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人族イーアス編
Chapter 125 超回復 VS 超焦熱
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『ガガガガガッ!』─互いに目にも見えないほどの速さで、片手剣と騎兵槍が交錯し、それぞれ相手に傷を与えていく。
伝説三英雄の白騎士と互角に渡り合えるものが、この世にいるとは正直驚きだ……。
ボスがいるこの場所に到着するまで、特にこれといった作戦も立てず、いきなりザ・シスコが突撃し、近接戦を演じている。
チャイチャイは、機会が訪れるのを待ちながら、その溜め時間の長さ故、滅多に使えない強力な必殺のスキルを、引き金を引けばいつでも放てるよう、想力を多めに注ぎ込み発動の待機状態に留め、ザ・シスコと無明のひとり「フェクダ」とが離れる瞬間を見極めようとしている。
程なくして、絶好の機会が訪れる……。
フェクダが少し押され始めたので、それを嫌いザ・シスコから距離を取ろうと、左手から発炎し、視界を遮ることによって後方に退がった。
「【光粒灑掃波】」──迸る光の奔流が「無明フェクダ」に迫る。
チャイチャイに完全にタイミングを盗まれたのか、光の奔流に真正面から直撃し、呑み込まれ大爆発が起きる。ザ・シスコもこの好機を見逃さない──追い討ちとして、騎兵槍を大きく後ろに引き、勢いをつけて一気に繰り出す。
「【会心撃】」──槍の穂先の部分に風を纏わせ高速回転し、捻じりながらフェクダを刺突する。二人の必殺スキルを受けて、フェクダは黒い煙となって空へ登っていった。
その後、五本の光柱が上がるものの、狼の面のもののしたとのことだったが徒労に終わったと思われたが、無明への直接的作用の他、無明の幹部たちが施した「祈り」の効果を低減させる効果も備えているとのことだった。なるほど、幾重にも策を用意しているのか……。
ザ・シスコは、ザ・ナートから『直接』指示を受けたようで、次の目標を、自分達に指し示した。
★
未開の地のほぼ中央、黒い漏斗雲の真下……そこに無名の一人が「祈り」を完成させた後、僕らを待ち構えていた。熊のような大きな体格の男、トゥリー連邦長の屋敷でヴァンの挑発に一番、反応を示した男だ……恐らく、一番「戦闘向き」で且つ一番「直上型」だろう……。
「やっと来たか……ぐふふっ、お前はあの時の小僧ではないか……これも「主」のお導きか……貴様を直接、俺の手では葬れるとはな……簡単にくたばれると思うなよ?」
「うるせえな、おっさん……、名前も名乗らないでペチャクチャと面倒だからお前の名前は『おっさん』でいいよな?」
「……お前、本当に舐めているな? 俺の名は『メラク』貴様らを葬る男の名だ!」
「『貴様らを葬る男の名だ!』……ダサッ、おえっ、美的感覚ゼロだな?」
「おしゃべりは終わりだ……」
そう、ヴァンとそもそも『言葉で戦う』など、もってのほかで、怒りに感情が揺さぶられ、冷静な思考ができなくなる……相手にとっては実にイヤらしい相手に写っていることだろう。
メラクは地面に降りたつと、真っ先に生意気な小僧に飛び掛かる。
腕に身に着けた拳具を生意気な小僧に叩き込もうとすると、小僧を庇うように小娘が立ちはだかる。
「どけ!? 邪魔だ!」
『ドガァ!』──メラクは、拳具で小娘を横殴りに吹き飛ばそうとしたが、受け止められた挙句、逆に殴り飛ばされた。
「──ッ!」
吹き飛ばされたが、メラクはすぐに態勢を立て直し、もう一度、飛びつこうとすると、左右から剣を持った二人が、こちらに距離を詰めてくる。
そのうちの一人は、昔、会ったことがある、あの「冒険者の若者」だった……。だが、こいつらは後で料理するつもりだ……。スピードにおいて、この二人は俺に追いつけない。メラクは横に、高速で移動して手前の二人をかわし、もう一度あの生意気な小僧と、その前に立ちはだかる小娘に突撃しようとした……が。
小僧が大量に分裂している⁉ なんだこれは?
こちらに向かってくる大量の小僧を消し飛ばしながら本体を、探している間に、後ろの方で『一人だけ』後方にさがっていく小僧を見つけた!
「そこだ小僧!?」
『バフンッ』──くっ、コイツも囮の分身か!?
