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6 魔法研究機関
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1週間後、私はバロア・デニエールのいる魔法研究機関〝ジェルダン〟にやってきた。ここで魔法の腕を磨けば「あの男」に出会った時に跡形もなく消し去る魔法を身につけられるはず……。
魔法研究機関のなかは自由に出歩くことはできない。居住棟と研究棟の一部しか私は権限が与えられなかった。エリアごとにスーパーやコンビニの出入り口のような透明な自動ドアがあり、魔力版の指紋……魔紋により個々を識別するために最初に訪れた時に入口で認証手続きを行った。
防音室のように魔力が外に漏れない部屋でひたすら魔力を放出する。
バロア・デニエールはレコーティングスタジオのコントロールルームのような窓一枚隔てた向こうで、魔法で制御されたパソコンのようなもので仕事をしている。
常に全開できるわけではないので、疲れたら部屋にある仮眠用のベッドで少し寝て、回復したら魔力の放出の繰り返し。
朝食は居住棟にある食堂で食べ、その食堂にある弁当を買ってお昼は魔力を放出できる部屋で昼食を済ませる。夕方また居住棟に戻り、食堂で食べて、お風呂に入って就寝する。
これを1週間、1か月……1年と淡々と繰り返した。
「あの……魔法はいつ教えてくださいますか?」
魔力はここへ来る前よりさらに増したのは実感できる。だけど、こんなの家でもある程度ならできる。ある日、我慢できなくなって質問した。
「ふむ、お主にはたしかに才がある。しかしの……」
バロア・デニエールは私の魔紋には邪気が込められていると指摘した。コントロール室にあるプリンターのような魔具で紙を出力してみせてくれた。
【魔力判定結果】
名前:シリカ・ランドール
性別:女
年齢:5
魔力総量:1,075
瞬間出力:97
変換効率:38%
魔力純度:21%
総合判定:E+
「魔力総量は1,000もあれば大人でも恥ずかしくない数値なんじゃが」
問題は魔力純度……魔力は純粋な知的探求心や精神的な強さ、論理的な判断力を求められ、それらが欠けるとどんなに魔力総量が多くても、一流にはなれないどころか魔法を教えることすら危ういと判断しなければならないそうだ。
これはゲームの世界では主人公を通しても習ってなかった。教師陣はこういった数値を元に成績をつけていると教えてくれた。
「まあ、お主の心に闇があるからじゃろう」
清く正しい心でないといけない……というわけではないそうだ。魔法の真理を探究する徒となり、論理的に魔法を覚えることを楽しみ、心の闇など意に介さなくなれば自然と魔力純度は上がり、変換効率や瞬間出力も跳ね上がるのでまず心を鍛えよと言われた。
──つまりあの男を許せってこと?
それはできない。いや、したくない。
そもそもこの異世界に来たのはあの男に復讐するため。どうやって苦しむ顔を見ながら死に至らしめようかと毎日そればかりを考えている。
バロアはそんな私の心の闇を見抜いていた。だから両親を説得した。魔法を習得させ、正しい使い方ができるよう身も心も一流の使い手になるよう育てると申し出たそうだ。
具体的にどうやって自分の復讐に取りつかれた心の闇を乗り越えればいいのか質問したが「それはワシにもわからん」と身も蓋もないことを言われた。
私は悩みを抱えたまま魔力強化に励み、1か月ほどが経った。
✜
「ごきげんよう、小さな魔術師さん」
「はじめまして」
いつもの研究棟の一室ではなく、学校の体育館くらいの広さがある部屋へ連れてこられた。バロアはその部屋で待っていた女性に私を預け、夕方にまた迎えにくると伝えて部屋をあとにした。緑色の長い髪に長い耳……このエブラハイムでは珍しいエルフの女性がニッコリ微笑みかけてきた。
挨拶をすると、さっそく私の心の闇を解消できるかもしれない方法を実践すると告げられた。
