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鬼人族シュンテイ編
Chapter 067 港町奪還戦!
しおりを挟むウラナ州のロズイール率いる不屈の騎士団と傭兵団によりロッシ州の占領下にある港町テーゼを奪還すべく、海人族ミズナの手引きのもと攻め入ろうと突撃した。騎士団&傭兵団の突撃に合わせ、門と兵舎が英雄譚に登場する〝白騎士ザ・シスコ〟が爆破したことにより、あっさりと町の中に攻め入ることができた。現在は市街戦の真っ最中である。
俺たち森の散歩者と海人族ミズナちゃんは、門の破壊のあと襲ってくるロッシ兵を無力化しながら、街の中枢へと進んでいく。騎士団が騎乗したまま中枢へと先に突撃してしまった。
そのせいで俺たちパーティーは他の全体的に取り囲むように広がり展開している傭兵団より、半ば強引に中枢に急いでいる。海人族ミズナちゃんが騎士団の人たちが心配だからとの申し出に応じた結果なんだが優しい。強くて優しくて頼りになる。が、変な目で見ると何でも疑う人が作動するので平静を装っている。
中央の広場が見えた。ミズナちゃんの不安が的中し、中央の大広場に突撃したロズイール達は倍以上のロッシ兵に大広場からの出口を塞がれ、広場内の中央で孤立していて、すでに二十名近くが倒れている。放っておくと全滅しかねない。
指揮統制もうまく執れていない。ただ円になってひたすらロッシ州の猛攻に耐えていて、あまり上策とは言えない……。うーん、ロズイール団長って見かけ倒しでちょっと残念かもしれん。
「クウちゃん、お願い」
「ワン」
ミズナの頭に乗っていた子犬がミズナの呼びかけに答える……。やっぱり頭の上に乗ってたのって生きものだったんだ。全然、動かないから、ぬいぐるみでも頭に乗せてるのかと思ってた……。
クウちゃんは、ミズナの指示により〝雷撃〟を放ち、こちら側の通路を塞いでいたロッシ兵を感電させ、気絶させる。包囲網に穴ができた途端、ロズイール達、不屈の騎士団は馬に飛び乗りこちら側の道に広場から抜け、そのまま去っていった……。
おいおい……逃げ足だけ一流って。
ロッシ兵達と目があった……。自分達に照準を定めロックオン、一気になだれ込んでくる……ですよねー。ヒルメイが予期していたのか、少し前のところに妖精の力を借り【土壁】を何枚も作るとロッシ兵たちは、土壁が障害となり、大勢では一気に進めず、壁の間をすり抜けるようにバラバラに土壁の隙間から抜け出てくる。
ミズナちゃんが前に出て、抜き出て来たロッシ兵を潰していく。ヤバい強すぎ、ミズナちゃんと結婚したあと、浮気でもしようものなら俺、瞬殺かも……。
「テラフさんから邪念を感じます。変態妄想はその辺にして早くミズナさんを手伝ってください」
後ろからヒルメイが俺の頭の中を鋭く読み取って、ツッコんできた。やるなヒルメイ! 見るとラキはヒルメイの前に立ち、抜けてきたロッシ兵と戦っている。
両手に持っている片手斧で、向かってきたロッシ兵数人を相手にする。うん、俺は決して弱くない。というより、むしろかなり強いのではないか?
「ワァーーッ!」
しばらく膠着状態が続いていたが、大広場に続く別の道から回り込むように進んでいた傭兵団の人たちが到着し、形勢が一気に逆転した。傭兵団が背後を取ってくれたお陰で、こちら側に回ってくる兵が激減した。
いやー、さすが冒険者集団、頼りになりますなー。
中央広場を制圧し、港の方に向かって散っていく冒険者たちをよそに、ロズイール率いる不屈の騎士団が広場に到着する。ロズイール団長は十人程の手勢を連れて、広場の奥に建っているこのテーゼの町の一番大きな三階建ての建物に突入していく。
ロズイール団長にここはまかせて、自分達は港の方に行こうと提案するとミズナが建物の三階部分を見上げて動かない。心配なら中を見てこようかとミズナに声を掛けようとした瞬間。
『バリィィイン、ドサッ』──三階の窓が割れ人が降ってきた。ロズイールの部下の人だ……。
それを見たミズナは、建物の中に駆け出したので慌てて追いかける。一階、二階には誰もいなかったが、三階まで駆け上がると階段の上がった傍にミズナが立っていた。ミズナの後ろから三階を見るとロズイール以外の部下は全員、床に転がっていて、ロズイール団長は男に首を掴まれ『片手』で持ち上げられて、苦しそうにしている。
なんだ、こいつ⁉
全身、黒ずくめの甲冑で、兜は被っておらず長い黒髪、切れ長の険のある目つきで異様な迫力を漂わせており、ミズナが用心深く槍を構えている。
「冒険者か……。お前らがあちこちで余計な手出しをしなければ今頃、ウラナ州を制圧し、全力でミルフレイア聖王国を叩けたものを」
男はそう言うと掴んでいたロズイールを無造作にミズナに放り投げた。ミズナは素早く避け、ロズイールはそのまま後ろの壁に激突した……。あまり、同情できない。
『ピィィィーーッ』──男はロズイールをミズナに放り投げるとすぐに後ろを振り返り指笛を吹きながら、割れた窓から外に跳んだ。
え? ここって確か三階のはずじゃ……。走って窓に駆け寄り見下ろすと、長い黒髪の男は翼竜に乗り、浮かび上がってきて、三階の窓にいるこちらに向かって大声を出す。
「女ぁ、俺の名前は〝エルプス〟今はお前ら〝神の粒選り〟に構っている暇はない。いずれ相手してやる」
エルブスと名乗る男はそう言い残し、翼竜ワイバーンに乗って飛び去って行った。
この建物で自分達が手間取っている間に冒険者で構成されている傭兵団が港の方まで、完全に制圧を完了していた。
いやー、騎士団より冒険者の方が優秀なのか指揮官がお粗末なのか……。
まっ、どっちでもいいか!?
港町テーゼの奪還作戦にあたって、冒険者側は軽傷の者が数人程度で済んだが、不屈の騎士団においては無謀な突撃をしたせいで、多くの死者を出している。
聞くと傭兵団が海側にロッシ兵を追い立てたところ、ロッシ兵の半分以上は船に乗って、逃げてしまったらしく、港に停泊してあった船がすべて無くなった。
報酬はしっかりもらって、西大陸に渡るためにこれからどうしようかと相談していたところ、お迎えの船がやってきた。
──『空を飛んで』
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