「『そこだ小僧!?』だって、カッコ悪っ! お返しに『これ』でもどうぞ!」
後ろを振り返ると、小僧達の群れの後方で六体の小僧が二人一組になってスキルを練っていた。
「【ミッシガルの卵】」──高密度のエネルギー球を三発もらい、後方にあった壁に激突する。
「ぐはっ」
メラクは、衝撃で身体が痺れ、すぐに動けない……。
「【流星】」──いつの間にか空に跳び上がっていた男が『赤い流星』となってメラクに突撃する。大爆発が起き、後方にあった岩山が粉々に破壊されて周囲を平地と化した。
「があああぁ」
メラクは雄叫びを挙げながら、己を潰していた岩塊を吹き飛ばし立ち上がる。立ち上がった真横に少年が、剣を水平にしてスキルの準備を終えていた。「【星環】」──少年の横薙ぎの斬撃が「飛んで」きて更に爆発が起きる。爆風が収まると、メラクの拳具は壊れ片目を失い左足を庇いながら、かろうじて立っている。
「はあ、はあ……くそっ」
超高火力のスキルに曝され続け、メラクの体力も戦意も失ったのかと思ったがそうでは無かった。「【輪廻蛇】」──メラクの身体が黒い煙に包まれ、傷がみるみる塞がっていく。
「おお怖っ!? ロレウ!」
ヴァンに名前を呼ばれたロレウは既に〝舞〟を始めており、その足取りで五芒の星形に光の点を落としていく……。メラクの周囲に複数の円陣が浮かび上がり、固定される。
「【ピニモの紅花園】」──天使エッダの担当種族を贔屓したことによる異常気味の英雄スキル、立体積層想円イメージサークル内の超高熱の炎による焼却が始まる。
メラクの超回復とロレウの超焦熱……互いのスキルが鬩ぎ合った後、決着する。
ロレウのスキルの方が少しだけ勝ったようで一気に天秤が傾き、メラクを焼き尽くし、メラクの絶叫が響き渡った。
「相変わらず『エゲツナイ』スキルだこと」
自分で頼んでおいて、ヴァンはロレウのスキルにケチをつけている。
「何とかここは終わったね……次の指示待ちかな?」
アレンがそう話すとタイミングを見計らっていたかのようにザ・ナートから念話が入った。
(マイネちゃん達がやられたー、皆、すぐ迎えを寄越すから準備しておいて!?)
マイネ組……弓聖ミト、不死テラノートの三人でドォナント領に向かった筈だが……。不死テラノートの方は、全く面識も何も無いが、弓聖ミトと言えばマカロニ君の叔父にあたる七雄の一人で現プライアンクリフの代表……。
少し待っていると【空間転移】でお面を被った者の一人が迎えに来た。
伝説三英雄の白騎士と互角に渡り合えるものが、この世にいるとは正直驚きだ……。
ボスがいるこの場所に到着するまで、特にこれといった作戦も立てず、いきなりザ・シスコが突撃し、近接戦を演じている。
チャイチャイは、機会が訪れるのを待ちながら、その溜め時間の長さ故、滅多に使えない強力な必殺のスキルを、引き金を引けばいつでも放てるよう、想力を多めに注ぎ込み発動の待機状態に留め、ザ・シスコと無明のひとり「フェクダ」とが離れる瞬間を見極めようとしている。
程なくして、絶好の機会が訪れる……。
フェクダが少し押され始めたので、それを嫌いザ・シスコから距離を取ろうと、左手から発炎し、視界を遮ることによって後方に退がった。
「【光粒灑掃波】」──迸る光の奔流が「無明フェクダ」に迫る。
チャイチャイに完全にタイミングを盗まれたのか、光の奔流に真正面から直撃し、呑み込まれ大爆発が起きる。ザ・シスコもこの好機を見逃さない──追い討ちとして、騎兵槍を大きく後ろに引き、勢いをつけて一気に繰り出す。
「【会心撃】」──槍の穂先の部分に風を纏わせ高速回転し、捻じりながらフェクダを刺突する。二人の必殺スキルを受けて、フェクダは黒い煙となって空へ登っていった。
その後、五本の光柱が上がるものの、狼の面のもののしたとのことだったが徒労に終わったと思われたが、無明への直接的作用の他、無明の幹部たちが施した「祈り」の効果を低減させる効果も備えているとのことだった。なるほど、幾重にも策を用意しているのか……。
ザ・シスコは、ザ・ナートから『直接』指示を受けたようで、次の目標を、自分達に指し示した。
★
未開の地のほぼ中央、黒い漏斗雲の真下……そこに無名の一人が「祈り」を完成させた後、僕らを待ち構えていた。熊のような大きな体格の男、トゥリー連邦長の屋敷でヴァンの挑発に一番、反応を示した男だ……恐らく、一番「戦闘向き」で且つ一番「直上型」だろう……。
