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30 嵐の予感
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一連の騒動から3日後、王立魔法病院へ入院していたキャムやウェイクが帰ってきた。2人とも幸い治癒魔法で簡単に直せる程度だったが、頭を強く打ったので、様子をみるための入院だったそうだ。
オポトはそれからさらに遅れて2日後にパルミッツ魔法学院へ帰ってきた。皇子のレオナード皇子の話だと彼は隣の国ドォルドーの戦災孤児で不安定な国内情勢のなかで将軍ヴィヴィルツ・カーマインに育てられた魔法の才能のある子に魔法科学で実験・強化された〝アド20〟のひとりだそうだ。彼は特に将軍からキャムの暗殺命令を受けた訳ではなかったと確認できた。身分は偽ったものの本当に留学のつもりできたのに捨て駒として利用されただけに過ぎなったそうだ。
エブラハイム魔法王国には、魔法の自白剤がある。服用すると意識が混濁し、精神の状態が元に戻れない危険性があるため、重犯罪の容疑者にのみ使用が認められている。その自白剤を用い、すべて自供させ彼を操っていた魔法の制御針が首のうしろに埋め込まれていたため摘出に成功した。これにより彼自身について危険性は取り除けたと国は判断したそうだ。加えてレオナード皇子からオポトを学院に戻しつつ、自分の護衛役にするよう働きかけたそう。彼はドォルドーへ送り返したらヴィヴィルツ将軍に処刑されるだけなので、本人の意向も確認し、このような処置となった。
ただ、大人しく黙っていないものがひとりいた。命を何度も狙われたキャムの父親、テイラー家の当主である。
ドォルド―国ヴィヴィルツ将軍の狙いは幻獣殺し英雄キャムの抹殺……このままドォルドー国を放置してよいのか? と国王へ進言し、犯罪に加担したオポトの身柄引き渡しを国へ求めた。
しかし国王ジュール・デマンティウス13世はテイラー家当主の意見をすべて受け入れなかったそうだ。だが、テイラー卿がこのまま大人しくなるのか今後注視しなければならないとレオナード皇子は語る。
ところで、ラーゼ・ミットファン先生だが、彼はそのテイラー卿が雇った人間でキャムの護衛に当たらせていたそうだ。事件当日にどさくさに紛れて学院から姿を消した。王国諜報機関の調べでは、無法者の国マガツワタの闇ギルドに所属する暗殺者ではないかとの見解だそうだ。
とりあえずの危機が去り、延期していた魔法闘技大会が開かれたが先週の事件を考慮し、1年は出場禁止となった。大会の結果は当然のように3年生が優勝した。
✜
翌週、学期末試験が始まった。私は予定通り成績がトップにならないよう点数をうまくコントロールした。それはいいとして翌週に廊下の掲示板に貼りだされた試験結果をみるとキャムが学年1位だったので驚いた。
乙女ゲーの中では頭脳明晰なミラノが学年トップで、ロニやサラサ、レオナード皇子が上位を争っていたが、悪役貴族キャムが10位以内に入っているのを私は見たことがなかった。
宿題をサラサにやらせたり、講義中も先生に当てられてもちゃんと答えられない場面をよく目にする。それなのに一番?
