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7 復讐シミュレーション
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「では始めます」
「うっ……」
天井から管が出てきて、べチャッと丸いまとまった液体物が床に落ちると人のカタチに姿を変えた。私はその顔を見た瞬間、自分で頭に血がのぼるのがわかった。
「それは擬態ができる特殊なスライムを研究して培養した人形です」
私の記憶のなかでもっとも憎いと思っている人物を魔法でスキャンして実体化させたそうだ。制御室からある程度、操作が可能なので、これからこの人形と戦うよう指示があった。
「どうぞお好きなように」
「根源よ、狂濤たる稜角の水柱となりて、其を穿て……」
水魔法のひとつ〝水槍〟を飛ばして胸に風穴を開けた。偽物だと頭では理解している。だけど好きにしていいと言われて抑えが効かなくなった。
「次いきます」
水魔法で斬って、潰して、叩きつける。私の魔力が底をつくまで、延々とあの男そっくりな人形を破壊し続けた。
「はぁはぁ」
「どうです。今の気持ちは?」
「……虚しいです」
どんなに人形を切り刻んでも本人ではないので満足なんてしない。そもそも本人を見つけた時、この人形みたいに同じような目に遭わせたら私は満足するのだろうか?
復讐が虚しい、という訳ではない。ただこんなやり方では満足できないことに気が付いた。それと私自身の気持ちが晴れないばかりか罪の意識に苛まれてしまう。ではどうすればいい……。考えた末に答えらしきものが頭に浮かんできた。
「わかりました」
「……」
「どうしようもないクズ男のために自分を犠牲にするのはバカバカしいって気が付きました」
「わたしは最初からどうこう言うつもりはなかったわ。アナタは自分で自分の正解を導くべきだったから」
そう、どうせ復讐するなら自分を不幸にしちゃいけない。恋愛ではいつも自分のことよりも相手をいちばんに考えていた。だからあんなクズ男に引っかかってしまった。もう他人に振り回されない。復讐だって同じことがいえる。
せっかくゲームの世界に転生してきたんだ。復讐だけの人生なんてツマらない。異世界ライフを楽しみながらあのバカを心底、後悔させてやればいい。その方法は自分の犯した過ちに気づかせ後悔させること。
まずは魔法を学べることに感謝しなきゃ。元居た世界では絶対に味わえない魔法という未知が自分で操れるのだから。
次の日にいつものように魔力の放出を始めたら、しばらくしてバロアがコントロール室から出てきて私に魔力判定結果が書かれた紙を渡してきた。
【魔力判定結果】
名前:シリカ・ランドール
性別:女
年齢:5
魔力総量:1,092
瞬間出力:315
変換効率:67%
魔力純度:63%
総合判定:C-
「ようやくこれで次に進めるわい」
「はいっ」
バロアもなんだか嬉しそう。私も心からの笑顔をみせた。
次の日から午前中は魔力強化を行い、午後から魔法基礎学Ⅳと魔法史を学び始めた。バロアが教えてくれるわけではなく、魔法による遠隔授業……元居た世界ではオンライン授業のようなカタチで学ぶ。
化粧台の魔法の鏡に魔力を与えると中等部の授業を受けられた。リアルタイムの授業ではなく、録画されたものを視聴するタイプ。なのでわからないところがあったら、授業の進行を停止して手元にある教科書で理解できるまで噛み砕くように覚えた。
父が国立魔法図書館の司書をしているので、家にたくさん魔法書があった。私は3歳になる前から読み耽っていたので、初等部卒業程度の知識は修学していた。その甲斐もあってちょうどいいくらいのレベルに感じる。
「今日から1か月ほど出かけるがシリカはどうする?」
そのまま日課をこなしてもいいし、ついてきても構わないという。行先は地方都市の近郊で新種と思しき未確認の魔獣の目撃情報がいくつか寄せられていて、今のところ人や家畜への被害がないため、生態系を調査しに行くそうだ。
もちろん一緒に行くつもり。だってその街にはあの男がいるはずだから……。
すぐに出かける支度を始め、居住棟の最上階へと急いだ。
「うっ……」
天井から管が出てきて、べチャッと丸いまとまった液体物が床に落ちると人のカタチに姿を変えた。私はその顔を見た瞬間、自分で頭に血がのぼるのがわかった。
「それは擬態ができる特殊なスライムを研究して培養した人形です」
私の記憶のなかでもっとも憎いと思っている人物を魔法でスキャンして実体化させたそうだ。制御室からある程度、操作が可能なので、これからこの人形と戦うよう指示があった。
「どうぞお好きなように」
「根源よ、狂濤たる稜角の水柱となりて、其を穿て……」
水魔法のひとつ〝水槍〟を飛ばして胸に風穴を開けた。偽物だと頭では理解している。だけど好きにしていいと言われて抑えが効かなくなった。
「次いきます」
水魔法で斬って、潰して、叩きつける。私の魔力が底をつくまで、延々とあの男そっくりな人形を破壊し続けた。
「はぁはぁ」
「どうです。今の気持ちは?」
「……虚しいです」
どんなに人形を切り刻んでも本人ではないので満足なんてしない。そもそも本人を見つけた時、この人形みたいに同じような目に遭わせたら私は満足するのだろうか?
