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人族イーアス編
Chapter 104 星を泳ぐ
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うわー、凄く強そうな人がいっぱい乗ってる……。
海人族の少女、小人族の斥候、鬼人族の剣士……。他にも海人族の怖そうな人と、人族と獣人族兎人の組み合わせの冒険者風の三人組。
あと……ぱっと見、小鬼に見えるけど……。こっちを見て、ニコニコしていて完全に打ち解けている……。
皆、それぞれ軽く自己紹介した。
そうか……この人達も例の〝標〟保有者。
飛行船は、一度、自由国オルオ首都のマイティーロールに寄るとトゥーリー連邦のなぜか「助かった~」と喜んでいる竜騎兵の捕虜を連行し引き渡し、転回して地下迷宮へと向かう。向かっている途中で甲板に突然、ザ・ナート様ともう一人見知らぬ者の二人が転移してきた。【空間転移】を初めて見た人は皆、驚いていたが、マカロニ君だけは涼しい顔をしていた。
「やあやあ、やっと揃ったね~。こうやって君たち全員を眺めると感慨深いものがあるよ」
また、ザ・ナートは老人男性とは似つかわしくない話し方をしているが、本人は気づいてないようだ。
「こっちは『ザ・トイズ』──知ってのとおり、私……、ん……儂の同胞じゃ」
あ、途中で自分について思い出したみたい……。急に〝儂〟口調になった。
ザ・トイズ……。大賢者ザ・ナートや白騎士ザ・シスコと並ぶ三英雄譚に出てくる伝説上の人物で、稀代の「想力具製作者」と言われる人物──。ずんぐりとした樽のような体で、背は小さく髭が生えている。
「…………⁉」
無言で手を「シュビッ」っと、挙げて皆に挨拶をする。
「こやつを連れてきたのは、まずお主らの武器や防具を『魔改造』しようと思っての……」
ザ・ナート様が連れを紹介後、本題を語り始めた。
「じゃが、魔改造を施してもあの地下迷宮に再突入するには足りん……」
ニヤリと笑う大賢者。
「コヤツが武器を性能向上している間にお主らには、七雄という先達に並び立って貰わないといかん」
あの偉大な人達に並ぶ……。
いったいどうやって?
「これから超高等スキル『歴史回顧』と『幻想劇場』の二重組み合わせを行う。チャイチャイ君、どういうことか説明するのじゃ」
「はい、過去の歴史を体験し、その中で『成長する』ことが可能……。恐らく七雄の歩んだ道を経験できるということでしょうか」
歴史回顧は、過去を「観る」。幻想劇場は、仮想空間を「体験」できる。この二つで、過去を経験できるということ!?
「うむ、正解じゃ……流石『くいず』を全問正解しただけのことはある」
「ザ・ナート様、なぜそれをご存知なのですか?」
「うん? ……それは……えーと……ああ、あれじゃ!? ジオから前に教えて貰ったのじゃ!」
チャイチャイに急に問われると、なんか苦し紛れに今思いついたような答え方をするが、誰もそのことに触れない。
僕だって気づいてる……。この方は、どういう絡繰りなのか分からないが、恐らく『地上のもの』じゃない……。超越的な存在……僕らの信仰の対象。
「んじゃ、発表しまーす!」
ザ・ナートは軽いノリで、配置を発表していく。また自分の設定を忘れていると見た。
「ミズナちゃんが、銀閃ジオ」
「マカロニ君が、弓聖ミト」
「ヴァン君が、蛍火カルノア」
「ロレウちゃんが、不死テラノート」
「チャイチャイ君は炎龍ギル」
「シュンテイ君は金剛ジン」
「そしてイーアス君が赤星アレンだ。以上」
「それじゃあ、準備はいいかなー? じゃあ行ってらっしゃーい」
ザ・ナートの前に立たされた七人の周りに複数の円陣が現れ、円陣に刻まれた模様が思い思いの方向に回転していく。
★
これが夢なのか……。僕は、夢の中で、若かりしアレンとなって冒険者ギルドの入口の扉を開く。
