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長編
第3話 サンキューベル
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「瀬下はどうした?」
「電話してみます」
ファストフードでの休憩を終え、出発時間になっても瀬下がレンタカーに戻ってこない。
御堂係長も気にしているので、電話をかけてみた。
(ただいま電話に出ることはできません……)
留守電に変わる前に電話を切り、SMSによる電話番号への直接メッセージと課内用LIMEグループを使って連絡を残した。
「ボクちょっと探してきますね」
「当真くんありがとう。俺も手分けして探すよ」
当真くんが、店内。俺はトイレの方に行ってみる。
するとどうだろう。
トイレの前で観光客と思われる女の子ふたりとお喋りしている瀬下がいた。
「瀬下、時間だぞ」
「ほらね」
「ホントにイケメンだぁ~」
おい……まさかナンパしてるんじゃ?
「じゃあ、今夜ホテルで会うっす」
「はぁ~い、じゃあね~」
車に戻りながら、聞くと今日泊まる予定のホテルに彼女たちも泊まるらしく、昨日からSNSで遊べるひとがいないか探していたそうだ。
遊ぶならひとりで遊んでくれ。
車に戻ると、御堂係長へトイレの中にいたと報告する瀬下を言及することなく放置した。
今度は当真くんが戻ってこない。
瀬下の時と同様に電話、SMS、LIMEを使うが反応がないので、瀬下は車の中で待っておくように言って、すばやく店内を探したらすぐに見つかった。
当真くん、店の出入り口のところでモジモジとしている。
「当真くん、なんかあった?」
「あ、先輩、これ……」
ん……これは?
商品やサービスに満足したら、このベルを鳴らしてくださいって書いてある。
「さっき、男の子が鳴らしていて……」
うん、たしかにさっきカランカラン鳴っていたが、このベルの音だったんだ。
当真くんが目をやや下にして、明らかに迷っている。
「別におとなが鳴らしてもいいんじゃないかな?」
「ホントですか♪」
当真くんのパッと咲いた笑顔に『ゾクッ』としながらも、俺も笑顔を見せることによって、当真くんの背中を押す。
『カランカラ~ン』
「「「ありがとうございました」」」
おお、当真くんが鐘を鳴らしたら、店員さんが皆、お礼を言ってきたのでちょっとビックリした。
こんな風にお店側とお客の間で、感謝の気持ちを伝えあうのって、すごく温かさを感じて、いいと思う。
当真くんは頬を染めながら、俺の袖を引き、足早に店の外に出た。
なんか、鐘を鳴らしたくなるところとか、鳴らして恥ずかしがっているところとか見ていると、なんだかホッコリしてしまう。
「大丈夫?」
「ええ、瀬下のせいで、入念に店内を探してくれてました」
御堂係長が、めずらしく心配そうに聞いてきたので、すべて瀬下の責任にして、やり過す。ぶーぶーと文句を言っているが、ホントに瀬下のせいだから、知らないフリをする。
ちょっとしたアクシデントを終え、レンタカーで沖縄本島を北上し、1時間もかからないくらいで次の目的地に到着する。
美浜アメリカンビレッジ。
沖縄の異国情緒あふれるカラフルな建物が目を引くリゾートタウンで、平日の昼だが、観光客がたくさん溢れかえっている。
ショッピングはもちろん、海外の食事も色々と提供されている。ウォールアートやオブジェに溢れるユニークな空間はまるで大型テーマパーク内にいるかと感じてしまう。
そして、なにより魅力的なのは、海岸に面したカフェ店……西側に向いているので、夕陽が沈む時にこの場所に訪れたらきっと感動するに違いない。
ここでも、複数の店を御堂係長と瀬下。俺と当真くんと二手に分かれて効率よく営業活動を終わらせる。
俺と当真くんが割り当てられたお店を回り終え、集合時間までまだ時間があるので、アメリカンビレッジ内を軽く見ることにした。
「先輩、この中に入っても大丈夫ですか?」
当真くんが指差したのは、カラフルな色でデザインされた雑貨店だった。
当真くんが店内を見て回っている間にお店のひとに珍しい柄なので、訊ねてみると『紅型』という沖縄に昔から伝わる染物技法のひとつで、沖縄ではとてもメジャーなものだそうだ。その紅型をこうして、現代風にアレンジすることによって、財布やバッグ、傘などに絵柄として、デザインされたものがお店に並んでいて、女性や子供に人気があるそうだ。
「先輩、これどうですか?」
当真くんが、俺にみせてきたのは、カラフルな小さな袋。
「それはマース袋ですね」
マース袋とは、マース=塩を入れるための専用の袋だそうだ。
魔除け用ってことか。
当真くんに「いいね」と答えると嬉しそうに水色と桃色のマース袋を買って、「かわいいですから」と言って、水色の方を俺にくれた。
▽▲▽▲▽
「ありがとうございました~」
お店を出ていった美男美女のカップルを見送った店主は「はぁ~」とため息をついた。
「あのマース袋のペアセット、恋愛成就のためのものだから、うらやましいさぁ~」
『ゾクッ』
「先輩、どうしました?」
「ん、いや、今なんかゾクっとしちゃって」
「電話してみます」
ファストフードでの休憩を終え、出発時間になっても瀬下がレンタカーに戻ってこない。
御堂係長も気にしているので、電話をかけてみた。
(ただいま電話に出ることはできません……)
留守電に変わる前に電話を切り、SMSによる電話番号への直接メッセージと課内用LIMEグループを使って連絡を残した。
「ボクちょっと探してきますね」
「当真くんありがとう。俺も手分けして探すよ」
当真くんが、店内。俺はトイレの方に行ってみる。
するとどうだろう。
トイレの前で観光客と思われる女の子ふたりとお喋りしている瀬下がいた。
「瀬下、時間だぞ」
「ほらね」
「ホントにイケメンだぁ~」
おい……まさかナンパしてるんじゃ?