めちゃくちゃ怪しい。いや100パーセントなにかやっている。でも証拠がないので、どういう不正をしたのかが分からなかった。教師を買収した? でも問題を考えるのは各担当の先生なのでそれは無理だと思う。じゃあカンニング……でもどうやってやったのかが結局わからなかった。
期末テストも終わったので、いよいよ1学期最大のイベントが来週から始まる。
茶会──エブラハイム王国では魔法使いは貴族の世界に密接に関わり合いがある。そのため10年以上前に生徒が考案した今なお続いている行事で、教師陣もこの茶会を推奨している。
女子グループが男子グループを招いて茶会を開く。男子はひとり一輪ずつレーゼと呼ばれるバラの花に似た花を持っていて、しっかり招待のできた女子へ渡すというルールがある。その花を受け取ると2学期に食堂でデザートが毎日、1個増やしてくれるという特典がついているので、私はなんとしてでもレーゼの花をゲットしなければならない。
──男子を呼ぶのか。なんか嵐の予感しかしない。
オポトはそれからさらに遅れて2日後にパルミッツ魔法学院へ帰ってきた。皇子のレオナード皇子の話だと彼は隣の国ドォルドーの戦災孤児で不安定な国内情勢のなかで将軍ヴィヴィルツ・カーマインに育てられた魔法の才能のある子に魔法科学で実験・強化された〝アド20〟のひとりだそうだ。彼は特に将軍からキャムの暗殺命令を受けた訳ではなかったと確認できた。身分は偽ったものの本当に留学のつもりできたのに捨て駒として利用されただけに過ぎなったそうだ。
エブラハイム魔法王国には、魔法の自白剤がある。服用すると意識が混濁し、精神の状態が元に戻れない危険性があるため、重犯罪の容疑者にのみ使用が認められている。その自白剤を用い、すべて自供させ彼を操っていた魔法の制御針が首のうしろに埋め込まれていたため摘出に成功した。これにより彼自身について危険性は取り除けたと国は判断したそうだ。加えてレオナード皇子からオポトを学院に戻しつつ、自分の護衛役にするよう働きかけたそう。彼はドォルドーへ送り返したらヴィヴィルツ将軍に処刑されるだけなので、本人の意向も確認し、このような処置となった。
ただ、大人しく黙っていないものがひとりいた。命を何度も狙われたキャムの父親、テイラー家の当主である。
ドォルド―国ヴィヴィルツ将軍の狙いは幻獣殺し英雄キャムの抹殺……このままドォルドー国を放置してよいのか? と国王へ進言し、犯罪に加担したオポトの身柄引き渡しを国へ求めた。
しかし国王ジュール・デマンティウス13世はテイラー家当主の意見をすべて受け入れなかったそうだ。だが、テイラー卿がこのまま大人しくなるのか今後注視しなければならないとレオナード皇子は語る。
ところで、ラーゼ・ミットファン先生だが、彼はそのテイラー卿が雇った人間でキャムの護衛に当たらせていたそうだ。事件当日にどさくさに紛れて学院から姿を消した。王国諜報機関の調べでは、無法者の国マガツワタの闇ギルドに所属する暗殺者ではないかとの見解だそうだ。
とりあえずの危機が去り、延期していた魔法闘技大会が開かれたが先週の事件を考慮し、1年は出場禁止となった。大会の結果は当然のように3年生が優勝した。
✜
翌週、学期末試験が始まった。私は予定通り成績がトップにならないよう点数をうまくコントロールした。それはいいとして翌週に廊下の掲示板に貼りだされた試験結果をみるとキャムが学年1位だったので驚いた。
乙女ゲーの中では頭脳明晰なミラノが学年トップで、ロニやサラサ、レオナード皇子が上位を争っていたが、悪役貴族キャムが10位以内に入っているのを私は見たことがなかった。
宿題をサラサにやらせたり、講義中も先生に当てられてもちゃんと答えられない場面をよく目にする。それなのに一番?
めちゃくちゃ怪しい。いや100パーセントなにかやっている。でも証拠がないので、どういう不正をしたのかが分からなかった。教師を買収した? でも問題を考えるのは各担当の先生なのでそれは無理だと思う。じゃあカンニング……でもどうやってやったのかが結局わからなかった。
期末テストも終わったので、いよいよ1学期最大のイベントが来週から始まる。
茶会──エブラハイム王国では魔法使いは貴族の世界に密接に関わり合いがある。そのため10年以上前に生徒が考案した今なお続いている行事で、教師陣もこの茶会を推奨している。
女子グループが男子グループを招いて茶会を開く。男子はひとり一輪ずつレーゼと呼ばれるバラの花に似た花を持っていて、しっかり招待のできた女子へ渡すというルールがある。その花を受け取ると2学期に食堂でデザートが毎日、1個増やしてくれるという特典がついているので、私はなんとしてでもレーゼの花をゲットしなければならない。
──男子を呼ぶのか。なんか嵐の予感しかしない。
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