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人族イーアス編
Chapter 120 双子の作戦
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鬼人族が治める西大陸のナラクにおいて、唯一の島であるレキオ領はシュンテイの故郷である。ザ・ナートが金剛ジン、蛍火カルノア、獅子の面とともに空間転移で拾い、四人で村の広場に一緒に到着した。
レキオ領はのどかな島で、三つの村があるが、自分の生まれ育った島の北側の村に到着すると、人がたくさんいて、すごく驚いた。
「シュンテイ様、よくぞご無事で!」
若頭補佐のトルネとブーテンが自分を見つけて駆け寄ってきた。なぜこんなに、人がたくさんいるのか聞くと、島の南側から中央にかけて、あの空の黒い雲から黒い雨の様に大量の魔物降り注ぎ、身の危険を感じて、ここに避難してきた人達で、魔物は近づくと襲ってくるが、近づきさえしなければ大丈夫とのことだった。
「若様の隣にいらっしゃるお方はジン様! 我々を助けに来られたのですか?」
村人の一人が、金剛ジンに気が付いて、声をあげると周囲にいた人たちがぞろぞろと集まってきた。
「魔人族の黒尾といえば、隣におられるのは、もしかして、蛍火カルノア様では?」
「本当だ、何とお美しい……」
一層、周囲がざわめき始め、人だかりがさらにどんどん増えていく。
「シュンテイ、帰ったか」
人だかりが割れて、シュンテイの父親がこちらに向かってくる。シュンテイの父親は左側の片足がなく、杖を支えにしていて、父親に金剛ジンが声を掛けた。
「おう、久しぶりだな」
「お主もなジン……、ところでこの騒ぎはいったいどうしたのだ?」
地元である自分が、他の二人に代わって、父親に説明を行う。
「……なるほど、その『無明』という連中を討ち取らないと、あの魔物達がいなくならないのか……、我らも、微力ながら、助太刀致そうぞ!」
「いや、いい……、もうこの戦いは次元が違っている……、お前たちがいると逆に足枷になりかねん」
金剛ジンは、はっきりとシュンテイの父親に申し出を断わった。
「そうか、わかった、止むをえん……、シュンテイ、二人を助けてやってくれ」
「おいおい、シュンテイはもう、俺らと『同等』か『上』だぜ? 自分の倅を見くびってもらったら困るな」
シュンテイの父は、信じられんという顔でシュンテイを見ているが、蛍火カルノアが更に口を開いた。
「私の息子も彼と一緒で今、違う場所に向かっているわ……、貴方の息子もまたこの困難に立ち向かえる力を手に入れた……、これから『時代』は新しく台頭してきた、この子達が動かしていくの」
話を終えて、島の南側に向かう。さほど大きな島ではないので歩いて一時間もしないうちに、黒い魔物が縄張りにしているエリアに踏み入って行く。あれ? 獅子の面のものがいつの間にかいなくなっている。こちらの予想通り、黒い魔物は通常の魔物より格段に強く、激しい抵抗を見せるが、七雄が二人も揃っている。苦戦する道理はない……。
黒犬妖魔を蹴散らしていると、周囲からどんどん、魔物が増えていく。蛍火カルノアによる広域範囲スキル【焔雨】で周辺の魔物を焼き払うと周囲の魔物は一旦、姿を消すも、遠目でまたぞろぞろとこちらに向かって来ている。
これは、思ったより面倒だ。長期戦を覚悟しないと……。幸い、回復薬はいつものようにたくさん、ザ・ナートからもらっている二十四時間ずっと戦うこともできる。あと二日……、間に合うか?