「やっと来たか……ぐふふっ、お前はあの時の小僧ではないか……これも「主」のお導きか……貴様を直接、俺の手では葬れるとはな……簡単にくたばれると思うなよ?」
「うるせえな、おっさん……、名前も名乗らないでペチャクチャと面倒だからお前の名前は『おっさん』でいいよな?」
「……お前、本当に舐めているな? 俺の名は『メラク』貴様らを葬る男の名だ!」
「『貴様らを葬る男の名だ!』……ダサッ、おえっ、美的感覚ゼロだな?」
「おしゃべりは終わりだ……」
そう、ヴァンとそもそも『言葉で戦う』など、もってのほかで、怒りに感情が揺さぶられ、冷静な思考ができなくなる……相手にとっては実にイヤらしい相手に写っていることだろう。
メラクは地面に降りたつと、真っ先に生意気な小僧に飛び掛かる。
腕に身に着けた拳具を生意気な小僧に叩き込もうとすると、小僧を庇うように小娘が立ちはだかる。
「どけ!? 邪魔だ!」
『ドガァ!』──メラクは、拳具で小娘を横殴りに吹き飛ばそうとしたが、受け止められた挙句、逆に殴り飛ばされた。
「──ッ!」
吹き飛ばされたが、メラクはすぐに態勢を立て直し、もう一度、飛びつこうとすると、左右から剣を持った二人が、こちらに距離を詰めてくる。
そのうちの一人は、昔、会ったことがある、あの「冒険者の若者」だった……。だが、こいつらは後で料理するつもりだ……。スピードにおいて、この二人は俺に追いつけない。メラクは横に、高速で移動して手前の二人をかわし、もう一度あの生意気な小僧と、その前に立ちはだかる小娘に突撃しようとした……が。
小僧が大量に分裂している⁉ なんだこれは?
こちらに向かってくる大量の小僧を消し飛ばしながら本体を、探している間に、後ろの方で『一人だけ』後方にさがっていく小僧を見つけた!
「そこだ小僧!?」
『バフンッ』──くっ、コイツも囮の分身か!?
「『そこだ小僧!?』だって、カッコ悪っ! お返しに『これ』でもどうぞ!」
後ろを振り返ると、小僧達の群れの後方で六体の小僧が二人一組になってスキルを練っていた。
「【ミッシガルの卵】」──高密度のエネルギー球を三発もらい、後方にあった壁に激突する。
「ぐはっ」
メラクは、衝撃で身体が痺れ、すぐに動けない……。
「【流星】」──いつの間にか空に跳び上がっていた男が『赤い流星』となってメラクに突撃する。大爆発が起き、後方にあった岩山が粉々に破壊されて周囲を平地と化した。
「があああぁ」
メラクは雄叫びを挙げながら、己を潰していた岩塊を吹き飛ばし立ち上がる。立ち上がった真横に少年が、剣を水平にしてスキルの準備を終えていた。「【星環】」──少年の横薙ぎの斬撃が「飛んで」きて更に爆発が起きる。爆風が収まると、メラクの拳具は壊れ片目を失い左足を庇いながら、かろうじて立っている。
「はあ、はあ……くそっ」
超高火力のスキルに曝され続け、メラクの体力も戦意も失ったのかと思ったがそうでは無かった。「【輪廻蛇】」──メラクの身体が黒い煙に包まれ、傷がみるみる塞がっていく。
「おお怖っ!? ロレウ!」
ヴァンに名前を呼ばれたロレウは既に〝舞〟を始めており、その足取りで五芒の星形に光の点を落としていく……。メラクの周囲に複数の円陣が浮かび上がり、固定される。
「【ピニモの紅花園】」──天使エッダの担当種族を贔屓したことによる異常気味の英雄スキル、立体積層想円イメージサークル内の超高熱の炎による焼却が始まる。
メラクの超回復とロレウの超焦熱……互いのスキルが鬩ぎ合った後、決着する。
ロレウのスキルの方が少しだけ勝ったようで一気に天秤が傾き、メラクを焼き尽くし、メラクの絶叫が響き渡った。
「相変わらず『エゲツナイ』スキルだこと」
自分で頼んでおいて、ヴァンはロレウのスキルにケチをつけている。
「何とかここは終わったね……次の指示待ちかな?」
アレンがそう話すとタイミングを見計らっていたかのようにザ・ナートから念話が入った。
(マイネちゃん達がやられたー、皆、すぐ迎えを寄越すから準備しておいて!?)
マイネ組……弓聖ミト、不死テラノートの三人でドォナント領に向かった筈だが……。不死テラノートの方は、全く面識も何も無いが、弓聖ミトと言えばマカロニ君の叔父にあたる七雄の一人で現プライアンクリフの代表……。
少し待っていると【空間転移】でお面を被った者の一人が迎えに来た。
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