パーティを組み、地下迷宮の攻略に明け暮れる日々。そんな中、自由国オルオとビルドア帝国との間で戦争が始まり強制的に出兵することになったアレンは、国境付近での激戦の中でパーティの仲間達を失う……。
既に味方の軍は撤退しており、絶望の淵を漂いながらも、ただ一人生き残ったアレンは命からがら、ブイリの森に逃げ込んだ。そこで『星人』と邂逅する。星人から、この惑星の想力システム以外の理を知り、宙を渡る能力『星泳力』を覚えた。
その力を「使い」「慣らし」……さらに研鑽していく。
アレンがブイリの森で星泳力を使いこなせるようになった頃には、ビルドア帝国と自由国オルオとの戦争は終わっており、互いに多くの犠牲を出した悲惨な結末が待っていた。
自由国オルオの北西に未開の島がある。その島は過去、幾度となく調査を行うものの、島に近づくことすら敵わず全て失敗に終わり、海人族ですらその海域に足を踏み入れない。
ある日、自由国オルオの複数の冒険者ギルドが合同で、かつてないほどの大規模な特別依頼を出した。未踏領域の調査。破格の報奨金が約束され、都市は一様に色めき立った。
数多くの冒険者や騎士、術士が名乗りを上げ、大船団により未開の島調査に発った。その船の一隻……目的を見失って孤独で彷徨うアレンが乗っていた。
島に近づくにつれ、魔物が活性化し、攻撃性が強くなる。魔物の激しい攻撃を受けて十隻以上あった船がみるみるうちに沈んでいったが、魔物を返り討ちにしたアレンが乗っていた一隻のみが島に到達した。
島の調査にあたって、複数の班編成により調査にあたった。既知の魔物と違う種類の魔物に襲われ、ほとんどの班が全滅する中、アレン達の班だけが生き残り島を調査した。
森の奥深くにあった謎の構造物。その奥で、ブイリの森で出会った『星人』とは別の宙を駆ける船を見つけ、宙船の中で意思疎通のできる水晶球のようなものの力で、同じパーティーの他の仲間も力に目覚めた。
その力が星泳力であり、同じ班の仲間が現在の〝七雄〟であった。
海人族の少女、小人族の斥候、鬼人族の剣士……。他にも海人族の怖そうな人と、人族と獣人族兎人の組み合わせの冒険者風の三人組。
あと……ぱっと見、小鬼に見えるけど……。こっちを見て、ニコニコしていて完全に打ち解けている……。
皆、それぞれ軽く自己紹介した。
そうか……この人達も例の〝標〟保有者。
飛行船は、一度、自由国オルオ首都のマイティーロールに寄るとトゥーリー連邦のなぜか「助かった~」と喜んでいる竜騎兵の捕虜を連行し引き渡し、転回して地下迷宮へと向かう。向かっている途中で甲板に突然、ザ・ナート様ともう一人見知らぬ者の二人が転移してきた。【空間転移】を初めて見た人は皆、驚いていたが、マカロニ君だけは涼しい顔をしていた。
「やあやあ、やっと揃ったね~。こうやって君たち全員を眺めると感慨深いものがあるよ」
また、ザ・ナートは老人男性とは似つかわしくない話し方をしているが、本人は気づいてないようだ。
「こっちは『ザ・トイズ』──知ってのとおり、私……、ん……儂の同胞じゃ」
あ、途中で自分について思い出したみたい……。急に〝儂〟口調になった。
ザ・トイズ……。大賢者ザ・ナートや白騎士ザ・シスコと並ぶ三英雄譚に出てくる伝説上の人物で、稀代の「想力具製作者」と言われる人物──。ずんぐりとした樽のような体で、背は小さく髭が生えている。
「…………⁉」
無言で手を「シュビッ」っと、挙げて皆に挨拶をする。
「こやつを連れてきたのは、まずお主らの武器や防具を『魔改造』しようと思っての……」
ザ・ナート様が連れを紹介後、本題を語り始めた。
「じゃが、魔改造を施してもあの地下迷宮に再突入するには足りん……」
ニヤリと笑う大賢者。
「コヤツが武器を性能向上している間にお主らには、七雄という先達に並び立って貰わないといかん」
あの偉大な人達に並ぶ……。
いったいどうやって?