復讐が虚しい、という訳ではない。ただこんなやり方では満足できないことに気が付いた。それと私自身の気持ちが晴れないばかりか罪の意識に苛まれてしまう。ではどうすればいい……。考えた末に答えらしきものが頭に浮かんできた。
「わかりました」
「……」
「どうしようもないクズ男のために自分を犠牲にするのはバカバカしいって気が付きました」
「わたしは最初からどうこう言うつもりはなかったわ。アナタは自分で自分の正解を導くべきだったから」
そう、どうせ復讐するなら自分を不幸にしちゃいけない。恋愛ではいつも自分のことよりも相手をいちばんに考えていた。だからあんなクズ男に引っかかってしまった。もう他人に振り回されない。復讐だって同じことがいえる。
せっかくゲームの世界に転生してきたんだ。復讐だけの人生なんてツマらない。異世界ライフを楽しみながらあのバカを心底、後悔させてやればいい。その方法は自分の犯した過ちに気づかせ後悔させること。
まずは魔法を学べることに感謝しなきゃ。元居た世界では絶対に味わえない魔法という未知が自分で操れるのだから。
次の日にいつものように魔力の放出を始めたら、しばらくしてバロアがコントロール室から出てきて私に魔力判定結果が書かれた紙を渡してきた。
【魔力判定結果】
名前:シリカ・ランドール
性別:女
年齢:5
魔力総量:1,092
瞬間出力:315
変換効率:67%
魔力純度:63%
総合判定:C-
「ようやくこれで次に進めるわい」
「はいっ」
バロアもなんだか嬉しそう。私も心からの笑顔をみせた。
次の日から午前中は魔力強化を行い、午後から魔法基礎学Ⅳと魔法史を学び始めた。バロアが教えてくれるわけではなく、魔法による遠隔授業……元居た世界ではオンライン授業のようなカタチで学ぶ。
化粧台の魔法の鏡に魔力を与えると中等部の授業を受けられた。リアルタイムの授業ではなく、録画されたものを視聴するタイプ。なのでわからないところがあったら、授業の進行を停止して手元にある教科書で理解できるまで噛み砕くように覚えた。
父が国立魔法図書館の司書をしているので、家にたくさん魔法書があった。私は3歳になる前から読み耽っていたので、初等部卒業程度の知識は修学していた。その甲斐もあってちょうどいいくらいのレベルに感じる。
「今日から1か月ほど出かけるがシリカはどうする?」
そのまま日課をこなしてもいいし、ついてきても構わないという。行先は地方都市の近郊で新種と思しき未確認の魔獣の目撃情報がいくつか寄せられていて、今のところ人や家畜への被害がないため、生態系を調査しに行くそうだ。
もちろん一緒に行くつもり。だってその街にはあの男がいるはずだから……。
すぐに出かける支度を始め、居住棟の最上階へと急いだ。
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