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短編形式

【57】和やかなんだが?

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 我が営業5課は、営業1~4課と比べて業績は並といったところだ。
 自慢ではないが、俺は営業部のなかでも月間成績はだいたいトップで、御堂係長も5位圏内から外れたことはない。

 では、なぜ並かというと、理由のひとつに瀬下と当真くんという今年入社したばかりの新人がふたりもいるということだ。もちろんふたりとも頑張って仕事も覚えてきているが、やはり新人だけあって、どうしてもベテランの社員にはまだ敵わない。

 そしてもうひとつの要因は……。

「熊田課長、資料を置いておきますので、時間がある時に目を通しておいてください」
「ほっほっほっほっほっ」

 営業5課長、熊田寿くまだひさし……我が社の窓際族筆頭で、もともと営業部は4課しかなかったのに5課に増えたのはこの課長によるものだと社内でもっぱら噂されている。

 いつもニコニコしているが、仕事がのんびりで、見てると歯がゆくなるので、あまり気にしないように努めている。

「当真ちゃん、夕方の天気はどうなりますか?」
「えーっと、スマホの天気アプリでは、17時あたりから雨雲がかかるそうです~。折り畳み傘持って帰った方がいいみたいですよ課長~♪」
「ほっほっほっほっありがとう当真ちゃん」
「いいえ~♪」

 すごく和気あいあいとした空気。当真くんは自分の父でもみるかのような優しい目をして笑い合っている。

『ゾクッ』
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