部屋の奥にある制御室に入った彼女は、スピーカーのような拡声装置で部屋の真ん中に立つよう指示されたので、言われたとおりにする。
魔法研究機関のなかは自由に出歩くことはできない。居住棟と研究棟の一部しか私は権限が与えられなかった。エリアごとにスーパーやコンビニの出入り口のような透明な自動ドアがあり、魔力版の指紋……魔紋により個々を識別するために最初に訪れた時に入口で認証手続きを行った。
防音室のように魔力が外に漏れない部屋でひたすら魔力を放出する。
バロア・デニエールはレコーティングスタジオのコントロールルームのような窓一枚隔てた向こうで、魔法で制御されたパソコンのようなもので仕事をしている。
常に全開できるわけではないので、疲れたら部屋にある仮眠用のベッドで少し寝て、回復したら魔力の放出の繰り返し。
朝食は居住棟にある食堂で食べ、その食堂にある弁当を買ってお昼は魔力を放出できる部屋で昼食を済ませる。夕方また居住棟に戻り、食堂で食べて、お風呂に入って就寝する。
これを1週間、1か月……1年と淡々と繰り返した。
「あの……魔法はいつ教えてくださいますか?」
魔力はここへ来る前よりさらに増したのは実感できる。だけど、こんなの家でもある程度ならできる。ある日、我慢できなくなって質問した。
「ふむ、お主にはたしかに才がある。しかしの……」
バロア・デニエールは私の魔紋には邪気が込められていると指摘した。コントロール室にあるプリンターのような魔具で紙を出力してみせてくれた。
【魔力判定結果】
名前:シリカ・ランドール
性別:女
年齢:5
魔力総量:1,075
瞬間出力:97
変換効率:38%
魔力純度:21%
総合判定:E+
「魔力総量は1,000もあれば大人でも恥ずかしくない数値なんじゃが」
問題は魔力純度……魔力は純粋な知的探求心や精神的な強さ、論理的な判断力を求められ、それらが欠けるとどんなに魔力総量が多くても、一流にはなれないどころか魔法を教えることすら危ういと判断しなければならないそうだ。
これはゲームの世界では主人公を通しても習ってなかった。教師陣はこういった数値を元に成績をつけていると教えてくれた。
「まあ、お主の心に闇があるからじゃろう」
清く正しい心でないといけない……というわけではないそうだ。魔法の真理を探究する徒となり、論理的に魔法を覚えることを楽しみ、心の闇など意に介さなくなれば自然と魔力純度は上がり、変換効率や瞬間出力も跳ね上がるのでまず心を鍛えよと言われた。
──つまりあの男を許せってこと?
それはできない。いや、したくない。
そもそもこの異世界に来たのはあの男に復讐するため。どうやって苦しむ顔を見ながら死に至らしめようかと毎日そればかりを考えている。
バロアはそんな私の心の闇を見抜いていた。だから両親を説得した。魔法を習得させ、正しい使い方ができるよう身も心も一流の使い手になるよう育てると申し出たそうだ。
具体的にどうやって自分の復讐に取りつかれた心の闇を乗り越えればいいのか質問したが「それはワシにもわからん」と身も蓋もないことを言われた。
私は悩みを抱えたまま魔力強化に励み、1か月ほどが経った。
✜
「ごきげんよう、小さな魔術師さん」
「はじめまして」
いつもの研究棟の一室ではなく、学校の体育館くらいの広さがある部屋へ連れてこられた。バロアはその部屋で待っていた女性に私を預け、夕方にまた迎えにくると伝えて部屋をあとにした。緑色の長い髪に長い耳……このエブラハイムでは珍しいエルフの女性がニッコリ微笑みかけてきた。
挨拶をすると、さっそく私の心の闇を解消できるかもしれない方法を実践すると告げられた。
部屋の奥にある制御室に入った彼女は、スピーカーのような拡声装置で部屋の真ん中に立つよう指示されたので、言われたとおりにする。
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