「これから超高等スキル『歴史回顧』と『幻想劇場』の二重組み合わせを行う。チャイチャイ君、どういうことか説明するのじゃ」
「はい、過去の歴史を体験し、その中で『成長する』ことが可能……。恐らく七雄の歩んだ道を経験できるということでしょうか」
歴史回顧は、過去を「観る」。幻想劇場は、仮想空間を「体験」できる。この二つで、過去を経験できるということ!?
「うむ、正解じゃ……流石『くいず』を全問正解しただけのことはある」
「ザ・ナート様、なぜそれをご存知なのですか?」
「うん? ……それは……えーと……ああ、あれじゃ!? ジオから前に教えて貰ったのじゃ!」
チャイチャイに急に問われると、なんか苦し紛れに今思いついたような答え方をするが、誰もそのことに触れない。
僕だって気づいてる……。この方は、どういう絡繰りなのか分からないが、恐らく『地上のもの』じゃない……。超越的な存在……僕らの信仰の対象。
「んじゃ、発表しまーす!」
ザ・ナートは軽いノリで、配置を発表していく。また自分の設定を忘れていると見た。
「ミズナちゃんが、銀閃ジオ」
「マカロニ君が、弓聖ミト」
「ヴァン君が、蛍火カルノア」
「ロレウちゃんが、不死テラノート」
「チャイチャイ君は炎龍ギル」
「シュンテイ君は金剛ジン」
「そしてイーアス君が赤星アレンだ。以上」
「それじゃあ、準備はいいかなー? じゃあ行ってらっしゃーい」
ザ・ナートの前に立たされた七人の周りに複数の円陣が現れ、円陣に刻まれた模様が思い思いの方向に回転していく。
★
これが夢なのか……。僕は、夢の中で、若かりしアレンとなって冒険者ギルドの入口の扉を開く。
パーティを組み、地下迷宮の攻略に明け暮れる日々。そんな中、自由国オルオとビルドア帝国との間で戦争が始まり強制的に出兵することになったアレンは、国境付近での激戦の中でパーティの仲間達を失う……。
既に味方の軍は撤退しており、絶望の淵を漂いながらも、ただ一人生き残ったアレンは命からがら、ブイリの森に逃げ込んだ。そこで『星人』と邂逅する。星人から、この惑星の想力システム以外の理を知り、宙を渡る能力『星泳力』を覚えた。
その力を「使い」「慣らし」……さらに研鑽していく。
アレンがブイリの森で星泳力を使いこなせるようになった頃には、ビルドア帝国と自由国オルオとの戦争は終わっており、互いに多くの犠牲を出した悲惨な結末が待っていた。
自由国オルオの北西に未開の島がある。その島は過去、幾度となく調査を行うものの、島に近づくことすら敵わず全て失敗に終わり、海人族ですらその海域に足を踏み入れない。
ある日、自由国オルオの複数の冒険者ギルドが合同で、かつてないほどの大規模な特別依頼を出した。未踏領域の調査。破格の報奨金が約束され、都市は一様に色めき立った。
数多くの冒険者や騎士、術士が名乗りを上げ、大船団により未開の島調査に発った。その船の一隻……目的を見失って孤独で彷徨うアレンが乗っていた。
島に近づくにつれ、魔物が活性化し、攻撃性が強くなる。魔物の激しい攻撃を受けて十隻以上あった船がみるみるうちに沈んでいったが、魔物を返り討ちにしたアレンが乗っていた一隻のみが島に到達した。
島の調査にあたって、複数の班編成により調査にあたった。既知の魔物と違う種類の魔物に襲われ、ほとんどの班が全滅する中、アレン達の班だけが生き残り島を調査した。
森の奥深くにあった謎の構造物。その奥で、ブイリの森で出会った『星人』とは別の宙を駆ける船を見つけ、宙船の中で意思疎通のできる水晶球のようなものの力で、同じパーティーの他の仲間も力に目覚めた。
その力が星泳力であり、同じ班の仲間が現在の〝七雄〟であった。
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