★
ミズナとトルケル、猿のお面の人物はトゥーリー連邦から飛行船で移動し、マルボロ国アーク島にある首都「テレロ」に到着した時点では、テレロは大恐慌に陥っていた。飛行船を城に方に繋ぎ止め、急ぎ現場へ急行しようとするものの、黒い雲から降ってきた魔物が、首都テレロを直撃した様で、街から脱出しようとしている市民にぶつかり中々、魔物の元に辿りつけない。
「ミズナ……、上から行くぞ」
そう言うと、トルケルは建物の上に跳び上がり、ミズナもそれに続こうとした時にいつの間にか猿のお面をした者の姿が、いなくなっていることに気付いた。
別行動? 彼らお面の者たちの行動はよくわからないけど、私達だけでなんとかしないと……。建物の屋根伝いに飛び移っていくと、魔物達が暴れている先頭の部分に辿りついた。
海人族の戦士たちが魔物と戦っているが相手は強化種……、市民を避難させるための時間稼ぎで抵抗しているが、それでも随分と押され、後退しながら必死に耐えている。
「クウちゃん」
クウ!【雷撃】
建物の屋根から跳躍し、空中でクー・シーの雷撃により、黒い魔物……パックマントードが十数体、感電するものの倒れないが、動きは断然、鈍くなった。
トルケルに感電で動きの鈍ったパックマントードを任せ、その少し前に着地し、自らはその先の人蛙をもの凄い速さで葬っていく。
「【鉄砲魚:十六連】」
【渦槍】による連続突きで十六発の渦巻く強化された水弾が人蛙の群れに着弾し、吹き飛ばす。
先の方が拓けたので、そのまま前に進むと、三つの埠頭の内の中央ふ頭の上層に出た。
『カッ、ドォォォ!』──。隣の通りが爆発し、白煙の中から銀閃ジオと彼の傍付きが通路から顔を出し、こちらに気付く。
「おっ、海上商港の最強コンビ! 俺は銀閃ジオ……こうやって話すのは初めてだな」
「はい、お初にお前にかかります」
「ザ・ナート様から聞いてたぜ、最強&最恐の助っ人をこっちに寄こすってな?」
「よろしくお願いします。ジオ様、ところで今、どういった状況でしょうか? とりあえず魔物のいるところに向かって来たのですが……」
銀閃ジオがミズナの質問に答える。……黒い雲から『魔物が降って』きたのは、半日ほど前だがその時は海の方に降ったが、今しがた、埠頭を巻き込んで『再度』魔物が降ったらしい。
「じゃあ、あの埠頭の先端にいる野郎をぶっ飛ばすか?」
しかし、そう簡単にはいかなさそうだ、前方の埠頭側のみならず、左右からも次々と魔物がこちらに押し寄せてきている。
「とりあえず周囲を片付けからとしようか……」
銀閃ジオは、足をぐるぐる廻して、戦闘態勢をとった。
(おい、ラック)
(なんだ、ダミュー)
(生の可愛い子ちゃんだ……)
(ああ、生の番犬も横にいるがな……)
(これはアレか? 突撃オーケーなのか?)
(ああ、お前が番犬に突撃されて人生終了でもいいならな……)
(俺は、決めた! 男になる)
(ほう……今まで女だったのか?)
(そうじゃない! この戦いで逆に俺が活躍して惚れさせる)
(!? ずるいぞ、じゃあ俺も頑張る)
(あっ、ヤバい番犬がさっそく俺たちを嗅ぎつけたぞ!)
(目を合わせるな!? 嚙み殺されるぞ! ヤツはスルーするんだ!)
(ああ、わかったぜ兄弟)
(よし、じゃあやるぞ!? 作戦『あの娘の心は俺のもの』)
レキオ領はのどかな島で、三つの村があるが、自分の生まれ育った島の北側の村に到着すると、人がたくさんいて、すごく驚いた。
「シュンテイ様、よくぞご無事で!」
若頭補佐のトルネとブーテンが自分を見つけて駆け寄ってきた。なぜこんなに、人がたくさんいるのか聞くと、島の南側から中央にかけて、あの空の黒い雲から黒い雨の様に大量の魔物降り注ぎ、身の危険を感じて、ここに避難してきた人達で、魔物は近づくと襲ってくるが、近づきさえしなければ大丈夫とのことだった。
「若様の隣にいらっしゃるお方はジン様! 我々を助けに来られたのですか?」
村人の一人が、金剛ジンに気が付いて、声をあげると周囲にいた人たちがぞろぞろと集まってきた。
「魔人族の黒尾といえば、隣におられるのは、もしかして、蛍火カルノア様では?」
「本当だ、何とお美しい……」
一層、周囲がざわめき始め、人だかりがさらにどんどん増えていく。
「シュンテイ、帰ったか」
人だかりが割れて、シュンテイの父親がこちらに向かってくる。シュンテイの父親は左側の片足がなく、杖を支えにしていて、父親に金剛ジンが声を掛けた。
「おう、久しぶりだな」
「お主もなジン……、ところでこの騒ぎはいったいどうしたのだ?」
地元である自分が、他の二人に代わって、父親に説明を行う。
「……なるほど、その『無明』という連中を討ち取らないと、あの魔物達がいなくならないのか……、我らも、微力ながら、助太刀致そうぞ!」
「いや、いい……、もうこの戦いは次元が違っている……、お前たちがいると逆に足枷になりかねん」
金剛ジンは、はっきりとシュンテイの父親に申し出を断わった。
「そうか、わかった、止むをえん……、シュンテイ、二人を助けてやってくれ」
「おいおい、シュンテイはもう、俺らと『同等』か『上』だぜ? 自分の倅を見くびってもらったら困るな」
シュンテイの父は、信じられんという顔でシュンテイを見ているが、蛍火カルノアが更に口を開いた。
「私の息子も彼と一緒で今、違う場所に向かっているわ……、貴方の息子もまたこの困難に立ち向かえる力を手に入れた……、これから『時代』は新しく台頭してきた、この子達が動かしていくの」
話を終えて、島の南側に向かう。さほど大きな島ではないので歩いて一時間もしないうちに、黒い魔物が縄張りにしているエリアに踏み入って行く。あれ? 獅子の面のものがいつの間にかいなくなっている。こちらの予想通り、黒い魔物は通常の魔物より格段に強く、激しい抵抗を見せるが、七雄が二人も揃っている。苦戦する道理はない……。
黒犬妖魔を蹴散らしていると、周囲からどんどん、魔物が増えていく。蛍火カルノアによる広域範囲スキル【焔雨】で周辺の魔物を焼き払うと周囲の魔物は一旦、姿を消すも、遠目でまたぞろぞろとこちらに向かって来ている。
これは、思ったより面倒だ。長期戦を覚悟しないと……。幸い、回復薬はいつものようにたくさん、ザ・ナートからもらっている二十四時間ずっと戦うこともできる。あと二日……、間に合うか?
