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第二章 森の中

第八話 力は奪う物

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 「でも、出会わないのが一番いいんだよな」

 くねくねとした曲道を歩きながら言った。明かりは火の球で代用して、なんとかしているが、それでも前方しかわからない。後ろから来られたら、詰んでしまう。

  俺は【探索】があるが、五十メートルまでしかわからず、もし【探索】に引っかかるレベルの近さに来られたら、それこそ大ピンチだろう。

 でも、曲道が本当に多いな。ここ、洞穴じゃなくて、洞窟だったか。しかもドンドン出口から離れている。一応、方向感覚はある方だと思うけど、これ以上いくと、帰る時に迷うかもしれない……

 と思っていた矢先だった。


 ――【探索】に何かが引っかかった。動いてる。


 うん? あれ、早い……しかも、こっちに向かってきてる……?

 そして、曲がり道から現れた巨大な茶色の動物……


 あれ、もしかしてさっきの熊?



 「グォオオオ!!!」
 「ギャー!」



 俺は悲鳴を上げる。そして、走りだす。本当にマジでヤバいって……

 熊は、巨体とは本当に思えないスピードで突っ込んできた。俺に一番近づいた時、薙ぎ払うように腕を払った。


 間一髪避けるも、風が吹き、俺は一瞬体勢を崩す。しかし、そのまま魔術を使う。

 「【火球】ッ!」

 頭の中で無数の文字列が走る。身体から何かが抜け落ち、火が具現化する。

 「ハッ!」

 俺は熊の眼を目がけて、【火球】をぶつける。


 熊はそれを防ごうと腕を上げる。しかし、一瞬だけ俺の方が速かった。
 火は熊の眼に当たり、今度は熊が体勢を崩した。急所だったのか、そのまま悶絶している。熊は地べたに這いつくばる。

 熊はこれ以上、攻撃できない。



 せっかくの隙。逃すわけにはいかない!



 俺には【技能奪取】がある。体の一部に十秒触れれ続ければ発動する。なら、俺は触り続ければいい。

 俺は熊の身体に触れる。


 一秒、熊は突然触られたことに驚いたように感じだ。痛みに耐えながらも立ちあがる。

 二秒、熊は俺の手を振り払おうと身を捩る。

 三秒、四秒、五秒。激しく暴れているので、俺はグワングワンと飛ばされそうになる。が、俺はなんとか触り続ける。

 六秒、身を捩っても駄目だった熊は、爪で抉ろうとしてくる。この近距離で当たったら即死かもしれない。

 七秒、さらに腕で薙ぎ払おうとしてくる。

 八秒、九秒、俺はしがみつき、必死に耐える。

 だが、これで終わりだ。

 十秒。

 カウントが終わり、一気に頭の中を情報が駆けめぐる。


 【技能《スキル》【体術】【移動術】【黒熊流武術】を【黒熊】から奪いました】
 【技能《スキル》【黒熊流武術】を【武術】に変換しました】

 これ以上は不味いと思い、俺は咄嗟にその場から逃げた。

 新しく手に入れた【移動術】のお陰か、素早く動く方法がなんとなくだがわかった。

 熊は突然、力を失ったからか、動きが圧倒的に鈍くなった。


 俺は一旦、避難した。
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