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第四章 王都

第二十四話 対決

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 やってきた闘技場は地下にあるはずなのに広く、結界のようなものが張られていた。コロッセウムのような感じで、真ん中で戦い、横から眺めることができる。

 俺と男は薄く残っている白線を目安に、お互いを正面に構える。

 「では、説明させて頂きます」

 審判である受付嬢が説明を始める。

 「この中で戦うと、ダメージがすぐに癒えます。受けたダメージの量に比例して、魔力が消費されます。変換されます。ただ、癒える傷にも限度があって、即死級の攻撃、例えば首をはね飛ばす攻撃などは回復はできません。敵を殺すと、組合法典に従って、即刻、組合から除外します」

 審判の受付嬢は言う。

 「では、双方、武器を構えて」

 俺は聖剣を構える。敵は短剣の二刀流か。

 「開始!」

 この時、俺は甘く見ていたのかもしれない。彼の強さを……

 まず、俺は先手必勝と突っ込んでいった。聖剣をそのまま叩きつけるようにして、相手に当てようとした。彼は左に少しずれ、攻撃を躱した後、短剣を振るった。

 「シッ!」

 短い呼気と共に放たれた攻撃を【体術】による無理な体勢で避ける。正確な剣の動かし方で、俺の急所を狙ってくる。模擬戦だということを思わず忘れてしまう。

 少なくとも、この人は弱者じゃない。強者の中に入るだろう。それ以上に強い。

 俺は一旦、後ろに下がる。

 「ハッ!」

 しかし、それすらも許さないように一瞬で詰め寄られ、俺は脇腹に蹴りを受ける。

 「カハッ」

 俺は思わず、胃液を吐く。

 脇腹に手を当てながら、俺は【移動術】で素早く移動する。

 「どうした、その程度か」

 おじさんは聞いてくる。

 「……まだまだです」

 俺は【火球】の魔術を起動する。

 「【火球】!」

 火の球を操作し、相手に当てようとする。ただ、作戦自体は良かった……という結果に終わった。圧倒的な身体能力。彼はそれによって、あっさりと避け切った。

 「すげぇえな」

 俺は思わずつぶやいてしまう。

 「【火弾】」

 俺は数個の弾丸を空中に浮かばせ、一斉に放つ。赤色の弾丸が刹那の雨あられとなって、彼に降り注ぐ。さすがに避けきれなかったか、数弾、被弾している。

 「なるほど。冒険者になりたがるのもわかる」

 一瞬の肯定。ただし、そのまま斬撃が飛んでくる。

 「だが、まだまだだ」

 おじさんは一つの魔術を起動した。

 「【光閃】」

 刹那、眩い光が辺りを包み込む。俺は反射的に目を瞑ってしまう。それがミスだった。

 「ハッ!」

 眩い閃光により、彼が近づいてきたのに、気付かなかった。

 俺は避けきれず、攻撃を喰らう。瞬時に怪我が回復する。だけど、こっちはどんどん限界に近付いている。

 「そろそろ、負けを認めるか」
 「そんなわけないじゃないですか」

 俺は【火弾】と【水弾】を穿つ。

 「【二属性《デュアルマナ》】か。だが、その程度なら」

 彼は短剣を短く振って、弾を斬った。

 「楽勝だ」
 「くっ」

 あぁ、もう、仕方ない。奥の手だが、ここで使うしかない。負けたくないという気持ちの方が強い。

 「【形状変化:形態《フォルム》:槍】」

 【聖剣】は形を変え、槍になった。【聖槍】とでも呼ぼうか。その美しさには変わりなかった。

 「【貫通撃】!」

 【移動術】を使い、瞬時に動き、俺は【武術】に内包されている武技を使う。だが、彼は短剣で弾くようにして、防ぐ。だが、それはまだ陽動。俺はほぼゼロ距離から大技を当てる。

 「【水刃】」

 水の刃が彼を狙う。彼はよろめいた性で二撃目に遅れた。

 彼は強い。だが、俺の方が上だ。そう信じる。信じて俺はさらに攻撃を重ねる。

 「【形状変化:形態《フォルム》:双剣】」

 流動性のある金属になった後、それは二つに分かれた。

 「なっ!?」

 さすがにこれは予想できなかっただろう。

 俺は二ヤリと笑う。

 俺は跳躍する。
 火の弾丸を飛ばす。軽い爆撃のようなものだ。彼は前方に転がり避け、俺の方に向かってきた。短い突き。地面に着地した後、俺は双剣で短剣の攻撃を受ける。

 片方の剣を逆手で持ち、横に薙ぐ。

 「ぐっ、なかなかにやる。こちらも本気をだすとしようか」

 なにやら、ラスボス的なことを言いながらこちらを向く。油断は禁物だ。

 「【縮地】」

 彼は一瞬で距離を詰めて、俺に腹を突き刺そうとした。俺は双剣で短剣を防ぎ、そのまま空中で周りながら、そのまま敵を斬る。

 「【瞬歩】」

 彼はそう言って、瞬時に交戦場から離脱した。怪我は回復し、相手は再び俺に近づく。

 「【二連強漸《ダブルスラッシュ》】」

 ヒュンと俺の身体を斬撃が斬った。うっと身体を痛める。

 「くぅ【火刃】」

 俺は火の刃を飛ばし、相手の首を狙う。
 刃系の魔術はスピードも速く、攻撃力もある。首に当てれば、それだけで終わりだ。

 だが、俺はさらに秘密の手を残している。ただ、それをどのタイミングで放つか。

 俺は……一瞬の隙も見逃さないように動く。

 そして、明確な隙が現れる!



 足をひっかけ、俺は柔道のようにして、投げ飛ばした。【武術】には勿論、柔道のようなものも内包されている。基礎的な技のみだが、十分だ。

 上から袈裟固めをかける。


 ――十秒間。無理やりに抑えつける。


 「ぐっ、何だ!」

 彼は手に持つ短剣を微かに動かし、俺の横腹に突き刺そうとする。

 だが、俺はそのまま固める。彼は苦しそうにもがく。その様はまるで闘牛のようだ。兎に角、暴れまわる。



 だが、そんな彼を押さえつける。十秒なんてあっという間だった。



 無数の技能獲得のメッセージが脳内に響き渡る。

 「な、力が抜けていく……だと? 何をした!?」

 勿論、原因は俺だ。だがしかし、俺はとぼけるようにして答える。

 「さぁ、何だろうな!」

 俺はそのまま力を込め、抑えながら、金色に光る剣を手に取る。

 「……わかった。俺の負けだよ」

 彼が言った。それが、試合終了の合図だった。
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