……」
彼は驚いた顔をしながら言った。
「そうじゃ。さて、君が例の新入り君か」
俺の方を見た瞬間、凄まじい殺意の塊が飛んでくる。
「なっ……」
「自己紹介でもしよう。名前をトル・ミアレという。昔は冒険者であったが、色々あって、まぁ、今はギルドマスターなんかを任されておるがのう。お主の名を何という?」
「天野翔だ」
俺は短くそう伝える。迂闊に挨拶すらできない感じがした。一瞬でも気を緩めれば、殺されそうな濃密な殺気が俺を襲っていた。
精一杯の強がりを込め、老人をにらみ返す。
すると、老人は笑った。心の底から楽しんでいるような表情だった。
「どうして笑う?」
俺は尋ねる。
「君の強さに驚いてだよ。ふむ。なかなかに強い。これほどまでの殺気を受けても怯まないとは優秀だ」
しきりに納得したような表情で頷く老人からあふれ出ていた殺気は止まった。今度は柔らかな雰囲気だ。
「で、そうだったね。カケル君。君はこやつから決闘を受けていたんだね」
「そうだ。ギルドマスターが出てこなくてもいいだろう。俺は負けた。しっかり金は払うつもりだ」
「いや、そうもいかん。王の親衛隊が先ほどギルドまで、彼を迎えに来た」
「はっ?」
冒険者はポカンとした顔になる。
やっと来たのか。
「王城へ呼ばれているらしい。金のやりとりは後にして早くいった方がいい」
「あ、あぁ。それなら仕方ない。また後でな」
俺は彼らに別れを告げ、ギルドの外に出た。
俺が外に出ると、屈強そうな男が数人立っていた。
「聖王国親衛隊隊長、アーガスだ。貴殿を王の命令により、王城への招待が来ている。時間を頂くがよろしいか」
外にでるなり、四、五十歳ぐらいの男が声をかけてきた。腰につけた純白に輝く剣や銀色に光る鎧。その姿はまるで聖騎士だ。
それが数人。それを率いている彼は確かに王国の隊長と言われてもわかる。
「あぁ、うん。勿論」
俺はいきなり声をかけられたことに驚いたが、受け入れる。殆ど、全員強そうだしね。反抗的な態度はとれない。漫画とかでよくあるとおり、殺されても洒落にならない。
「では、【転移術符】を使って、王城までいく」
と言って、一つの札のようなものを取り出す。
「【転移】!」
彼はそう言った瞬間、術符が反応する。術符は小さく発光し、徐徐に光が広がる。そして、激しい閃光が俺を包んだ。
視界が明滅する。
試合が終わった後、カードを見ながら彼がそう言った。俺がしたことだが、罪悪感が溢れ出てくる。もし、技能を返せるんだったら、返してあげたいくらいだ。
「だが、しかし……約束は約束だ。金は渡そう」
うーん。いい人だ。
「カウンターまで行こう。それで手続きができる」
「はい」
俺は頷いて、カウンターまで向かう。
喧騒とした酒場の真ん中を歩いていると、向こうから老人がやってくるのが見えた。白い髭にステッキをつきながら歩いてくる御爺さん。第一印象はそれだった。
「なっ!? ギルドマスター……」
彼は驚いた顔をしながら言った。
「そうじゃ。さて、君が例の新入り君か」
俺の方を見た瞬間、凄まじい殺意の塊が飛んでくる。
「なっ……」
「自己紹介でもしよう。名前をトル・ミアレという。昔は冒険者であったが、色々あって、まぁ、今はギルドマスターなんかを任されておるがのう。お主の名を何という?」
「天野翔だ」
俺は短くそう伝える。迂闊に挨拶すらできない感じがした。一瞬でも気を緩めれば、殺されそうな濃密な殺気が俺を襲っていた。
精一杯の強がりを込め、老人をにらみ返す。
すると、老人は笑った。心の底から楽しんでいるような表情だった。
「どうして笑う?」
俺は尋ねる。
「君の強さに驚いてだよ。ふむ。なかなかに強い。これほどまでの殺気を受けても怯まないとは優秀だ」
しきりに納得したような表情で頷く老人からあふれ出ていた殺気は止まった。今度は柔らかな雰囲気だ。
「で、そうだったね。カケル君。君はこやつから決闘を受けていたんだね」
「そうだ。ギルドマスターが出てこなくてもいいだろう。俺は負けた。しっかり金は払うつもりだ」
「いや、そうもいかん。王の親衛隊が先ほどギルドまで、彼を迎えに来た」
「はっ?」
冒険者はポカンとした顔になる。
やっと来たのか。
「王城へ呼ばれているらしい。金のやりとりは後にして早くいった方がいい」
「あ、あぁ。それなら仕方ない。また後でな」
俺は彼らに別れを告げ、ギルドの外に出た。
俺が外に出ると、屈強そうな男が数人立っていた。
「聖王国親衛隊隊長、アーガスだ。貴殿を王の命令により、王城への招待が来ている。時間を頂くがよろしいか」
外にでるなり、四、五十歳ぐらいの男が声をかけてきた。腰につけた純白に輝く剣や銀色に光る鎧。その姿はまるで聖騎士だ。
それが数人。それを率いている彼は確かに王国の隊長と言われてもわかる。
「あぁ、うん。勿論」
俺はいきなり声をかけられたことに驚いたが、受け入れる。殆ど、全員強そうだしね。反抗的な態度はとれない。漫画とかでよくあるとおり、殺されても洒落にならない。
「では、【転移術符】を使って、王城までいく」
と言って、一つの札のようなものを取り出す。
「【転移】!」
彼はそう言った瞬間、術符が反応する。術符は小さく発光し、徐徐に光が広がる。そして、激しい閃光が俺を包んだ。
視界が明滅する。
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