「じゃあ、今夜ホテルで会うっす」
「はぁ~い、じゃあね~」
車に戻りながら、聞くと今日泊まる予定のホテルに彼女たちも泊まるらしく、昨日からSNSで遊べるひとがいないか探していたそうだ。
遊ぶならひとりで遊んでくれ。
車に戻ると、御堂係長へトイレの中にいたと報告する瀬下を言及することなく放置した。
今度は当真くんが戻ってこない。
瀬下の時と同様に電話、SMS、LIMEを使うが反応がないので、瀬下は車の中で待っておくように言って、すばやく店内を探したらすぐに見つかった。
当真くん、店の出入り口のところでモジモジとしている。
「当真くん、なんかあった?」
「あ、先輩、これ……」
ん……これは?
商品やサービスに満足したら、このベルを鳴らしてくださいって書いてある。
「さっき、男の子が鳴らしていて……」
うん、たしかにさっきカランカラン鳴っていたが、このベルの音だったんだ。
当真くんが目をやや下にして、明らかに迷っている。
「別におとなが鳴らしてもいいんじゃないかな?」
「ホントですか♪」
当真くんのパッと咲いた笑顔に『ゾクッ』としながらも、俺も笑顔を見せることによって、当真くんの背中を押す。
『カランカラ~ン』
「「「ありがとうございました」」」
おお、当真くんが鐘を鳴らしたら、店員さんが皆、お礼を言ってきたのでちょっとビックリした。
こんな風にお店側とお客の間で、感謝の気持ちを伝えあうのって、すごく温かさを感じて、いいと思う。
当真くんは頬を染めながら、俺の袖を引き、足早に店の外に出た。
なんか、鐘を鳴らしたくなるところとか、鳴らして恥ずかしがっているところとか見ていると、なんだかホッコリしてしまう。
「大丈夫?」
「ええ、瀬下のせいで、入念に店内を探してくれてました」
御堂係長が、めずらしく心配そうに聞いてきたので、すべて瀬下の責任にして、やり過す。ぶーぶーと文句を言っているが、ホントに瀬下のせいだから、知らないフリをする。
ちょっとしたアクシデントを終え、レンタカーで沖縄本島を北上し、1時間もかからないくらいで次の目的地に到着する。
美浜アメリカンビレッジ。
沖縄の異国情緒あふれるカラフルな建物が目を引くリゾートタウンで、平日の昼だが、観光客がたくさん溢れかえっている。
ショッピングはもちろん、海外の食事も色々と提供されている。ウォールアートやオブジェに溢れるユニークな空間はまるで大型テーマパーク内にいるかと感じてしまう。
そして、なにより魅力的なのは、海岸に面したカフェ店……西側に向いているので、夕陽が沈む時にこの場所に訪れたらきっと感動するに違いない。
ここでも、複数の店を御堂係長と瀬下。俺と当真くんと二手に分かれて効率よく営業活動を終わらせる。
俺と当真くんが割り当てられたお店を回り終え、集合時間までまだ時間があるので、アメリカンビレッジ内を軽く見ることにした。
「先輩、この中に入っても大丈夫ですか?」
当真くんが指差したのは、カラフルな色でデザインされた雑貨店だった。
当真くんが店内を見て回っている間にお店のひとに珍しい柄なので、訊ねてみると『紅型』という沖縄に昔から伝わる染物技法のひとつで、沖縄ではとてもメジャーなものだそうだ。その紅型をこうして、現代風にアレンジすることによって、財布やバッグ、傘などに絵柄として、デザインされたものがお店に並んでいて、女性や子供に人気があるそうだ。
「先輩、これどうですか?」
当真くんが、俺にみせてきたのは、カラフルな小さな袋。
「それはマース袋ですね」
マース袋とは、マース=塩を入れるための専用の袋だそうだ。
魔除け用ってことか。
当真くんに「いいね」と答えると嬉しそうに水色と桃色のマース袋を買って、「かわいいですから」と言って、水色の方を俺にくれた。
▽▲▽▲▽
「ありがとうございました~」
お店を出ていった美男美女のカップルを見送った店主は「はぁ~」とため息をついた。
「あのマース袋のペアセット、恋愛成就のためのものだから、うらやましいさぁ~」
『ゾクッ』
「先輩、どうしました?」
「ん、いや、今なんかゾクっとしちゃって」
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