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ミズナとトルケル、猿のお面の人物はトゥーリー連邦から飛行船で移動し、マルボロ国アーク島にある首都「テレロ」に到着した時点では、テレロは大恐慌に陥っていた。飛行船を城に方に繋ぎ止め、急ぎ現場へ急行しようとするものの、黒い雲から降ってきた魔物が、首都テレロを直撃した様で、街から脱出しようとしている市民にぶつかり中々、魔物の元に辿りつけない。
「ミズナ……、上から行くぞ」
そう言うと、トルケルは建物の上に跳び上がり、ミズナもそれに続こうとした時にいつの間にか猿のお面をした者の姿が、いなくなっていることに気付いた。
別行動? 彼らお面の者たちの行動はよくわからないけど、私達だけでなんとかしないと……。建物の屋根伝いに飛び移っていくと、魔物達が暴れている先頭の部分に辿りついた。
海人族の戦士たちが魔物と戦っているが相手は強化種……、市民を避難させるための時間稼ぎで抵抗しているが、それでも随分と押され、後退しながら必死に耐えている。
「クウちゃん」
クウ!【雷撃】
建物の屋根から跳躍し、空中でクー・シーの雷撃により、黒い魔物……パックマントードが十数体、感電するものの倒れないが、動きは断然、鈍くなった。
トルケルに感電で動きの鈍ったパックマントードを任せ、その少し前に着地し、自らはその先の人蛙をもの凄い速さで葬っていく。
「【鉄砲魚:十六連】」
【渦槍】による連続突きで十六発の渦巻く強化された水弾が人蛙の群れに着弾し、吹き飛ばす。
先の方が拓けたので、そのまま前に進むと、三つの埠頭の内の中央ふ頭の上層に出た。
『カッ、ドォォォ!』──。隣の通りが爆発し、白煙の中から銀閃ジオと彼の傍付きが通路から顔を出し、こちらに気付く。
「おっ、海上商港の最強コンビ! 俺は銀閃ジオ……こうやって話すのは初めてだな」
「はい、お初にお前にかかります」
「ザ・ナート様から聞いてたぜ、最強&最恐の助っ人をこっちに寄こすってな?」
「よろしくお願いします。ジオ様、ところで今、どういった状況でしょうか? とりあえず魔物のいるところに向かって来たのですが……」
銀閃ジオがミズナの質問に答える。……黒い雲から『魔物が降って』きたのは、半日ほど前だがその時は海の方に降ったが、今しがた、埠頭を巻き込んで『再度』魔物が降ったらしい。
「じゃあ、あの埠頭の先端にいる野郎をぶっ飛ばすか?」
しかし、そう簡単にはいかなさそうだ、前方の埠頭側のみならず、左右からも次々と魔物がこちらに押し寄せてきている。
「とりあえず周囲を片付けからとしようか……」
銀閃ジオは、足をぐるぐる廻して、戦闘態勢をとった。
(おい、ラック)
(なんだ、ダミュー)
(生の可愛い子ちゃんだ……)
(ああ、生の番犬も横にいるがな……)
(これはアレか? 突撃オーケーなのか?)
(ああ、お前が番犬に突撃されて人生終了でもいいならな……)
(俺は、決めた! 男になる)
(ほう……今まで女だったのか?)
(そうじゃない! この戦いで逆に俺が活躍して惚れさせる)
(!? ずるいぞ、じゃあ俺も頑張る)
(あっ、ヤバい番犬がさっそく俺たちを嗅ぎつけたぞ!)
(目を合わせるな!? 嚙み殺されるぞ! ヤツはスルーするんだ!)
(ああ、わかったぜ兄弟)
(よし、じゃあやるぞ!? 作戦『あの娘の心は俺のもの』)
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