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鬼人族シュンテイ編
Chapter 057 四つ巴
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地底湖の入口に転移して戻ってきたシュンテイたちは、先に入口に戻っていたブーテンやトルネと合流し、帰路につくための準備を始める。野営地を片付け身支度している間にジャーポのダイゼンがこちらに声を掛けてきた。
「待て、不死鳥の羽はお前たちレキオのものだ。あとは俺たちも一緒になって、ナラクの鬼人族として羽を無事持ち帰ることが使命になっている」
不死鳥の羽を無事持ち帰るためには、数が大いに越したことはない。素直に承諾する。小人族がたくさん住んでいるプライアンクリフを経由してのミルフレイア聖王国入りを目指し、ドォナント領を進んでいる途中、何度か魔物に襲われた。しかし、こちらは精鋭の大所帯。大した問題ではなかったが、マカロニに「二人ともまだまだだから帰り道でも鍛えた方がいいよー」と言われ、ブーテンとトルネは最前線に出され続けて悲鳴を上げていた。
でも……ナラクから出発して三週間でブーテンとトルネは随分と成長したように感じる。ステータス自体も伸びたが、何より実戦経験を積んだのは大きい。以前より動きが格段と良くなっている。
そんなことを思っていると突然、一番先頭と二番目を歩いていたマカロニとトルケルが歩みを止める。
二人が止まったので一行は全員立ち止まり辺りを見回すと、左右の雑木林から魔人族と龍人族が躍り出て襲われた。
訳もわからず応戦していると、後ろでトオサのシマツと助っ人だったはずの龍人族二人も一緒になって襲ってくる。前方ではジャーポの三人も雇った人族の傭兵十名に突然襲われ始めた。
どういうことだ??
混戦になる中、自分とトルネ、ブーテンは密集隊形になり、左右から襲ってくる龍人族と魔人族を迎え討つ。襲ってくる敵は一人ひとりが、かなりの手練れで苦戦を強いられる。特に龍人族の方は相当強い。自分は止む無く、対人戦では普段ご法度としているスキル【闘気:纏塊】を発動させ、龍人族を斬り捨てる。
混戦の中、マカロニ、トルケル、ペンネは次々と相対する敵を倒していく姿がみえた。マカロニとペンネは地底湖への行きの道中で腕前は見ていたが、左腕を取り戻したトルケルもまた恐ろしく強い。惑星最強と言われる龍人族の戦士数人を一度に相手してなお、負ける想像を微塵も感じさせない。
トオサのシマツが自分の相手だった。
「悪いねぇ、シュンテイ、不死鳥の羽は俺のものになる予定なんだ……。邪魔なお前たち若頭はここで全員消えてもらわないと俺が次代の代表になれないからな……」
にやりと笑う。今までの善人面はすべて演技だったんだ⁉ 【蝶舞】と【読絲】、双方の発動したスキルにより互いの攻撃がすべて空を切る……。
シマツに手こずっている間に次第にトルネとブーテンが押され始めている。はやくフォローに回らないと……。
「シュンテイー、そろそろ〝その気〟にならないと大事な仲間を失っちゃうよ?」
マカロニが遠くから、少し先の考えたくもない未来を告げてくる。
いつだって自分はその気になれない。小さい頃から周りに直接言われなくともそう思われていることはひしひしと感じてはいた。ましてや大なり小なり他派閥の前に出るような行事の時は、自分をより辛辣な視線で見て値踏みし、評価してくる。
優柔不断……。
呆け者……。
それは即ち意志の弱さ?
いつも心のどこかで誰かに甘えている?
自分が決めずとも誰かが決めてくれる……。
一生懸命やって、その結果が失敗だったらみじめ?
自信が無いからやらない?
自分がやらなくともどうせ誰かがそれを為してくれる……。
でも、自分がやらないといけない場面に遭遇したら?
その所為でかけがえのないものが犠牲になったら?
それは駄目でしょう。
いや……絶対ダメだ!!
