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鬼人族シュンテイ編
Chapter 055 ふるいわけ
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「おはよー、シュンテイ、朝ごはんできてるよ~」
マカロニの変わらない元気な声で目が覚めた。
あれ? ジャーポとナンワのひと達がいない⁉ 岩壁に預けていた背中を剥がし立ち上がり周りをみると既に自分達以外のメンバーがいない。
「明け方から皆起きて、先に行ったよ~」
そうなの……。じゃあこんなのんびりしてられないんじゃ。
「シュンテイはお寝坊だね~、でもご飯はちゃんと食べなとかないといざって時に力が出ないよ」
そうだ。自分より早く起きて朝食作ってくれているマカロニに申し訳ないし、マカロニの言っている通り、食事をおろそかにしてはいけない。
「マカロニ君、ありがとう、ちょっと急いで食べさせてもらうね」
「オッケ~じゃあ僕が先に準備始めておくよ」
マカロニと話していると、ブーテンとトルネが目を覚ました。三人で急いでマカロニが作ってくれた朝食をとり、準備に取り掛かる。
「あっ、お帰り~、ペンネ君どうだった? 」
地底湖の入口からペンネが出てきたところにマカロニが声を掛ける。そういえば起きたときから姿が見えなかった。
(中ハダイブ、複雑ナ造リニナッテイルミタイ、皆、苦戦シテルト思ウヨ。デモボクガ近道発見ヲシタヨ)
ペンネは、ゴブリンの中でも特殊で聞いたことのないスキルを持っている。そのスキルの一つ【識眼】は、【鑑定】や【罠感知】、【空間認識】、【熱検知】を兼ね備えている。
【識眼】の使用により、洞窟などの形状、階層、隠し通路、罠等がある程度把握できた。まさに冒険者にとって垂涎もののスキルだ。今回の旅にこの二人が旅の供になってくれたのは、とても幸運であることを実感している。
準備が整い、地底湖の入口から中に入る。大きな洞窟で一本道になっていて、しばらく進むと道が三つに分かれている。
(コッチダヨ)
右側をペンネが示し案内する。更に少し進んだ何もないところで、ペンネが洞窟の右側側面をゴソゴソすると、その周りの土壁が崩れて、隠れていた横穴が見つかった。
そこからはくねくねした長い緩やかな下り坂で分岐路も何もなく、どれだけ経ったであろうか、少し目が慣れてきた頃にようやく終点が見えた。
終点だが何も無い突き当りになっている。ペンネがその突き当りをまたゴソゴソしはじめ、先ほどと同じく土壁が崩れて、微かな明かりと新鮮な空気がこちらに流れ込んできた。
横穴から出ると、大きな単路の側面にあたる位置だったらしく左手の方から明かりがこちらに届いている。左手の折れた先は、とてつもなく大きな空洞が広がっており、空洞の地面や壁面、天井には燐光石という自発光の鉱石が無数にちりばめられていて、満点の星空の下にいるような景色が広がっている。
手前は地面になっていて、その少し先から湖が静かに眠っており、天井部や側面部の燐光石の淡い光が水面を照らしている。ちょうど正面の湖面上に人がやっと一人通れるくらいの細い橋が奥に向かって架かっているが、あまりにも奥行きがあり、照度も足りないせいか端となる部分までは見通せない。
しばらく、細い橋の上を進んでいくと、先には円形の島が浮かんでいて、奥にまた橋が架かっているのが見える。
円形の島には何もないため、そのまま奥の橋に向かって歩いていると、全体に白い幕のようなものが降りてきて、島をすっぽりと包み込む。立ち止まり、辺りを警戒していると、抑揚のない機械的な声が響き渡る。
「第一の試練を始めます。第一の試練は〝生存力〟」
声が響き終わると周囲の湖面から剣と盾を持った二足歩行の蜥蜴が浮き上がり這い上がってくる。その数はどんどん増えていき、三十を超えたあたりで手前まで近づいてきた蜥蜴に襲われ、数えることを諦めた。
勁力系スキル【闘気:纏塊】、勁力系【闘気:読絲】の二つを駆使して戦闘に臨んでいるが、一匹では斬りかかってこない、数匹で一気に斬りかかってくるか、盾で受けて隙をみて攻めてくる。一体一体がよく訓練された戦士のような動きだ。
蜥蜴の戦士は倒して気づいたが、生きた魔物ではなく、精密に造られた機械人形だった。【纏塊】で無理やり盾を破壊し、斬りつけられるものの、ブーテンの長棍棒やトルネの三色団子の小人形たちとは相性が悪く、苦戦を強いられている。
他の二人は、自分が何とかなってるので、今は心配するだけ時間の無駄……とりあえず気にしないでおく……。
長い時間、戦った気がするが、そこまで長い時間ではなかったのかもしれない。気がつくと、周囲を取り囲んでいた蜥蜴の戦士達はすべて倒れていて、こちらは全員無事だった。
ブーテンとトルネは途中で何度も危ない場面があったが、マカロニとペンネが危なくなりそうな時だけさりげなくフォローしてくれていた。
ブーテンとトルネはかなりきつかったらしく、肩で息をしている。マカロニは全然余裕があるらしくまだ、例の【御伽:影獣楽団】という細剣を使わず自分のもので、捌いていた。
「第一の試練は終了です。本結界内は、安全装置が作動するため、一定のダメージを負った場合、回復の上、入口に強制転移するようになっていますので、心配いりません。ただし一度〝失格〟になったものは再試練は受けられません」
よかった……ここでもし倒れても、入口に戻るようになっているみたい。
