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第二章 森の中

第十三話 外へ

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 俺は罪悪感を感じながら歩いていた。襲ってきたといえばそうだが、もうちょっとなんとかやりようがあったのではないかと思う。

 動物ですら殺したことがない、平和な世界に住んでいた俺はやはり、こういうのになれていない。しかも、知性のある生物を殺してしまった。


 人殺しと何ら、変わらないのではないかと思った。


 成果だけ見れば十分だ。俺はそう思う。沢山の技能を得たし、実際の戦闘感覚もつかめた。

 【漂流者】天野翔
 【ランク】Ⅰ
 【天職】(剣士)
 【特殊技能《ユニークスキル》】
  【創造権能】
  【技能奪取】
 【技能《スキル》】
  【武術】
    【下級短剣術】
  【格闘技】
   【二連拳撃】【二連脚撃】
  【体術】
  【移動術】
  【指揮】
  【幻視】
  【探索】
 【魔術】
  【火属性魔術】

 今回の戦闘で技能《スキル》も増えた。恐らく、結構強くなった。例えば、【格闘技】。武術系の技能《スキル》の中で、素手での戦闘に優れているものだ。パンチやキックなどの攻撃を強化してくれる効果もある。

 もし、もう一度、あの熊たちにあってもすぐ倒せる気がする。

 でも、俺は生き物を殺すということに嫌悪感を催す。なんとなく、血をみたり、自分で殺していると思うと……気持ち悪くなるし、怖くなってくる。


 「でも、この世界で生き抜くにはこうするしかないんだ」


 俺は自分自身に言い聞かせる。言い聞かせるようにして、言葉を吐きだす。

 それはある種の祈りでもあった。

 ――そうであるべきだ。

 ――そうであってくれ。

 知性ありし生物たちを殺した、大きな大きな罪への贖罪でもあった。

 俺は心に隠れたそんな感情をはき出す、押し出すようにして、息を吐く。新鮮な空気を吸った時、心の奥底まで新鮮さで満たされた。

 「仕方ない。割り切るんだ」

 再度、自分に言い聞かせる。



 俺は出口に向かって、歩いていた。


 ▼


 暫く歩くと、瓦礫の場所に戻ってきた。

 この瓦礫を壊せば、俺は外へ出れる。

 なんだか感慨深いものがある気がする。

 「【火弾】」

 俺は短く呟き、魔術を放つ。火の弾丸は一直線に飛んで、瓦礫を貫通した。しかし、当たった範囲が小さすぎて、全然瓦礫を崩すまでに至ってない。

 「【二連拳撃】ッ!」

 ワンツーのような感じで俺は瓦礫を狙う。風切り音と共に手に鈍い感触が走る。

 痛ッ!

 でも、もう一息で崩せそうだ。

 俺は手を襲う痛みを我慢しながら、数メートル下がる。

 「【二連脚撃】ッ!」

 俺は【移動術】の最高速度で走りながら、瓦礫を蹴り飛ばした。反動で足にも痛みが襲うが気にしない。


 ――外の光が洞窟内に入ってくる。


 俺はゆっくりと外に踏み出す。薄暗い空間から、明るい太陽の日差しを受ける大地に戻った。


 「やった、遂に外に戻ってこれたぞ!」

 なぜか俺は叫んだ。
 
 血生臭い記憶とはおさらばしたかった。
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