シマツと斬り結びながら心の中の葛藤がある方向に進み、やがて一つの結論へとたどり着く。心の中で何かが弾けたと同時にシュンテイの右手の甲が光を帯び始める。
「あれ見て~、やっと光ったよ。トルケル」
「あぁ……ミズナやお前よりだいぶ出来が悪いがな……」
身体中から力が沸き上がる。急激に加速したシュンテイの刀がシマツの刀を弾き飛ばし、返す刃で片背打ちし昏倒させる。シュンテイが覚醒し、シマツを倒した後、次々と相手を変えては倒していくことを見届けたマカロニはボソッと呟く。
「シュンテイが目覚めたし、じゃあ、僕もそろそろアレ使おうかな?」
細剣を普通のものから、弓聖ミトから譲り受けた、天賜品【御伽:影獣楽団】に持ち替えた。
細剣を振るとマカロニの影から、四匹の色のついた影獣が飛び出してきた。
影獣はそれぞれ楽器を持っており、奏で始めるとスキルが発動した。
紅獣が弦楽器をつま弾かせ──。
足元から伸びた赤い影が相手の影を捉え、本体の動きを封じる。
青獣が曲角笛を吹き鳴らし──。
無数の影の手が伸びていき相手を捕捉する。
緑獣の朝顔縦笛の音色を奏で──。
丸い影が移動していき相手の足元を包むと影の中に引きずり込む。
黄獣は片面太鼓を叩き響かせる──。
空中に黄色い函が現れ、相手に当たると重力が掛かり倒れ込む。
影獣を駆使し、敵の動く権利を奪う。その間にマカロニ自身とペンネ、トルケルが残りの敵対している者達へ猛攻を掛け、一気に畳みかけた。
なんとか相手を倒し、まだ息のあるものは拘束した。
──良かった。
あの二人が無事で……。二人に何かあったらレキオの父上や彼らのご家族に申し訳が立たない。
一時はどうなるかと思ったけど、なんとか乗り越えられた。でも、ずっと気になっていたことが分かった。マカロニ君とトルケルは、僕をずっと試しているような素振りだった。恐らくはこの右手の甲の光っている標の覚醒……。さっき天使アラネル様の声を初めて聞いた。
「選ばれたからにはこの惑星のために戦いなさい」……と。
「待て、不死鳥の羽はお前たちレキオのものだ。あとは俺たちも一緒になって、ナラクの鬼人族として羽を無事持ち帰ることが使命になっている」
不死鳥の羽を無事持ち帰るためには、数が大いに越したことはない。素直に承諾する。小人族がたくさん住んでいるプライアンクリフを経由してのミルフレイア聖王国入りを目指し、ドォナント領を進んでいる途中、何度か魔物に襲われた。しかし、こちらは精鋭の大所帯。大した問題ではなかったが、マカロニに「二人ともまだまだだから帰り道でも鍛えた方がいいよー」と言われ、ブーテンとトルネは最前線に出され続けて悲鳴を上げていた。
でも……ナラクから出発して三週間でブーテンとトルネは随分と成長したように感じる。ステータス自体も伸びたが、何より実戦経験を積んだのは大きい。以前より動きが格段と良くなっている。
そんなことを思っていると突然、一番先頭と二番目を歩いていたマカロニとトルケルが歩みを止める。
二人が止まったので一行は全員立ち止まり辺りを見回すと、左右の雑木林から魔人族と龍人族が躍り出て襲われた。
訳もわからず応戦していると、後ろでトオサのシマツと助っ人だったはずの龍人族二人も一緒になって襲ってくる。前方ではジャーポの三人も雇った人族の傭兵十名に突然襲われ始めた。
どういうことだ??