「それでは、通過者はこの先にお進みください」
白い膜が消え、奥の橋の方に向かって進み始める。
マカロニの変わらない元気な声で目が覚めた。
あれ? ジャーポとナンワのひと達がいない⁉ 岩壁に預けていた背中を剥がし立ち上がり周りをみると既に自分達以外のメンバーがいない。
「明け方から皆起きて、先に行ったよ~」
そうなの……。じゃあこんなのんびりしてられないんじゃ。
「シュンテイはお寝坊だね~、でもご飯はちゃんと食べなとかないといざって時に力が出ないよ」
そうだ。自分より早く起きて朝食作ってくれているマカロニに申し訳ないし、マカロニの言っている通り、食事をおろそかにしてはいけない。
「マカロニ君、ありがとう、ちょっと急いで食べさせてもらうね」
「オッケ~じゃあ僕が先に準備始めておくよ」
マカロニと話していると、ブーテンとトルネが目を覚ました。三人で急いでマカロニが作ってくれた朝食をとり、準備に取り掛かる。
「あっ、お帰り~、ペンネ君どうだった? 」
地底湖の入口からペンネが出てきたところにマカロニが声を掛ける。そういえば起きたときから姿が見えなかった。
(中ハダイブ、複雑ナ造リニナッテイルミタイ、皆、苦戦シテルト思ウヨ。デモボクガ近道発見ヲシタヨ)
ペンネは、ゴブリンの中でも特殊で聞いたことのないスキルを持っている。そのスキルの一つ【識眼】は、【鑑定】や【罠感知】、【空間認識】、【熱検知】を兼ね備えている。
【識眼】の使用により、洞窟などの形状、階層、隠し通路、罠等がある程度把握できた。まさに冒険者にとって垂涎もののスキルだ。今回の旅にこの二人が旅の供になってくれたのは、とても幸運であることを実感している。
準備が整い、地底湖の入口から中に入る。大きな洞窟で一本道になっていて、しばらく進むと道が三つに分かれている。
(コッチダヨ)
右側をペンネが示し案内する。更に少し進んだ何もないところで、ペンネが洞窟の右側側面をゴソゴソすると、その周りの土壁が崩れて、隠れていた横穴が見つかった。
そこからはくねくねした長い緩やかな下り坂で分岐路も何もなく、どれだけ経ったであろうか、少し目が慣れてきた頃にようやく終点が見えた。
終点だが何も無い突き当りになっている。ペンネがその突き当りをまたゴソゴソしはじめ、先ほどと同じく土壁が崩れて、微かな明かりと新鮮な空気がこちらに流れ込んできた。
横穴から出ると、大きな単路の側面にあたる位置だったらしく左手の方から明かりがこちらに届いている。左手の折れた先は、とてつもなく大きな空洞が広がっており、空洞の地面や壁面、天井には燐光石という自発光の鉱石が無数にちりばめられていて、満点の星空の下にいるような景色が広がっている。
手前は地面になっていて、その少し先から湖が静かに眠っており、天井部や側面部の燐光石の淡い光が水面を照らしている。ちょうど正面の湖面上に人がやっと一人通れるくらいの細い橋が奥に向かって架かっているが、あまりにも奥行きがあり、照度も足りないせいか端となる部分までは見通せない。
しばらく、細い橋の上を進んでいくと、先には円形の島が浮かんでいて、奥にまた橋が架かっているのが見える。
円形の島には何もないため、そのまま奥の橋に向かって歩いていると、全体に白い幕のようなものが降りてきて、島をすっぽりと包み込む。立ち止まり、辺りを警戒していると、抑揚のない機械的な声が響き渡る。
「第一の試練を始めます。第一の試練は〝生存力〟」
声が響き終わると周囲の湖面から剣と盾を持った二足歩行の蜥蜴が浮き上がり這い上がってくる。その数はどんどん増えていき、三十を超えたあたりで手前まで近づいてきた蜥蜴に襲われ、数えることを諦めた。
勁力系スキル【闘気:纏塊】、勁力系【闘気:読絲】の二つを駆使して戦闘に臨んでいるが、一匹では斬りかかってこない、数匹で一気に斬りかかってくるか、盾で受けて隙をみて攻めてくる。一体一体がよく訓練された戦士のような動きだ。
蜥蜴の戦士は倒して気づいたが、生きた魔物ではなく、精密に造られた機械人形だった。【纏塊】で無理やり盾を破壊し、斬りつけられるものの、ブーテンの長棍棒やトルネの三色団子の小人形たちとは相性が悪く、苦戦を強いられている。
他の二人は、自分が何とかなってるので、今は心配するだけ時間の無駄……とりあえず気にしないでおく……。
長い時間、戦った気がするが、そこまで長い時間ではなかったのかもしれない。気がつくと、周囲を取り囲んでいた蜥蜴の戦士達はすべて倒れていて、こちらは全員無事だった。
ブーテンとトルネは途中で何度も危ない場面があったが、マカロニとペンネが危なくなりそうな時だけさりげなくフォローしてくれていた。
ブーテンとトルネはかなりきつかったらしく、肩で息をしている。マカロニは全然余裕があるらしくまだ、例の【御伽:影獣楽団】という細剣を使わず自分のもので、捌いていた。
「第一の試練は終了です。本結界内は、安全装置が作動するため、一定のダメージを負った場合、回復の上、入口に強制転移するようになっていますので、心配いりません。ただし一度〝失格〟になったものは再試練は受けられません」
よかった……ここでもし倒れても、入口に戻るようになっているみたい。
「それでは、通過者はこの先にお進みください」
白い膜が消え、奥の橋の方に向かって進み始める。
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