混戦になる中、自分とトルネ、ブーテンは密集隊形になり、左右から襲ってくる龍人族と魔人族を迎え討つ。襲ってくる敵は一人ひとりが、かなりの手練れで苦戦を強いられる。特に龍人族の方は相当強い。自分は止む無く、対人戦では普段ご法度としているスキル【闘気:纏塊】を発動させ、龍人族を斬り捨てる。
混戦の中、マカロニ、トルケル、ペンネは次々と相対する敵を倒していく姿がみえた。マカロニとペンネは地底湖への行きの道中で腕前は見ていたが、左腕を取り戻したトルケルもまた恐ろしく強い。惑星最強と言われる龍人族の戦士数人を一度に相手してなお、負ける想像を微塵も感じさせない。
トオサのシマツが自分の相手だった。
「悪いねぇ、シュンテイ、不死鳥の羽は俺のものになる予定なんだ……。邪魔なお前たち若頭はここで全員消えてもらわないと俺が次代の代表になれないからな……」
にやりと笑う。今までの善人面はすべて演技だったんだ⁉ 【蝶舞】と【読絲】、双方の発動したスキルにより互いの攻撃がすべて空を切る……。
シマツに手こずっている間に次第にトルネとブーテンが押され始めている。はやくフォローに回らないと……。
「シュンテイー、そろそろ〝その気〟にならないと大事な仲間を失っちゃうよ?」
マカロニが遠くから、少し先の考えたくもない未来を告げてくる。
いつだって自分はその気になれない。小さい頃から周りに直接言われなくともそう思われていることはひしひしと感じてはいた。ましてや大なり小なり他派閥の前に出るような行事の時は、自分をより辛辣な視線で見て値踏みし、評価してくる。
優柔不断……。
呆け者……。
それは即ち意志の弱さ?
いつも心のどこかで誰かに甘えている?
自分が決めずとも誰かが決めてくれる……。
一生懸命やって、その結果が失敗だったらみじめ?
自信が無いからやらない?
自分がやらなくともどうせ誰かがそれを為してくれる……。
でも、自分がやらないといけない場面に遭遇したら?
その所為でかけがえのないものが犠牲になったら?
それは駄目でしょう。
いや……絶対ダメだ!!
シマツと斬り結びながら心の中の葛藤がある方向に進み、やがて一つの結論へとたどり着く。心の中で何かが弾けたと同時にシュンテイの右手の甲が光を帯び始める。
「あれ見て~、やっと光ったよ。トルケル」
「あぁ……ミズナやお前よりだいぶ出来が悪いがな……」
身体中から力が沸き上がる。急激に加速したシュンテイの刀がシマツの刀を弾き飛ばし、返す刃で片背打ちし昏倒させる。シュンテイが覚醒し、シマツを倒した後、次々と相手を変えては倒していくことを見届けたマカロニはボソッと呟く。
「シュンテイが目覚めたし、じゃあ、僕もそろそろアレ使おうかな?」
細剣を普通のものから、弓聖ミトから譲り受けた、天賜品【御伽:影獣楽団】に持ち替えた。
細剣を振るとマカロニの影から、四匹の色のついた影獣が飛び出してきた。
影獣はそれぞれ楽器を持っており、奏で始めるとスキルが発動した。
紅獣が弦楽器をつま弾かせ──。
足元から伸びた赤い影が相手の影を捉え、本体の動きを封じる。
青獣が曲角笛を吹き鳴らし──。
無数の影の手が伸びていき相手を捕捉する。
緑獣の朝顔縦笛の音色を奏で──。
丸い影が移動していき相手の足元を包むと影の中に引きずり込む。
黄獣は片面太鼓を叩き響かせる──。
空中に黄色い函が現れ、相手に当たると重力が掛かり倒れ込む。
影獣を駆使し、敵の動く権利を奪う。その間にマカロニ自身とペンネ、トルケルが残りの敵対している者達へ猛攻を掛け、一気に畳みかけた。
なんとか相手を倒し、まだ息のあるものは拘束した。
──良かった。
あの二人が無事で……。二人に何かあったらレキオの父上や彼らのご家族に申し訳が立たない。
一時はどうなるかと思ったけど、なんとか乗り越えられた。でも、ずっと気になっていたことが分かった。マカロニ君とトルケルは、僕をずっと試しているような素振りだった。恐らくはこの右手の甲の光っている標の覚醒……。さっき天使アラネル様の声を初めて聞いた。
「選ばれたからにはこの惑星のために戦いなさい」……と。
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